第12話 月音のファッション体験
今回は月音視点のお話です
異世界に召喚されてから、1週間くらいたった。
そして、私は今凄く興奮している!
大量の見本のドレスと沢山のデザイン案。この世界のおしゃれというおしゃれが押し寄せてきてる!
ここ1週間はこの世界について知る為に、見たり習うことが多かった為に、魔法によって毎日清潔に整備されていた制服しか着ることができなかった。
ドレスの女性を見かけていたので、ドレスにも興味があったし、話を聞いている限り凄い進んだ文明社会なのだ。ドレス以外にも日常的な服にも興味があった。
今日は今度あるパーティ用のドレスを選ぶ為ではあるけど、たくさんのアイテムを用意してくれたらしい。
この世界のおしゃれに触れられるとなったら、上がるのは必然だよね。
この世界で使われる服装の種類はすっごく大きく分けて3種類らしい。
冠婚葬祭や畏まった式典などで着るドレス類と、魔物討伐などの自然環境に合わせた装備類に、普段使いの普段着って言う感じだ。
ドレス類は普段着と大きな差はないかも知れないが、一応マナーとして存在しているもののようで、普段使いする人もいるみたい。
一般的な魔法ではないが、クリーニングみたいな魔法があり、それをお仕事にする人もいるのだから、普段使いでも難しくはないのだろう。
ただ、着てて疲れるので多くはいないようだ。そこはドレスの種類にもよるとは思うけど。
次に装備類。魔物から取った素材で作られて、見た目より機能美重視らしい。
一定の属性に対する属性操作の効率が上がったり、属性攻撃による耐性が上がるらしい。
この辺はゲームみたいで面白いよね。
そして最後に普段着!これが本当に凄い。普段着系として存在するアイテムのほとんどが色彩を自由に変更できる作りになっている。
服を買う時に、同じアイテムでも色違いで迷う事って凄く多かったから、流石は異世界だなって一番感じたポイントだった。
デニムのような素材なのに、さまざまな色彩に変更できるのはこの世界ならではな気がする。
アイテムが多く、多様な色彩を楽しめることもあって、ドレス探しの予定だったのに、ファッションショーを開催してしまった。
「んー、月ちゃんの選ぶ服はどれもセンス抜群だね。特に色使いが凄い参考になったよ。」
「本当?ありがとう。アメちゃんが何着ても可愛いから楽しくなっちゃった。」
今は医療部で仲良くなったアメリア・ガッフィード、通称アメちゃんとティータイム中だ。
先程まで、アメちゃんとファッションショーもどきを開催して、写真を撮りまくったので、お茶しながら見返していた。
金髪ショートボブにキリッとした瞳。でも、キツい印象はなく程よく可愛らしい印象を持っている。
初めて話した時から、ハキハキとまごつくことなく、話していた事や見た目が外人さんと言うこともあって、年上かと思っていたが、実は同い年らしい。
現在、学校が長期休み期間らしく、将来医療分野で働きたいって事で、インターンっぽい事をさせてもらってるんだって。
「たくさん着たけど、結局ドレスはどーするの?途中から完全に、ドレスから離れちゃったけど。」
「んー、先に男2人の衣装決めちゃおうかなぁ?」
「え、2人のも月ちゃんが決めるの??」
「ベースは決めておこうかなぁと思って。2人とも選べっていえば、決めると思うけど。絶対めんどくさがるとは思うのよね。2人のセンスに合うもの選んでおけば、それにすぐ決めると思うし、今回は私達の為のパーティなんでしょう?」
「そうだね。」
「なら、3人の服もバランスがいい方がいいかな?と思ってさ。」
「確かにそうね。」
「今回は1番畏まった式典って事で、スーツ系が無難なんだっけ?」
「うん。男性陣はその方が助かるかな。」
絶対ではなく、勇者の2人の好きなものでいいって事なんだろうけど、天馬は協調性高い方だし、ナギナは目立つの苦手だから、無難な物を好むだろうな。
2人の好みに合わせて服を考えていく。天馬が差し色かベースに緑、ナギナは青系を入れておけばいいかな?
