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アルティメット・グリッチ ~人類が数百年かかって攻略できなかったダンジョンを、裏技を使って2時間で制覇します~  作者: ARATA
第七章  世界を制する者

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第43話

 青騎士と将軍ガイウスが激突する戦場。


 お互い一歩も引かず、剣と斧が火花を散らして斬り結ぶ。


 ガイウスが馬上から振り払った斬撃で青騎士がよろめくが、返す剣の一閃で馬の首を斬り落とした。


 馬体が倒れる寸前、飛び下りたガイウスが体勢を立て直す。



 「くっ! おのれ……」



 一瞬で間を詰め、大きく振りかぶった長剣を振り下ろす青騎士。ガイウスも斧を振り上げ剣を防いだ。ギリギリと武器を合わせ、相手を睨みつける。


 力はほぼ互角。顔は見えないが、相当腕のある将だろうとガイアスは思った。


 斧で剣を弾き飛ばし、お互い距離を開け、再び睨み合う。


 ガイウスが踏み出そうとした時、こちらに駆けてくる騎馬に気づく。戦場で報告を担当する兵士だ。


 ガイウスは、青騎士との距離を取る。



 「ガイウス様! 急報です!!」


 「どうした? 何があった」



 武器を構え、青騎士を牽制しながら兵士の報告を聞くガイウス。恐らく海軍の作戦が成功したのだろうと当たりをつけていたが……。



 「海軍が壊滅! 生き残った艦隊も敗走しているとのことです」


 「なんだとっ!?」



 ガイウスは衝撃を受けた。負けるはずがない海軍が敗北したなどと、到底受け入れられない。


 ――間違いなく、ダンジョン攻略者の影響だ。


 奇しくも国防大臣クラークが言ったことが現実になっている。ガイウスは臍を噛み、辺りを見回す。


 数の上では圧倒的に有利。動き回る歩兵も、数人の重装騎士が囲んで串刺しにしている。だが、その何倍もの数の騎士が殺されていた。


 ――まずい……我々陸軍まで撤退すれば、アレサンドロが完全敗北したことになる。そんな歴史に残る汚点だけは避けねばならない!

 

 そうガイウスが考えていると、前方で雄叫びがあがる。


 目を移せば、待機していたモルガレア軍が一気呵成に進撃してきた。騎士や歩兵、総勢一万五千の兵が地鳴りを上げて突き進む。



 「くっ、ここにきて一万五千の兵か……」


 「ガイウス様、いかがされますか!?」



 補佐をする将校に問われるが、撤退の選択肢はない。己が持つ黒い大斧をかかげ、大声を張り上げて味方の鼓舞をうながす。



 「アレサンドロ兵よ!! 我らに敗北は無い! 目の前の有象無象を薙ぎ払い、必ず祖国に勝利を持ち帰ろうぞ!!」


 「「「おおおーーーーーっ!!」」」



 士気の上がったアレサンドロ軍が盛り返す。今だ数では相手を上回る重装騎士団は、モルガレア軍を迎え撃つ。



 「うおおおおおっ!!」



 ガイウスは頭上で斧を振り回し、その勢いのまま青騎士に斬撃を叩きつける。あまりの衝撃で、たたらを踏む青騎士。


 なんとか堪え、ガイウスと打ち合うが、明らかに押されていた。



 「青き鎧の戦士よ! お前との勝負は面白かったが、そろそろ終わりにさせてもらう。軍としての勝利が優先なのでな!!」



 横に薙ぎ払ったガイウスの一撃が、青騎士を弾き飛ばす。


 右足で踏ん張り、倒れることを拒否した青騎士は、構えた剣の切っ先をガイウスに向ける。


 膠着する二人の戦いとは異なり、戦場全体では変化が起きていた。


 ハルバードで相手を蹂躙していた半獣半人の騎士は、複数の重装騎士に囲まれ破壊されていく。一対一では負けることがない騎士でも、数の暴力の前では抗い続けることはできない。


