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第一話 爆速で走るトロッコの話

細々と書き進めていこうと思っています。

いろいろと拙いところもあると思いますが、読んでいただからとありがたいです

よろしくお願いします

 なんともない、一軒家の一室に、美男美女が揃ってる。

「2人とも、うちに来るの久々だよね。」

「まぁ、いろいろと忙しかったからな。」

 気の良い爽やかな笑顔で答えたのが、東宮とうぐう 天馬てんま。学年一のイケメンさんであり、運動神経抜群な上に、リーダーシップまで取れる。

 男女問わず、人気の高い俺の幼馴染一号さんだ。

「忙しかったから来れてなかったけど、やっぱり久しぶりに来ると、なんか落ち着くねぇ。」

 この部屋唯一のクッションを独り占めし、少しグダッとした雰囲気で話すのが、ゆるふわっとしたボブの茶の髪を揺らしつつ、パッチリした瞳と、愛らしい笑みが良く似合う。可愛い系女子の幼馴染二号、珠宮たまみや 月音つきねだ。

 そして、最後に誰に向かってかもわからない挨拶をするのなら、パッとした印象とか何もない、凡人中の凡人。他人の話す俺の特徴第一位が、美男美女の幼馴染という、外部的特徴すぎて俺の特徴ではねーだろとツッコミたいが、事実すぎて何もいえない悲しさを背負っている俺、流瑠々 凪斗ながるる なぎとである。


「あ、ねぇねぇ、2人とも。心理テストしない?」

「心理テスト?あー、月音そういうの好きだもんな。」

 月音のあの、ねぇねぇは、あざといなーと思いつつ、だけど、男子には有効な手段だろうなと思えてくる。

 天馬のちょっと、困ったような笑い方も、なんだかんだ、相手しくれるのがわかるから、女子受け良さそうだ。

 うん。やはり、2人で話してると絵になるなぁと思う。何も知らなければ、このまま2人きりにした方がいいんじゃないかと思えてくるが、そんなことしたところで、2人に発展性がないのは十分理解してるので、気にしない。


「いいよ、どんな感じのやつ??」

「えっとねぇ確か、爆速のトロッコがあって、道が二手に分かれてるって感じのやつなんだけどね。」

 何処となく1人か5人くらい死にそうな雰囲気漂ってるんだけど、心理テストだよね?

「ふむ、よくわからんし出してみてよ。」

「おけ。ちょっと長めだからちゃんと聞いててね。」


 一呼吸置いてから、月音がまた口を開いた。

「今貴方の前には爆速で走るトロッコがあります。止める手段はありません。現在トロッコが走っているレールの先には5人の人がいます。このまま行くと確実にこの5人は轢かれて死んでしまいます。また、自分の目の前には、レールの分岐を変更するレバーがあります。ただし、分岐した先のレールには、人が1人いるため、代わりに1人が死んでしまいます。どうしますか?っていうやつなんだけど」

「まって、心理テストじゃなくない!?これ??」

「え?なんで??」

 思った通りすぎて、すかさず突っ込んでしまった。そして、そんなキョトンとした顔されても困る。

「これ、トロッコ問題じゃないの?」

「そうだけど?」

 成り行きを見ていた、天馬が聞いてくる。

「ん?ナギナもしってるのか、この問題?」

「まぁ、一応。SNSで見かけたことある。簡単に言えば、5人見殺しにして、自分は静観するか、1人を犠牲にして5人助けるかって話だよ。有名な思考実験らしいけど、心理テストとは別物だと思うんだが。」


 天馬に簡単に説明した後、月音に問いかける。


「そう?思考とか、その人の心理とかが問われる問題だから、心理テストとも言えると思うんだけど。」

 月音って、見た目に似合わず、現実的な部分があるんだよな。人の思考をゆるふわに紐解くのが、心理テストの醍醐味だろうに。こんな生々しい話をして、キャッキャ言ってる女子高生集団がいたら、恐怖でしかないんだが。


