表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルティメット・グリッチ ~人類が数百年かかって攻略できなかったダンジョンを、裏技を使って2時間で制覇します~  作者: ARATA
第七章  世界を制する者

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/48

第44話

 「すまないなグスタフ、カール。こんな戦いに巻き込んで。お前達は無理をせず撤退しろ。命をかけてまで戦う理由はあるまい」


 「自分達が住む国が攻撃を受けてるんだ。戦うには充分な理由だろう」



 グスタフの言葉を聞いて、カールが笑いだす。



 「違えねえ! 帝国に好き放題されるのも気分が悪いしな」



 ‟黒剣”の他のメンバーも、笑みを浮かべて頷いていた。



 「お前達……」



 オルスは熱く込み上げるものを抑えるように、持っていた槍を高々とかかげる。



 「ならば最後の時まで共に戦おう。全軍、我に続け!!」



 高らかに響く号令を合図に、オルス率いる騎士団が突撃する。


 帝国軍の重装騎士団と、入り乱れるように衝突し、怒声と粉塵を巻き上げていく。その様子を離れた場所で見ていたガイウス。


 斧を下ろし、呟くように言う。



 「無駄なことを……」



 ガイウスの前には片膝を突き、剣を地面に刺して自分の体を支える青騎士の姿があった。



 「お前にも分かるだろう? もう勝負はついた。モルガレア軍が何をしようと、その事実は変わらん」



 青騎士は何も言わず、ただ肩を上下に揺らすだけだった。



 「さて、こちらも終わりにしようか……」



 ガイウスは斧を持ち上げ、ゆっくり青騎士に歩み寄る。斧を高くかかげ振り下ろそうとした時、何かが聞こえてきた。

 


 「……なんだ?」



 それは小さな地響きだった。音が聞こえてくるのは、右翼軍が陣取る更に向こう。小高い丘の方角からだ。


 ガイウスは構えていた斧を下ろし、丘に目を向ける。地響きはどんどん大きくなり、戦場で戦っている者達でさえ、異変に気づき動きを止めた。


 ――なんだ? なにか嫌な予感がする。


 ガイウスが見つめていた丘から、一騎の騎兵が現れる。その体は白銀の鎧を纏い、右手には煌びやかな剣を持っていた。


 距離があるため、ガイウスはハッキリと確認できなかったが、兜は被っておらず、顔は褐色の肌に見えた。



 「……オルド人か?」



 飛び出してきた騎兵の後ろから、溢れるように次々と出てくる騎兵団。数は数千にものぼり、アレサンドロ軍右翼に向かっていく。



 「くっ! 新手か!?」



 ここにきて数千の増援は戦況を左右する。今から指示は送れない。右翼の将ボアスに任せるしかないと、ガイウスは歯噛みした。



 「ボアス様! かなりの数の騎兵が向かってきます!!」


 「分かっておるわ!」



 三千はいるであろう騎兵部隊に青ざめるボアスだったが、正規のモルガレア軍ではないだろうと思った。


 それぞれバラバラの鎧を着こみ、持っている武器も統一性がない。しかも全員オルド人のようだ。



 「なるほど……劣等民族の寄せ集めか」



 兵士の少ないモルガレアが、国内にいるオルド人を無理矢理あつめたのだろう。ボアスはそう考えた。



 「恐れることはない! 私に続け!!」



 重装騎士団を従えて打って出る。例え数だけ揃えても、急造したオルド人の部隊など相手になるはずがない。


 ボアスは自信の笑みを浮かべ、オルド人部隊へと駆けていく。



 ◇◇◇



 「バゼル、一個師団が向かってくるぞ」


 「問題ない」



 バゼルは右手に携えた剣に視線を移す。――この剣も、着ている鎧もレイドが用意してくれたものだ。俺のことを信じて。


 バゼルは、レイドの期待に応えるためにも、全力で敵を倒すと決めていた。



 「突っ込むぞ!」


 「「「おおっ!!」」」



 重装騎士団と、オルド人部隊との距離は百メートルもない。集団の先頭にいるオルド人、白銀の鎧を着た男が将なのだろうと、ボアスは確信する。



 「あの先頭にいる男を叩くぞ! 続け!!」


 「「「ハハッ!!」」」



 四人の騎士がボアスの左右に並び、並走する。


 ――恐らく、まともに戦えるのは、あの男ぐらいだろう。奴さえ潰してしまえば、後は有象無象……どうとでもなる。


 ボアスは剣を天にかかげ、振り下ろした切っ先を相手に向ける。戦場において一対一の勝負を挑む時のしきたりだ。


 ――奴が勝負に応じ、騎馬の速度を緩めれば、その隙に左右にいる重装騎士に攻撃させればいい。



 「おい、どうするバゼル。一騎打ちをご所望だぜ」


 「向こうの将には悪いが、そんなことをしている時間はない」



 バゼルが持つ剣が輝きだし、燃え盛る炎となって剣身を覆う。その剣を上にかかげると、炎は激しく噴き上がり、天を貫く巨大な火柱となる。



 「なっ! なんだ、アレは!?」



 ボアスを始め、付き従った帝国兵も、目の前の異様な光景に唖然とした。


 バゼルは炎の柱となった剣を、ゆっくりと振り下ろしていく。次第に近づいてくる燃え盛る斬撃に、帝国兵はパニックに陥る。



 「ぜろ!」



 バゼルの言葉と共に、爆炎の剣は中将ボアスと、その後ろを走っていた重装騎士もろとも斬り裂き焼き尽くす。


 剣閃が地面についた瞬間―― 大地が赤く膨張し、辺り一帯が爆発するように吹き飛ぶ。剣が振り下ろされた直線上の敵は、一人残らず絶命する。


 帝国軍は将を失ったうえ、陣形を大きく崩された。


 立て直す間も与えず、バゼルは盾を構えて敵の中心部へ突っ込んでいく。白銀の盾は風を纏い、馬とバゼルを守る障壁へと変わる。


 風に触れた敵を弾き飛ばし、弾丸のように突き進む。帝国兵は態勢を立て直せないまま、オルド人部隊の総攻撃を受けた。



 「うおおおおおーーーーっ!!」


 

 雪崩れ込んで来たオルド人兵によって、重装騎士が次々と倒されていく。帝国兵にとって予想外だったのは、オルド人部隊が恐ろしく強かったことだ。


 彼らは各国の戦場を渡り歩き、常に最前線の危険な場所で生き残ってきた。まさに精鋭中の精鋭。


 騎馬を巧みに操り、重装騎士の槍や剣をかわしながら、的確に鎧の隙間をすいて攻撃していく。オルド人の兵士と侮っていた帝国兵は、逆にその力を見せつけられることになった。



 「食い止めろ! なんとしても!!」


 「ダメです! 止まりません!!」


 「ぎゃあああああーーーーー!!」



 帝国兵は、激流のように押し寄せるオルド人達に蹂躙されてゆく。なにより風を纏いながら疾走するバゼルを、誰も止めることが出来ない。


 風の障壁は飛んでくる矢も弾き、赤く発光する灼熱の刃は、重装騎士の鋼鉄の鎧をアメのように斬り裂いた。


 戦場を走り抜けるバゼルについて行く、数百の騎兵も百戦錬磨の手練れ達。


 帝国兵を翻弄し、打ち倒してゆく。結果、右翼での戦闘は帝国軍が総崩れとなり、ものの数十分で勝敗は決した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