第19話 キラリアさんとの勉強会
バーツ達と時間が合わない日は、城内の図書館で勉強する事が多い。そーするとよく出くわす人がいる。
「あ、ナギト様じゃないですか?本日は何のお勉強ですか?」
ピークさんだ。今日も今日とて、今日は青系統のセーラー服。
本当にいろんな種類あるね。
それで本日もキラリアさんに頼まれて、本を探しているのかな?
前に、歴代の魔王について習って、その前には、黒衣獣についてキラリアさんから教わった。それで、今日はっと。
「今日は、過去の勇者達の遺産である、元の世界に戻る為の資料に目を通したいかなって思ってます。」
聞くと、ピークさんは少し驚きつつ下を向いた。
ちょっと意外な反応だね。
「あ、やっぱり、元の世界には戻りたいですよね?」
ああ、そういう。
「そんな事はないですよ。」
すると、えっ!?って顔される。
「あ、いや、流石に全くない事はないですけど。今せっかくこの世界で学んでいることも多いですし、元の世界と違った面白さもあるから、少しずつここを離れるのも惜しくはなってるんですよ。」
まぁ、今すぐ帰れるなら、すぐ帰るか、魔王討伐までと決めて帰る選択をする気がするけど、この研究がいつ終わるかなんてわからない。何十年もかかるなら、気持ちがどうなってるかは、わからないだろう。
「でしたら、なんで?」
不思議そうに首を傾げてる。
「まぁ、俺はそうでも二人がどうかはわからないですから。」
なんていうか、天馬だけで魔王は倒せそうな雰囲気あるし、流石に一人では難しくても、月音って言う最強のヒーラーもいるんだし、この国の強い人あと何人か入れれば負けなくね?って思ってる。
まぁ、先頭がメインとは限らないのが魔王討伐だけど、戦闘特化なら、余裕だと思うんだよね。
身内の色目だとしても。
「お二人は、ですか。」
「まぁ、直接聞いた訳ではないので、わからないんですけど、でも二人にはちゃんと選択して欲しいなって思ったんですよ。」
「選択?」
「この世界に残るのか、それとも帰るのか。魔王討伐後とかでもいいから、ちゃんと選択出来るようにしてあげたいなってそう思ったんです。」
それに聞き覚えいいこと言っているけど、それぐらいしか、俺に出来ることってなさそうだなって思ったんだよね。
まぁ、成功する(出来る)とは、言ってないけど。
「あら、ナギト様。ごきげんよう。」
「あれ?あ、キラリアさん、こんにちは。」
ピークさんが会話しながら、移動するからついてきたが、キラリアさんのところについていた。
「あれ、ピークさん?本探してたんじゃないんですか?」
「え?もう見つけ終わったので、戻ってたんですよ。」
悪びれもせずにいいますね。
「すぐナギト様の分のお茶も淹れますので、座ってお待ちください。」
「え?でも、俺。」
「勇者様方の参考資料でしたら、その中に混ざっていますので使ってください。」
え?まじか!?
