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第11話 キラリア・アークエンド

 一角獣、馬科の単元生物。その土地の魔素属性の影響を大きく受け、土地に合わせて属性が変化する。魔素に敏感であり、仲間の物でない魔素を感知するとすぐさま走り去る。草食動物で、基本的に性格は温厚。角は高い魔素感知の役割を担っており、攻撃などには滅多に使われない。


 なんか、思った以上に黒衣獣ダスティマニア化すると改変されるんだな。

 まぁ、黒衣獣ダスティマニアの中では、弱い方だったからって可能性もあるけど。


 はぁ、嫌な事実だ。ほとんど手も足も出なかった敵は、敵の中では断然弱い部類の敵だった。

 まぁ、レーリさんが一撃で吹き飛ばされたように、黒衣獣ダスティマニア化するだけで、一撃一撃に込められる魔素の重みが跳ね上がる為、大抵の動物と比べたら段違いで強い事には変わりはないんだが。

 もともと本能に闘争本能よりも逃走本能が書き込まれた生物だったため、攻撃パターンも少なく、物理攻撃も弱かったって事なんだろう。

 黒衣獣ダスティマニア化したのが、先に見た炎融熊ファールドだったら、全滅だってあり得たかも知れない。


 そう考えると、多少は運が良かったのかも知れないな。今後、前線に出たいなら、せめて腕が取れた後ぐらいには動けないとダメだ。

 それを知りたくて今日は、また図書館にやってきた。

 戦えるようになった時の事を相談しようと思うと、腕の話が必要になるし、自分で調べるしかない。


 昨日は効率的な魔法運用と魔素操作の練習って言う、基礎的な事を行うつもりだったのに、血反吐吐いて左腕が2本になるなんて思いもしなかったな。


 あの腕ちゃんと消えたのかな?


 一角獣についての本を片付けた後、魔素や魔法操作についての応用的な本をいくつか探す。

 あまり確信に近そうなものに、ピンと来ないが手当たり次第に集めていく。

 別に本を探さなくても、この世界にはSNSのようなものがあるように、インターネットに近いものも存在する。

 だが、ネットと同じで誰でも書き込めるものだからこそ、間違いもあるし、わかりにくかったりもする。

 基礎知識も低い状態で見たら、正解がどれかわからないから、金出して売り出されている本の方が多少は信憑性高いだろうと思い本を探すことにした。

 でも、図書館の利用者数を見た感じ、それなりに人がいるんだよな。

 ネット化が進んでも、本が好きって人がいるのは異世界でも変わらなそうだ。


 ただ今日は流石に朝早い為か、人はほとんど居ないな。


 昨日の月音の回復魔法が効いてるのか、めちゃくちゃ身体が好調だ。傷よりも体の疲れという疲れが癒えきってる。


 聖女様の10秒エステとか言って、回復魔法をかけるだけとかでも、金取れそうだな。




 なんて事を考えていたのが、3時間くらい前のことだ。

 結果としては、よくわかんねー。ってなって、諦めた。


 まぁ、普通に考えたら属性操作についての指南書的な本に、怪我すると使いやすくなるよなんて書いてあるわけないよな。

 見落としただけかもだけど、大々的に書かれるとは思えない。


 そーなると、ネットで調べた方が今回に関しては早いのかなと思うが、なんて調べるべきかなぁ?


