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第13話 天馬の見る大自然

今回は、ほぼ天馬視点です。

 初めて倒した黒衣獣ダスティマニアは、大した強さはなかった。もともと温厚な動物が黒衣獣化したこともあり、攻撃パターンが少なく、魔法を使えなくなることもなかった。


「昨日、黒衣獣と戦ったって言うのに、今日はダンジョンってブラック過ぎない??天馬も文句言っていいんだよ。」

「そうは言ってられない職業って、わかってて就いたんじゃないのか?」

「こいつに高い志なんかないわよ。能力があって、周りに勧められたから入っただけよね。」

「給料悪くなかったし。フリーの冒険者は、確定申告だるそうだから。」


 今日もまた、鍛錬と戦闘への慣れや連携の練習の為、ダンジョンへ来ていた。


 今話しているのは、外人さんとしては珍しく感じる、童顔で可愛らしい雰囲気を持つ銀髪の男性、アルベと水色のボブカットで印象は可愛らしいが、物言いのはっきりとした女性、エノンだ。


 騎士団とかって、勝手なイメージだが男性の方が多いのかと思っていた。しかし、ほとんど半々くらいだった。

 体つきの事を考えた時、この世界も地球と同じで男性の方が筋肉質な構造をしているが、魔法で筋力も戦力も補える為か、差はあまりないのかもしれない。


 レーリの時も思ったが、隣にいるエノンも健康的なプロポーションではあるが、筋骨隆々な訳ではないし、男性であるアルベは小柄で細身だ。

 毎日鍛錬しているから、筋肉は充分あるとは思うけど、自衛隊の人が彼らを見たら、これが異世界の軍隊ですか!?と驚きそう。

 いや、あんま知らないけど。


「そもそも、天馬はダンジョンって来たことあったかしら?」

「一度別のダンジョンに行ったことがあるから、その時いろいろと説明されたよ。」

「へぇ、どんな説明されるんだ?」

「えっと、まず土地毎に属性があって、大地が持つ空間ないの魔素はその属性に染められるだろ?」

 氷属性なら辺りの魔素を全て氷属性に染め上げて、結果雪が積もった土地になったりする。

「そこに魔法能力の高い動物の死骸や同属性を持つ生物の死体の山が出来ると、大地が魔素の属性を変更するよりも早い速度で、周囲の魔素に影響を及ぼすことがあるんだ。」

 氷属性の土地で炎属性の強い動物が死に、辺りの魔素を炎属性へ変更することで、雪国の真ん中に灼熱の大地が出現するみたいなこともあるらしい。

「これによって、生態系に影響が出てきて、環境変化に順応な動物なんかが住み着いたり、遠くから渡ってきたりする。そこでもともとの動物との争いとなって、現存動物に影響があるから、環境を直す必要があるんだったよね?」


「へー、そうなんだ。」

「なんで、あんたが教わってんのよ。でも、天馬の説明で概ね合ってるわ」

「だって、ダンジョンは公務員としては割りの良いお仕事じゃん。」

「そうなのか?」

「大地に影響が出るほどの高い練度の魔石が取れることになるからね。ただ、高い可能性があるだけだから、冒険者はあまり手を出さないのよ。難易度もばらつきやすいし、人数いるから、手に入った魔石も売る一択だからね。」

「そうなんだ。」

「俺らの場合、魔道具開発とか防具開発系の部署に回されて、属性に適性があったりすると、開発が進んだ時とかに、優先的に触らせて貰えることがあるから、楽しいんだよね。」

「わかるわ。新しい物にふれるのって妙に楽しいのよね。」

「強いモンスターを狩ろうが、ダンジョンを踏破しようが、固定給はほぼ変わらない俺らからしたら、後で追加要素があるかもしれないダンジョン攻略の方が、人気な仕事なんだよな。」

「なるほど。」

 一応、騎士団と冒険者で畑分けがされてるってことかな?

「よって、ダンジョンがどんなものかちゃんと知らなくたって、とりあえず割りのいい仕事って覚えてる。俺は。」

「いいのかそれ?」

「ダメよ。天馬はアルべを見習わないでね。」

「大丈夫。この世界の事については、知りたい事だらけだから教えてくれると助かるよ。」


「この世界のことかー。俺に教えられるのは、遊びくらいだな。休み被ったら娯楽施設とか連れてってやるよ。」


「そうね、パーティ後になるとは思うけど、買い物とかも行きたいでしょう?今のところは、国からの提供品があるだろうけど、こうやって、お手伝いに来てくれるなら、給金も出すだろうし。」

「本当か?それは楽しみだな。」


 この世界の人達は俺たち勇者と聖女に対して、多少の引け目があるらしい。

 過去に召喚されてきた人達の証言や、伝わった文化から考えて、俺たちは、一般的な生活を送り、家族と共に幸せに暮らしていたところを、魔王災害の要として、何もかもを奪って召喚していると言う考えが、最近ではあるらしい。