「まぁ、言いたいことはわかるけども。別物だから、あまり他言しないように。」


「まぁ、細かいことは置いといてさ。どうするの?」

 めちゃめちゃウキウキした表情で聞いてくるじゃないですか。そんな気持ちで聞く内容じゃないですよ。

「んー、5人か1人を助けるかって聞かれるんなら、5人なんじゃないのかな?特に知らない人ってことでしょ??」

 天馬は初耳みたいだし、興味を示してるみたいだから、このままのるか。

「その辺はまぁ、派生系がいろいろあるけど、とりあえず全員知らない人ってことでいいんじゃない?ただ、そんな簡単に決めていいの?って思うけど。」

「そうだよ、天馬。この質問の肝になる部分を考えないと。」

「肝になる部分?」

「このトロッコがそのまま走り去ったなら、5人が亡くなった不幸な事故だけど、天馬が意図的にレバーを引いたなら、天馬が意図的に殺したことになる。」

「え!?あ!それは、たしかにそうか。え!?じゃあ、そんなの引けなくないか!?」

「引けなくはないよ、5人の人を助けてることには変わりないんだから。」

「そうだよ。この問題はね、人によって出す答えが全然違うの!出す過程とかもね。だからこそ、その人の深層心理が暴かれちゃうってわけ。」

 そんな乙女チックに言われても、心理テスト好きの女子の暴きたい、深層心理って絶対こんな善悪に満ちた内容じゃないと思うんだが。まぁ、楽しそうだから、いいか。

「で、月音だったら、どーすることにしたの!?」

「えーー、先に聞いちゃうそれー?」

 いや、そんな照れながら言われても、そんな可愛く返答する場面じゃないんだが。

 そして、私だったらねー、と前置きを置いた後、少し寂しげに答えた。

「たぶん、レバーに触らないと思う。というより、パニックっちゃって何も出来ないんじゃないかな?一人より五人の方がとか、でもそんなこと私がして良いのかな?とか、いろいろ悩んでる間に、答えが出ちゃってると思うんだよね。」


 まぁ、そうだよな。ここで動けるって答える人のが少ないイメージではあるし。レバーを引くと言った人に対してかける言葉が変わっても、自分が引くと言う人は少ないんだろうなとは思うんだよね。


「んー、俺もそうだろうな。」

「えっ、おなじ?」

「いや、同じでは無いと思う。俺は動こうと思えば動けると思うし、助けたいと思ったら、レバー引くのかもしれないと思う。でも、相手は何も知らない人なんだろ?だったら、下手に触る方が怖く感じる。動けたとしても、考えを先延ばしにして、結果が出るのを待っちゃうんだろうなって思うよ。」

 困ったように告げる、天馬。少し悲しげで、テンションが落ちてるようにも思う。

 うん。そうなんだよ、これ、真面目に考えると、こんな雰囲気になっちゃう話だよ、やっぱり。

 まぁしかし、2人が言ったなら、俺も言う必要がある。知ってたから、俺も月音と同じで、決まってるしな。


「俺は、あんまし良く考えずに、レバーを引くだろうなって思うよ。だって、1人か5人なら、やっぱり、犠牲は少ない方が良いんじゃないかと思うしさ。」


「えー、でも、一人だった人を殺しちゃうことになるし、その人の家族もいるんだよ?怖くて、止まっちゃわない?いろいろと考えるとさ。」


 困りと不思議に思う心を同居させた顔を、コテンと倒しつつ、月音が続きを促してくる。


「んー、そこは考え方の違いかな?俺からしたらさ。既にその場にいる時点で、俺はこの事故に関わってるって思うんだよね。レバーを引いてないから、関わってないって言うよりも、レバーを引ける位置にいて、現状を把握してるんだったら、当事者である事には変わらないと思うんだ。そしたらさ、今出来る最善を撃つべきだとは思わない?」