まぁ、だから必然的に私は、赤系か黄色、暖色系になるから、あんまり2人の決めておく理由ない気がしてきた。
「月ちゃんは2人とはお付き合いしてないの?というか、恋人って?」
途中で何かに気づいたのか心配そうに、目を垂れさせているのが、可愛らしい。
「今は特に誰もいなかったから大丈夫だよ。2人ともただの幼馴染。」
この世界でも、婚約者みたいな文化は廃れていて、恋人を作るケースが最近の主流のようだ。
身分差の恋なんてものも少なく、貴族と平民が結婚することや、王族と結婚することもあるようだ。
なんていうか、政治の形がよくある王侯貴族のものとは違うのだと思う。
聞いている限り、貴族の地位は県知事とかそんな感じに近いのかなと思うし、王族に至っては、昔の天皇に近い気がする。
昔の日本では天皇が政治を取り仕切ることもあったし、将軍がすることもあった。
必ずしも、王族が一番上に立ち政治を取り仕切る事の無いように、王様が無能なら力を奪える形になっているんだと思われる。
現在は、王族が優勢っぽいけど。
公民は暗記してただけだから、憶測でしか無いんだけどね。
「そうなんだ。2人とも仲良さそうだったから。」
「あれ?もしかして、どちらかに興味ある感じ??」
「んーん、私じゃないよ。やっと、話しかけられるってこともあって、なおかつ勇者様じゃない。今、意中の人がいない人は目輝かせてる人多くてさ。でも、月ちゃんとお付き合いしてるとかだったら、どうしようもないでしょう?」
「あぁ、なるほどね。え、じゃあ、勇者様って事を加味しても、アメちゃん的には2人は無しだった?」
「え?ううん。そんな事は無いよ。今、お付き合いしてる人がいるからぁ。」
お付き合いしてる、あたりから声が小さくなっていき恥ずかしそうに視点を下げている姿の、なんたる可愛さか。
「そっかそっか、お付き合いしてる人がいるなら、他なんて知らないよね。」
「そ、そんな事は無いんだけどね。でも、なんか、ね?」
恋する乙女って、どの国でもどんな世界でもやっぱり可愛いらしい。
私もこんな姿に憧れたんだったかな?
お付き合いしたことは、何度かあったけれど、こんな風になった事は一度たりともなかったな。
恋愛ってものに憧れて、好かれることも多かったから、お付き合いをした事はあったけど、好きって気持ちに行き着くことが出来なくて、結局、相手を怒らせてばかりだった。
天馬とも一度だけ、付き合ったことがあったけど、2人してたぶん違うってなったんだよね。
それから、好きって気持ちを理解したこともあったけど、その恋が実ることもなかったし。
私も物語のような、誰もが心惹かれる物を体験してみたいのだけど。難しいのだろうか?
可愛いらしいアメちゃんを愛でていると、ドアが叩かれると、使用人の方が入ってきた。
「デロイリッド様がお見えです。お通ししてもよろしいですか?」
「あ、大丈夫ですよ。」
デロイこと王子様がやってきたようだ。
「ドレスの着付けをしていると聞いて来たんだけど、もう決まったのかな?」
私がドレスを着てないが故の発言でしょうね。
「あ、ごめんなさい。いろいろな服を着れるのが楽しくって、まだ決まっていません。」
「時間はまだあるからゆっくりで大丈夫だよ。この国のファッションにも興味があるって聞いていたから、ドレス以外にも揃えさせて置いたし、退屈しなかったのなら、よかったよ。」
うんうん、デロイは女心をよくわかってるね。
こんな膨大な種類を用意されたら、テンション上がらない人なんていないよね。
それに普段着系は種類があっても、色違いを用意する必要がない分、種類が豊富で見てて楽しい。
「この色を変えられるって言う技術が凄くって、この世界の女の子が羨ましかったよ。」
これが当たり前って世界で育った事実が、なんかずるいってなっちゃうよね。
今身につけていた、白のブラウスと薄ピンク系のロングスカートを上をアクアに、下をピスタチオ系に変えてみる。
「同じ色でも結構、雰囲気変わるんだね。」
「そうなの!それが楽しくって。」