 だからこそ、家族を用意できずとも、生活くらいは同等かそれ以上のものを用意する義務があると語られているようだ。

 それは勇者の能力に問うものでは無く、補填すべき義務とされている。


 だからこそ、ある程度のものは言ったら用意してくれるし、ご飯もいい物を用意してくれているんだろう。


 ただ、こんなにいろいろされれば、期待に応えたいとか、何かしら手伝いたいという気持ちになってくる。


 その為の、今日のようなバイトだと思っていたが、給金を出して貰えるならありがたいなぁ。

 どちらかと娯楽に近い物を頼むのは、なんか気が引けちゃうからね。


「そうと決まれば、お仕事頑張らないとな!」

「そうね。今日は、昨日の黒衣獣ダスティマニアに比べれば骨は無いかも知れないけど、一般的な大人3人がしっかり連携を取って倒せるレベルの敵よ。気を抜かないでね。」

「おっけー。」

「今日はとりあえず、天馬の好きに戦ってみて。俺たちがそれに合わせるようにするから。」


 ダンジョンと言っても、補正されていたり、道がある分けじゃない。大地に影響を与えている動物の魔石を中心にその魔石の属性の生物や植物が根を張っているので、道が確保されているわけではない。

 これらを倒しながらひたすら中心に進むしかないようだ。


 このダンジョンが形成されたのは最近らしいけど、弱肉強食のピラミッドはすぐに形作られるようで、ここのボスモンスターらしき生物を見つけた。


 炎を纏ったハゲタカのような生物。来る前に説明された動物と変わりはないようだ。

 ダンジョン内の生態系は日々変わることが多いから、絶対とは言ってなかったけど、聞いてたとおり炎域鷹イーグルファルスだった。


「好きにやってみていいんだよな?」

「うん。俺らが合わせるよ。」


 纏った風に押されるように、勢いに任せてハゲタカの元に駆けていく、天馬。

 その姿はさながら突然起こった嵐のようで、気づいた炎域鷹イーグルファルスは、驚いたのか、高く飛翔した。


 狙いの通りの動きだったのか、天馬は流れるように雷属性の魔素を集めると、炎域鷹イーグルファルスに放った。


 アルベとエノンは口を交わした。嵐に塗れた天馬にはおそらく聞こえていない。


「合わせるとは言ったけど、あれはもう致命傷だよな。」

「そうね。私たちが入る余地は無さそうね。」

「最近の1番割の良い仕事は、天馬との狩りだよな。」

「そうね。昨日の黒衣獣ダスティマニアといい、炎域鷹イーグルファルスもほとんどの人は、その場で魔法を扱うことは出来ない。だからこそ、武術と連携が必要となるはずなのに、天馬は余裕そうね。」

「これが勇者様の力ってことか。」

「なに?自信でも無くした?」

「いんや、頼もしいだろ。勇者様を求めた理由がちゃんとわかったよ。」

「そうかもね。」


 なんとも言い難い反応を示したエノンに、アルベは少し首を捻ったが、天馬が近づいてきてるのがわかっていたからか、口をつぐんだ。


「こいつは、どの部位取ったら良いんだ?」


 昨日の黒衣獣ダスティマニアに比べると、だいぶ歯応えはなかった。まぁ、100人弱ぐらいで相手する敵と、3人ぐらいで事足りる敵なんだから、当たり前なのかもだけど。


 取れる部位を取った後、このダンジョンを作り上げた魔石もすぐに見つかった。

 これにより、後は自然と元の景色に戻っていくそうだ。


 帰り道は、行きと違い楽だった。魔素が弱まったのに気づいたのか、属性の合わない動物はその場を去っていき、その場の属性に合わせていた植物なんかは、戻る途中なのか中途半端な色合いを見せている。


 ダンジョンだったあたりの境目を抜けるあたりで、後ろを振り返る。

「っっ!!」


「どーかした?天馬。」

「何か忘れ物?」

「いや、なんていうか、綺麗だなって。」


 もともと大きくないダンジョンだったためか、だいぶ元の景色に戻りつつある。

 所々で、炎が上がり、木々や草花に彩りを与えているにも関わらず、燃え広がることも無くゆったりと、揺めきは小さくなり、灯りが失われていた。


 元の世界なら考えられない不自然な景色なのに、自然の美しさを感じた。


「月音に写真の魔法を教えてもらっててよかった。」


 木々の狭間から滴り落ちる炎の雫。

 炎のダンジョンだった時は明るく感じたが、木々が生い茂っている為か、思ったよりも暗い森の中で、妖しく炎が揺らめいた。


 帰ったら2人に見せようかな。


 写真の写りを確認して、戻ろうかと思ったが、2人が覗き込んでいる事に気がつく。


「こーやってみると、凄く綺麗だな。」

「そうね。ダンジョンの消えていく姿なんて、ちゃんと戻ってるかしか気にしてなかったから、新鮮ね。」

「こんな写真って、あんまりないのか?」

「おれ飯系しか見ないからな。」

「私も友達の写真しか見ないからなぁ。調べれば何か出てくるかもね。」

「勇者様って、こんな事も出来るのか!?」

「え?いや、別に写真のテクニックとか何にもないぞ。ただ撮っただけだし。」

「いや、この感性が凄いわ。」

「撮ろうと思った事なかったものね。」

「こういうのが、バズるんだろうな。」


 変わった景色を見たと思ったら、似た感覚のこの世界がなんとなく和む。


 魔法世界でも、文化が発展してくると結構似た感じになるものなのかな?

「え、なんで天馬笑い出したし。」

「いや、ちょっと。」


 それとも日本人が混ざったからなのか。


「あんたの短絡的な思考を笑ってるのかな?」

「は、なんで?今更だろ!?」

「自分でいうの!?」

「ごめんごめん、そういうのじゃないから。」


「えー?じゃあ、なんだよー」

「ちょっと安心しただけだから。」


 2人は顔を見合わせて首を傾げた。

「今、安心する要素なんかあったか?」

「さぁ?」




どーしても、一瞬視点を変えたかったので、視点を変えてしまいました。見にくかったら、ごめんなさい。

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