「さいぜん?」

「5人か1人なら、5人を助ける方が最善かなって、数が絶対とは思わないけど、今現在の立場なら、人数って言う指標が一番分かりやすいじゃん。

 〝4人多く助けられたはずなのに、助けなかった。〟

 この事実に向き合う方が、俺は怖いと思うよ。」


「はぁ、なるほどな。」

 天馬が凄く納得したように、声を上げた。

「たしかに、そんな風にも思うことはできるな。だけど、それでも俺は動けないかな。」


「うん。私も無理だよぉ。海外は知らないけど、日本だと、動けない人の方が多いっぽいしね。難しいよ。」


 2人は納得もしつつも、意見に変わりはないようだ。まぁ、それもそうだよな。


「でもさ、そうなると気になるのは、内容が変わった時じゃない?」


 そう聞くと、それはそれは楽しそうに、月音が微笑んだ。

 わぁ、その笑顔。見たことない人が見たら、一目惚れ出来そうやな。


「そうそう、此処からこの問題の醍醐味だよ。」


 いや、そんなことはないだろう。醍醐味ではないだろ!?いや、まて、女子どもはこの問題をどんな使い方してるんだ!?闇すぎて怖いんだが!??


「天馬はさ、5人の方に私らがいたとしたら、レバー引いてくれる?」

「2人がいたらか、そしたら引くだろうなとは思うよ。」

 月音が少し意地悪な笑みをする。

「ふーん、そっか。じゃあさ。ナギナが1人の方にいて、ナギナの方にトロッコが向かってたらどうするの?」


 天馬は分かりやすく、嫌そうに顔を歪めたが、それでもすぐ答えた。


「たぶん、レバーを引くぞ。」

「おお、男らしいね!」

 若干テンション高めに、月音が反応する。

「俺はさ、人の為に頑張るって言うのは嫌いじゃないんだ。だって、そしたらさ、周り巡って俺の友達とか、家族とかみんなに返ってきそうじゃん。だから、人の為に頑張るのは嫌いじゃない。てか、割と好き。でもそれは、自分や大事なみんなに返ってくるって思ってるから、頑張れるんであって、ただただ何も知らない人だけの為には、頑張れないんだと思うんだよね。だから、そういう場面に来ちゃったら、知ってる人を選んじゃうと思う。大事な人を守りたい。これってダメなのかな?」


 困ったように聞いてるが、少し意外ではある。天馬は正義感が強いと思ってたから、5人を助ける為にレバーを引けても、1人の為には引けないと思ってたから。どっちかっていうと、迷って引けないんじゃないかなと思ってしまうから。まぁ、考えるなら、そっちってことなのか。確かに心理見えてくるな。ちょっと面白い。

「いや、良いんじゃない?知らない誰かより、知ってる人を優先したくなるのは、人間らしいって思うよ。」


「うんうん、凄く良いと思う。間違ってないと思う。でも、私はそれでも手がすくみそうで、凄く怖い。助けたいって気持ちは強いし、助けようとはすると思うけど、5人って言うのが、凄く重たく感じると思う。勇気を持つのにどれくらいかかるかが、わからないのが怖いよ。」


 まぁ、そうだよな。それも、そうだ。思ったより、2人ともリアルなイメージで考えて答えてくれるから、それ以上に何も言えん!

 友達なんて助けて当たり前でしょ!!アハハー。ぐらいの感覚なら、めっちゃ楽なのに、何故こんなにも、リアル重視で答えるのか!?たぶん、天馬のなんだかんだ生真面目が、伝染してるんかな。