「なんか、いつもすみません。」
「いいえ、ナギト様にお教えすると、いつも新しい気づきがあるので、私も楽しいですもの。」
うわぁ、満点の社交辞令ですね。
まぁ、明確な拒否反応は見えてない気がするし、ピークさんは、雰囲気軽いけど、キラリアさんのこと慕ってそうだからね。
主人が嫌なら、連日連れてはこないだろう。
だとすると、良き友人と思ってもらえたのか、それとも勇者様として何か期待されてるのか。
後者だったら、割と困るなぁ。
無駄な想像をしながら、ピークさんに言われた資料に手を伸ばす。
「本日は……送還魔法についてですか。」
「はい。一応、調べてみたくて。」
「過去の勇者様方も、ほとんどの方が手を伸ばした分野ですね。」
過去の勇者のほとんどか。確かに、結構な量あるしね。今までの人達に出来なかった事を自分が出来るとは思えないなぁ。
まぁ、頑張るけどさ。
とりあえず、まず気になるのは……
「物を呼び出すのと、送るのでは魔法の難易度が異なるんですよね?」
「そうですわね。理由で言うなら、魔力範囲が理由でしょう。」
「魔力範囲?」
「魔法を使う場合、身体の近くの魔素を自分の魔素に染めることで、使用権を得ますよね?」
「そうですね。」
近くの魔素を一度取り込んで、自分の作りたい魔素属性に変換する。それによって、魔法として自在に扱えるんだよね。
「では、魔素をどこまで遠くまで飛ばすことが出来ますか?」
「遠くにですか?」
遠くにか、あんまり考えたことなかったな。火の玉作って放ったりはしたけど、遠くまで飛ばそうとか考えてなかった。
んー、めちゃくちゃ少量の魔素なら結構飛ぶのかな?
「薄くしたら、結構遠くまで飛ばせそうですね。」
「そうですわよね。他の人や動物、土地属性など別の魔力の影響を受けるため、多くの魔素を確保する事は出来ませんが、集中すれば、ごく僅かなら遠くまで魔素を飛ばすことが出来ますのよ。」
「なるほど。」
「この技術を利用して、道具や物に、魔素登録を行い止めておきます。そして、取り出したい時に、登録しておいた魔素を使って、道具全体の魔素を読み取ります。これで自分の手元で再構築させることが出来ますの。これが呼び出しの原理ですわ。」
「ん、んー?」
「まぁ、これは感覚的な話ですわね。ごめんなさい。」
「言いたいのは、手元でなら魔素を使うのは苦ではありませんが、遠く離れるほどその扱いが難しくなると言う点ですわ。」
「あー、なるほどです。」
呼び出しの魔法は、少量の魔素を使って自分の手元で補完出来るから、難しくない。でも、飛ばす場合は、飛ばした先の魔法領域の影響を受けたり、そもそも使いこなすのが難しいから、出来ないとされているのか。
「あれ?でも、レーリさんはご飯をテイクアウトしてた気がするな。」
「テイクアウトですの?」
「外で魔物狩りをした時に、ご飯を頼んだんですよ。あれって、ご飯屋さんに送って貰ったのかと思ったんですが。」
「出前サービスですわね。私も物を買う時に利用しますわ。あれは、支払いなどが済んだ後に、連絡が届いて、呼び出す事が出来るようになりますのよ。会員登録すれば、誰にでも出来ますわよ。」
育ちの良さそうで、話し方が丁寧なキラリアさんから、会員登録ってワードが出るのが違和感待ったなしだな。
庶民的というか。
「自分で買い物するんですね。」
「わ、私をなんだと思ってましたの?」
「いや、お嬢様だと、自分で買ったりはしないのかと。」
「たしかに昔は、貴族のお嬢様って言うと買い物などは、使用人がしていたそうですが、今の時代では自分でなさる方のほうが多いですわよ。よほどの浪費家でない限りはですけど。」
まぁ、そうか。歴史だけでみたら、俺たちの世界よりも進んでる可能性もあるし、この国はいわゆる王国ってやつとは、違う感じするもんね。
割と庶民的な部分があっても、普通なのか。
煌びやかなドレスを着こなして、丁寧な所作で紅茶を口に運ぶ、この方が同じ。
全くそうは見えない。
元の世界だと、月音は高嶺の花って感じの位置にいたけど、この世界だとやっぱりキラリアさんみたいな人がそこに当たるのかな?
「お待たせしました。」
スッと、カップが置かれた。清んだ赤茶の色をしているので、今日は紅茶かな?