 もともと少数精鋭だった騎士部隊と歩兵部隊は、数が減れば減るほど不利になり、アレサンドロ軍が優勢になっていく。



 「どけっ!!」


 

 オルスが馬上から放つ槍の一閃が、重装騎士の兜の隙間を貫き、瞬時に絶命させる。公国一の槍の使い手と言われるオルスの槍術は、帝国最強の騎士団相手にも後れを取ることはなかった。


 騎士を率い、重装騎士を押し込んでいくが、数が多すぎるため徐々に囲まれていく。



 「やはり数が違いすぎるか……」



 オルスが僅かに隙を見せた時、後方から斬りかかってくる兵士に気づく。


 ――くっ、間に合わん!


 斬撃を受けると思った瞬間、敵の兵士が宙を舞う。血を噴き出しながら落ちてきた兵士は、体を地面に打ちつけ動かなくなった。



 「腕が鈍ったんじゃないのか? オルス」


 「グスタフ!」



 黒い剣を肩に乗せ、グスタフは笑顔を見せる。彼の後ろには、モルガレアの最強冒険者パーティ‟黒剣”のメンバーが居並んでいた。



 「へへへ、あんまり無理すんなよ。あんたもグスタフも、いい歳なんだからな」



 カールが軽口を叩く。グスタフに「お前も変わらん歳だろう」と言われて、顔を綻ばせるカール。突撃してくる帝国兵に剣を向ける。



 「さあ、好きなだけ暴れるか!」



 カールの剛腕から放たれる剣は、重装騎士の剣を打ち払い、鎧の上から叩き斬った。力ではグスタフをも上回る‟黒剣”の重戦車は帝国兵を蹴散らしていく。


 技巧派のダイアの剣は、器用に相手の鎧をすり抜け、体を切り裂いていった。


 まだまだ戦闘経験が少ないマルコとダイトスだったが、それでも帝国兵に当たり負けすることはなく、充分な戦果を上げている。



 「おいおい、俺たちゃダンジョンの中でモンスターの相手をしてるんだ。それに比べたら、お前らは全然歯応えを感じないぞ!」


 「ちょ、調子に乗るな!!」



 激高した二人の歩兵が突進してくる。が、その前にグスタフが立ちはだかる。


 一閃。迷いなく振るわれた黒い大剣は、兵士の胴と首を永遠に分かつ。両断され、首を失った重装歩兵の体はグスタフの足元へと倒れてきた。



 「すまない、助かったぞ」



 オルスが馬上から、グスタフや黒剣のメンバーに声をかける。



 「俺達にかかっちゃ、こんなもんよ!」



 カールが朝飯前と言ってのけるが「とわいえ……」と急に真剣な顔になり、戦場を見渡す。


 後から後から駆け付けてくるアレサンドロ兵に、溜息を漏らす。



 「さすがに、この数を相手にすんのは骨だぜ。どうすんだ、オルスさんよ」



 カールの言葉を聞いて、オルスは表情を曇らせる。レイドが送り込んでくれた三百の兵士によって、二万近いアレサンドロ兵が戦闘不能になった。


 それ自体は凄まじい戦果だが、重装騎士団の決死の突撃によって弓兵部隊は、ほぼ壊滅。いかに優れた射手であっても、接近戦にもち込まれれば為す術がない。


 騎馬部隊も歩兵部隊も、アレサンドロ軍は犠牲を払いながら大軍勢で囲い込み、相打ちにもち込んでいる。


 気づけば三百いた兵士の、ほとんどが殺されていた。


 ――ダメだ……数の差はどうしようもないか……。


 残った青騎士も、アレサンドロの猛将ガイウスを前に苦戦している。本来なら撤退すべきだとオルスは思ったが、王都にはまともな戦力が残されていない。


 ここで止めなければ、モルガレアの敗北が確定してしまう。


 ――絶対に、引くわけにはいかない!


 将軍オルスの目に、決意の光が灯る。

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