同じ洋服の組み合わせなのに、違った雰囲気を楽しめるのも良いし、流行色用に買い直す必要がないのも、学生身分からしたら、凄く助かる。
「ちなみに、オリジナルカラーはどんな色だったか、聞いても平気かな?」
「オリジナルカラー?」
「あ、すっかり忘れてました。月ちゃん、まだオリジナルカラー試してなかったね。」
「なにそれ?」
「色って好きに変更できるけど、微調整とかはなく、赤は決められた赤系の色にしか変更出来なかったでしょ?」
「そうだね。」
色を変更出来ると言っても、もう少し薄くしたいとか、濃くしたいとかは出来ず、決められた色にしかならないって言う部分の制約があった。
ただ色も赤やピンクなど豊富にあるため、そこまで気にしてはいなかったな。
「そんな中、唯一決められた色と別の色に変更出来るのがオリジナルカラーなの。この服の水色ってこの色でしょ?でも、私のオリジナルカラーはこれより少し明るめの水色なの。」
そういうと、来ていた服をデフォルトの水色にした後、オリジナルの水色に変更していた。
確かにデフォよりも、色が明るめに見える。
「本当だ。こんなことが出来たんだ。」
「まぁ、私のは色が薄くなるだけだから、あんまり使い道は無いんだけどね。たまにしか使わないの。」
「そうなんだね。」
確かに、薄くなっただけかもしれないけど、白よりも少し色味を、持たせたい時なんかに、重宝しそうだ。
やばい、また、いろいろと試したくなってきた。
「えー、もっと早く教えて欲しかったよ。そしたら、もっと色々と考えてみたのに。」
そう言ってみると、アメちゃんが呆れたような顔をする。
「色を変えられるって知って、暴走し始めたのは月ちゃんでしょ?説明終わる前に、着替え始めたんだから。」
「あー、そうだったね。ごめんなさい。」
「全く。ま、私も楽しくて完全に忘れてたんだけど。」
デロイのことを忘れて2人で、笑ってしまった。
「まだなんだね。じゃあ、オリジナルカラーについては今度にするよ。」
「え、いいよ。今してみるから、デロイも見ててよ。」
そういうと、私はパパッとカラーチェンジしてみる。色選択でオリジナルってのを選択すればいいのかな?
「え!?それは」
「ダメだよ!月ちゃん!!」
デロイが驚いた表情をして、アメちゃんには大きめな声で静止を促された。
が、カラーチェンジ自体は手慣れてたし、自分のカラーが気になってしまった私としては、2人の反応を見るよりも早く、色を変更してしまっていた。
デロイの表情が驚きから、恥ずかしそうに赤面した後、後ろを向いた。
「あぁ、やっぱり!!」
アメちゃん的には、予想した色になっていたのだろう。
私の服装は、黒い透け感のある色合いに変更されていた。
シャツやタンクトップなんかを着てるなら、全然ありな気がするが、現在はブラとパンツが見えてしまっていて、如何わしいことこの上ない。
「早く、色を戻して。王子様はまだ、こっちみてはダメですよ。」
言われるがままに色を戻す。
「オリジナルカラーは、本当にどんな色になるか分からないから、人前で試してはいけないんだよ。ここでは常識なんだけど、月ちゃんは知らないよね。本当にごめんね。」
「いや、今回も私が詳しく聞く前に、暴走したからアメちゃんは、悪くないよ。」
うぅ、こんな罠があるなんて全然気づかなかった。ただ……
「デロイももうこっち見てもいいよ。」
「あ、あぁ。本当に申し訳ないことをした。」
「デロイは色の予想が出来た上で聞いてたの?」
「え?あ、それは、回復魔法が得意な場合、透明感のある色合いになる事は多いのは知っていた。ただ、そこに他の色がついたのか気になって。」
「なるほどね。」
回復魔法が強く、それ以外にも適正の多かった私だから、どの属性の影響が強いのか気になったってところか。
まぁ、じゃあ、仕方ない。仕方ないけども。
「じゃあ、見ちゃったものは仕方ないから、許すけど。今日のことは他言無用だからね。」
「わかってる。絶対に口にしないと約束するよ。」
あぁ、もう!物語みたいな体験がしたいなんて言ったけど、こんな異世界に来たり、少年漫画のヒロインみたいな体験がしたかったんじゃないんだけど!!