 思いつかないし、面倒くさくなってきたので、魔法場に移動して属性操作の練習を始めたのが1時間くらい前のこと。



 休憩したら今度は、剣の素振りかなぁ。


 魔法場は、その名の通り魔法を練習するための施設だ。

 街中で攻撃魔法をぶっ放すわけにはいかない為に存在する施設で、今は王城内の騎士団の人とかが利用するところを借りてるが、街中にもジムみたいな感じで存在するらしい。

 魔法って、使ってると疲れるけど、スポーツみたいな楽しさがある。

 人によっては良いストレス解消になるんだろうな。


 区切られた部屋から出て休憩スペースに向かう途中、けたたましい轟音が鳴り響いた。


 すぐ近くの部屋から人が出てきた。

 音の方向的に、この人だろうな。さっきの音。


 髪をかきあげつつ、ゆっくりと深呼吸しながら出てきたのは、艶がかった黄金の髪に切長で整った目元を持つ凹凸のはっきりとしたプロポーションの女性だった。


「キアの魔法は相変わらず凄まじいね。」

「はい、キラリ様の魔法はいつ見ても惚れ惚れします。」

「ただ余ってた魔素を打ち出しただけよ。何も難しいことはしてないわ。」

「それであの威力なのですから、凄いじゃないですか!」


 女性の知り合いが外から見てたのか、すぐに話しかけていた。

 視線を向けると、王子様と図書館にいたギャルっぽい制服の女性だ。

 前回とは違う制服だなぁ。てか、どこにでもあの服でいるんだな。

 魔法場は汗をかくので、運動場と同様に動きやすい服装の人が多いのに。


「あ、凪斗さん。お早いですね。魔法の練習ですか?」

 王子様が気づいたようで、声をかけられた。


「そうですね。何故か体の調子が良かったので。」

「あぁ、月音さんの魔法の影響ですかね?昨日は本当にお疲れ様でした。レーリのこともありがとうございます。」

 王子様も月音の魔法は傷を癒すだけではないと思ってるのか。


「いえいえ、昨日も言いましたけど、倒したのは天馬ですし、直したのは月音です。お礼は2人に言ってあげてください。」

「でも、守ってくれたのは、凪斗さんですよ。」

 俺も初撃で守ってもらったんだけどな。まぁ、食い下がるのも良くないか。

「ありがとうございます。そう言って貰えるなら、頑張って良かったです。」


 そんな話をしてると、奥の2人のうち、ギャルっぽい制服の人が凄くソワソワしているのが目に入った。

 たぶん、王子様も気づいたのだろう。少し呆れた顔をしている。


「2人の紹介をしても良いですか?」

「お願いします。」


「こちらが幼馴染のキラリアとその侍女のピークです。」

「キラリア・アークアンドですわ。」

「ピーク・ドゥエンです。よろしくお願いしますねぇ。勇者さま!」


 礼節を重んじてなのか、凄く丁寧な所作でお辞儀をするキラリアさんに対し、ウィンクしながらバッチリポーズを決めて軽い挨拶をしたのが、侍女のピークさんらしい。

 何故、解雇されていないのか?疑問しかないんだが、聞いて良いんだろうか?


「な、凪斗なぎと 流瑠々(ながるる)です。よろしくお願いします。」


 立ち話もなんなのでと言われた為、簡易的に置かれたベンチに腰掛けることになった。王子様が横に来て、対面にキラリアさんとピークさんが座ってる。


「凪斗様は図書館に良くお見かけしますよね。」

「あ、そうですね。俺もピークさんを見かけたことあります。」

「本当?」

「服が珍しかったので。」


 ピークさんは聞いた途端に目を開いて、嬉しそうに笑った。

「可愛いでしょう!?」

「え!?あ、はい。似合ってます。」

「ありがとうございます。」


「ドレス姿の方が多いので、城内は基本的に正装が当たり前なのかと思っていたんですが、大丈夫なんですか?」

 そう聞くと、王子様が答えてくれた。

「現在は公的な社交場が多く開催されていますので、正装が多いかも知れませんね。」

「後は、勇者様型へのアピールですよ。先日の国王様のツイートから、天馬様も凪斗様も庶民的な方だろうと推察が上がり、あまり見なられていないだろうドレス姿の方が目を引くのではないかと考え、ドレスの方が多いようです。」