 忘れないで欲しい!これは、心理テストであることを。

「最近、5人くらい、ムカつく人がいたからさ。そいつら相手だったら簡単にレバー引けるのに。」

「今、ぼそっと、悪いこと言ったな!その流れで、ほんと大丈夫か!?そこも悩めよちゃんと。」

 月音の好感度は大丈夫だろうか。これが一話目なんだぞ。最初の女性キャラだぞ。


「最近、そのことで悩んでるもん。一石二鳥じゃない?悩みも消えて。」

「やめろ。その思考は、必ず後悔することになるぞ。」

 俺が念入りに諭すと、月音は気の緩んだ笑みを浮かべた。

「冗談に決まってるでしょ?ナギナ。てか、ナギナならどうするの??」


 俺の番が来てしまった。緩急はあったけど、俺もちゃんと答えるべきなんだよな。

「まぁ、俺もその場合だと、レバー引けるか、わかんないな。」


「え?私らが死にそうでも、助けてくれないの!??」

「おまえも引けるか、わかんないって言ったよな!?」

「まぁ、そうだけどー。」


 何故、責めれるのか理解できん。いや、まぁ、冗談だから、なんてこともないのが、実際だけど。


「別に助けないってわけではない。でも、なら先に聞いときたいことがある。」


「ん?なんだ??」

 天馬が返してくれたので話を続ける。

 この場合、助ける場合で俺が思うのは一つだ。

「5人の犠牲の元に、生きていく自信はあるか?」

「え。」

 2人が、言葉に詰まるので、俺はそのまま続けた。


「俺だったら、きついって思っちゃう気がしてさ。2人が同じ状況で、俺を選んで助けてくれたって思ったら、感謝もするし、嬉しいと思うけど、今此処で仮定して話しておけるなら、見捨ててくれて構わないとも思っちゃうんだよね。他の5人を差し置いてまで、生きるって、難しく感じちゃう。そう思ったら、それでも助けて欲しいって言葉を聞いておかないと、助けれない気がしてさ。」


「なるほどね。ナギナらしいかも。」

「たしかに、そうだな。」

 2人が納得してくれたようだ。

「でも、そういう事なら簡単だよ。私のことは助けてね!命はあってこそだもん。その上にいくつ重なっても、それだけ価値のある人として生きていってみせるわ。ナギナに責任のいかないように、意味があったって言わせてやるわよ。」


 自信満々に、でも茶目っけたっぷりに答える月音。まぁ、確かに。自分で言いはしたが、命が無いと始まらない。だからこそ、恨まれるかもしれないが、だからこそ、仕方なくも思うんだ。どれかを選ぶしか無いのなら、大事なもんを取るのは、否定出来ることではないだろう。


「俺も出来れば助けて欲しいかな。責任は俺が持つから、俺は自分のことだって大事にしたいから。」


 これを自分勝手という人は、よっぽど自分を棚に上げちゃう馬鹿か、理論でしか考えられない、頭の硬い人だろう。精一杯、頑張って生きている人ほど、生にしがみつくのは当たり前で、俺は素晴らしいことだと思う。


「わかった。なら、俺は2人にそんなことがあったなら、絶対助けることにするね。」

「うんうん。」

「2人に脅されてたから、仕方なく。って泣きながら。」


「えー、なんでだしー!?」

「そんな言い方だったか?おれら!?」

「冗談ですよ。冗談!」


 もー、と2人に文句を言われつつ良い感じに、笑って終われた感じがする。


「はあ、てか心理テストのくせに、長すぎるし。めっちゃ疲れた。」

「うん。2人が凄い真面目に答えるからね。私も驚きだよ!」

「え?ちゃんと答えるとこじゃないの?心理テストでしょ!?」


 まだ、心理テストだと思ってたんですか?天馬さん。そういうところは相変わらずですね。


「喉乾いたよね。なんか、飲み物取ってくるよ。」


 家に来た時は、学校に持ってきていた水筒やペットボトルあるから、平気と言っていたが、割と重たい話をしたせいで、みんな切らしているだろう。

「わーい、ありがとう。」

「ん、ありがとう。何か手伝うか?」

「んー、何飲みたい?その辺決めてから。」


 その時、ガチャッと音がした。姉が帰宅したんだろう。










 あれ?靴が二つ多い。男性のと女性のが一つずつ。凪斗が家に連れてきたことある友達を考えたら、男子しか思いつかないし、もしも、なにかの間違いで彼女としても、もう一人男子の靴があるのはおかしい。

 となると、考えられるのは一つか。


 直接、凪斗の部屋まで歩いていき、勢いよく扉を引いた。


「ナギトぉ!天馬とツキちゃん来てる!?」


 開いた先では、思った通りの顔ぶれが並んでいた。ただ、唯一違うのは、部屋の床全体が、白く発光していた点だった。


 私に気づいた、凪斗と目が合った時、凪斗は口を開いていた。


「ワカ



 私の名前を言い切るも前に、三人とその謎の光は姿を消した。


「え?ナギト?え?は?」


 突然すぎて、感情も追いつかなかった。

ここまで読んでいただきありがとうございます

2話から異世界になります

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