「ありがとうございます。」
とりあえず、一度口をつけてみる。
熱すぎない適温で作られていて、芳醇な香りと絶妙な甘さが口にいっぱいに広がった。
毎回思っていたが、凄くうまい 。
「これ、凄く美味しいですね。」
「ありがとうございます。ナギト様の好みがなんとなくわかってきましたよ。」
「いつも思うんですが、ピークさんの淹れたものは、他と比べて特別美味しいですよね?」
「え?わかっちゃいますか?味の違い。」
こう言うギャルっぽい雰囲気がなかったら、凄い人なんだろうなって思うんだけど。
でも、ここ何回かこうして勉強を教えてもらった時、色々といれてもらった。
ご飯とか食べるし、おやつなんかも頼んだら用意してくれるので、紅茶やコーヒーを飲むことがあるんだけど、同じ雰囲気の味だとは思うけど、なんか違う気がするんだよね。
これがあれなのかな?
「淹れる人の技術ってやつですか?」
「まぁ、確かに私は淹れる技術も高いですね。でも、1番はアレンジですね。」
「まとめ方?」
「私は淹れる時に、魔素をスパイスとして入れるんです。この調合には、沢山試行錯誤しましたから、簡単には負けませんよ。」
「魔素がスパイスになるんですか?」
「はい。属性を付与させることで、味覚で感じられるようになります。ですが、量を間違えれば危険もあるので、気をつけてくださいね。」
「あ、そうですよね。」
「感覚としては、料理とほとんど同じです。というよりも、料理でも使われる技術なので、ほとんど料理と同じですね。」
「なるほど。」
「使える魔素属性が多いほど、多彩な味覚を表現出来ますので、ナギト様も向いていると思いますよ。」
「そうなんですね。」
全属性使えるのって、そう言う役立ち方もあるんだ。ありがたいけど、地味やね。
「私がキラリ様付きの侍女になれたのも、希少属性のおかげなんです。」
「ピーク。」
「あ、すみません。話しすぎました。」
「いえ、面白かったので、大丈夫ですよ。俺もアレンジ出来るようになりたいですね。」
「本当ですか?そういうことなら任せてください。料理関連に関することなら、私がお手伝いしますね。」
「お願いします。」
目的からはズレてるけど、この世界の料理。結構気になっていたんだよね。その中でも、話を聞く限り少し違った位置づけってこと?料理とお菓子作りがちよつ違うみたいに言われるのに近いのかな?
その辺も踏まえて、色々と教えて欲しいな。
「では、その辺りの話は、今度知らせを出せていただきますわね。」
「え?キラリ様もお手伝いしてくださるんですか??」
キラッキラした瞳でキラリアさんを見つめる、ピークさんを見ると本当に良く慕ってるんだなってわかる。
「まぁ、貴方だけでは心配ですもの。ナギト様に大変な思いをさせるわけにはいかないわ。」
いや、けど思ったより信頼されてないのか?
「えー?困らせるような事は何もしませんよ。味を見るためと言って、変な調合を勧めたりなんて断じてしませんよ。」
「そんな事考えてたんですか!?」
「いえいえ、キラリア様の酷い言いがかりです。」
「その割には、具体的じゃなかったですか?」
「えー?だって、一人で開拓するのってつまらないんですよ。リアクションしても一人ですし。」
あ、諦めやがった。
「ナギト様。新しい事をたくさん学びたいから、魔素料理にも気を惹かれたんですよね?」
まぁ、そうかもしれない。属性が多い俺には向いてる可能性があるって部分が惹かれた理由ではあるけど、それ以上に普通に面白そうだとは思ってた。
「まぁ、そうですけど。」
「じゃあ、一緒に冒険するのだって楽しそうじゃありません?」
文脈と笑顔で首を少し傾げるピークさんをみると楽しそうにみえるんだが、普通にゲテモノ食わされそうな恐怖を感じる。
「食べ物を粗末にしてはダメですよ?」
うん、当たり障りない理由で拒否っとこう。
「大丈夫です。失敗してもすぐに戻せるのが魔素料理のメリットですから。」
あ、返答間違えたっぽい。