「そんな考えがあったのか。」

 確かに、珍しくて最初はドレス姿の人によく目が行った気がする。

「じゃあ、普段はあまりドレスの方は多くないのですか?」

「そうですね。皆さんオフの時は、私のように着たいものを着てると思います。」

 制服があるように、ファッションも聖女様によって、大きく発展しているはずだ。なのに、ドレスが主流ってのも変な話だもんな。


「そうなんですね。」


「他にも何か疑問や困っていることはありますか?」

「困っていることですか。」

「勉学なんかでも大丈夫ですよ。ここには国の叡智と名高いキラリ様がおりますから!」

「何故あなたが得意そうなの?」

「キラリ様の名誉は、私の名誉ですから。」


 良さげなこと言ってるように聞こえるのに、なんだろう?ジャイアニズムを感じる。


「キアの頭の良さは、僕も保証しますので、大抵のことには答えてくれると思いますよ。


 困ったこと、困ったこたか。傷の話はしづらいし、無難なところから聞いてみるかな。


「昨日の戦いの中で、属性操作がしづらい場面があって。」

「属性操作ですか?」

「凪斗様は魔素領域については、まだ知りませんか?」

「魔素領域ですか?たぶん、わからないですね。」

 本で見たかな?内容は全く思い出せない。


「魔素領域の知識もなく、黒衣獣ダスティマニアと渡り合いましたの?ほとんど怪我も無かったとお聞きしましたが、流石は勇者様ですわ。」

「あ、いえ。目立った外傷が無かっただけで、骨とかはたぶん折れてましたよ。」

「え?大丈夫なのですか?」

「あ、怪我については月音がすぐ直してくれたので、心配いりません。」


「そうですか。では続けますね。魔素領域は権利を主張している魔素の空間を指します。」

「権利を主張している魔素ですか?」

「そうですわね。せっかく魔法場にいるんですから、体験してみるとわかりやすいですわ。」


 そう言われたので、また、魔法場の一室に戻るようだ。

「キア。」

 たった一言、キラリアさんの愛称を呼びながら、王子様が手を差し出している。

「ありがとうございます。」

 手を引かれ、優雅な所作でキラリアさんも立ち上がっている。


 王子様は、月音と少し雰囲気が良いと思っていたんだが、なんとも絵になる光景が広がっていた。

 月音と天馬の繰り広げる雰囲気とは、なんだか違う気がする。

 幼馴染と呼ぶあたり、婚約者とかではないんだろうけど、付き合ってたりはするんだろうか?

 この世界の恋愛観ってどんな感じなんだろ?


 王子様も天馬同様、凄いスマートだな。俺には一生できる気がしない。

 そんな事を思いつつ、移動した。




「こちらを見てください。」

 キラリアさんの目の前に、水泡が浮かんでいる。

「この水泡に手を入れて、属性操作を行ってくださいますか?」

「わかりました。」

 水泡に手を突っ込んで、手の周りの魔素に対し、属性操作を試みる。

 属性の相性を確かめるのに、空気中の魔素を属性操作するのと、桶に溜めた水に対して属性操作を行ったことがあるから余裕だろう。

 確か氷や毒に変えるのは、空気より早かった気がする。


「ん?上手く出来ないですね。」

 いくら属性変換しても、すぐに水属性に戻されてしまう。

「他者が先に属性操作を行った使用中の魔素は、属性記憶により戻ろうとする力が発生します。その為、上手く属性操作が行えなってしまうことがありますわ。」

「なるほど。」

「強い獣。特に黒衣獣ダスティマニアなどは、この属性領域を自身を中心に大きな範囲に常に作っていますわ。対抗するには、属性記憶による戻る速度を上回る速度で属性操作を行うしかありません。」


 一角獣の足元で属性操作を行おうとした時に、上手くいかなかったのはこれが原因か。

 謎の一つが解決した。


「その為に、人々は武術を発展させてきました。敵によっては、魔法は使えないと思った方が良いことが多いのです。」

「そうだったんですね。」


 魔法特化の世界だと思っていたが、騎士様達がみんな武器を滞納できるタイプのベルトをしてたのは、この為か。


 どちらかと言うと、魔法を多く学びたいと思っていたのに、問題が山積みになってばかりだな。




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