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アルティメット・グリッチ ~人類が数百年かかって攻略できなかったダンジョンを、裏技を使って2時間で制覇します~  作者: ARATA
第七章  世界を制する者

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第41話

 「やりました! やりましたよ、オルス将軍!!」


 「……ああ」



 副官が喜びの声を上げ、後ろに控える騎士達も歓喜に湧く。本当にオルド人勢力の助力があったことに、オルスは胸を撫で下ろす。


 何より支援にきた飛空艇が、帝国の戦闘用飛空艇バトルシップを遥かに凌駕する性能を持っていたことが驚きだった。



 「将軍、見ましたか!? あの火力! あれなら敵の軍隊も焼き払えますよ」



 副官が興奮気味に言うが、オルスは冷静に現状を見ていた。



 「いや……あれは――」



 「ハッタリだ!!」



 ガイアスは空を睨め付け、吐き捨てるように言う。



 「あんな強力な魔道兵器を、連発できるわけがない!」



 銀色の飛空艇が、ダンジョンの‟秘宝”であることは、ガイアスも理解していた。だが、いくら未知の兵器であっても、あの大きさで膨大なエネルギーを内蔵しているとは思えない。


 事実、銀の飛空艇は戦闘用飛空艇バトルシップを追撃しようとせず、陸上兵団を攻撃してくる気配もなかった。


 恐らく相手を牽制するために、最大出力で一隻を沈めたのだろう。ガイアスはそう考えた。



 「ブラッドレーめ! 臆病風に吹かれよって!!」



 そうは言ったガイアスだが、戦闘用飛空艇バトルシップは高額な費用で建造されるうえ、一隻に約百名の兵士が搭乗している。


 相手が船を破壊する力を持っている以上、迂闊に戦えないのも理解できた。


 本来なら勝敗は一気に決するはずだったが、規格外の戦闘能力を示されただけで、航空師団は完全に動きを封じられる。


 

 「向こうには、頭の切れる参謀がいるようだ……」



 ガイアスは悠然と浮かぶ船を見上げながら、口角を上げる。



 「まあいい、あの船が我らを攻撃してくることはないだろう。今のうちに敵軍を制圧するぞ!」


 「はっ!」



 中将が合図を送ると、重装騎士団が行軍を始める。


 五万の大軍勢の進行に、大地が揺れた。その地響きは王都の中にまで聞こえ、不安に怯える国民たちは恐怖する。



 「ママ、怖いよ……」


 「大丈夫、大丈夫よ。軍人さんが戦ってくれてるから」



 多くの人々は教会や聖堂に集まり、身を寄せ合って避難していた。これから始まる戦争に勝ち目がないという噂は、一般の国民にも広がっている。


 それでも一縷(いちる)の望みにすがり、祈るしかなかった。



 「オルス様……この戦力差では」


 「分かっている。だが、ここを抜かれては国が亡んでしまう。我々がなんとしても止めねば!」



 雪崩を打ったように駆けてくるアレサンドロの騎馬隊。オルスは槍を持つ手に力を込める。


 よもや生きては帰れまい。覚悟を決めたオルスが打って出ようとした。


 その時――


 前方の大地に光り輝く円が現れる。「なんだ!?」


 驚くオルスをよそに、光は空高く伸び、巨大な柱のようにそびえ立つ。しかも柱は前方だけではなく、アレサンドロ軍の左右にも出現していた。


 眩い光が収束すると、中から現れたのは甲冑を着込んだ歩兵部隊。


 数こそ百人ほどしかいないが、剣を腰に帯びた兵士が突然出てきたことにオルスは絶句する。


 そして、それはアレサンドロ軍を率いるガイアスも同じだった。



 「なんだ!? あれは!」



 手綱を引いて馬の脚を止める。突如現れた異様な兵団に、さしものガイウスも戸惑いを隠せない。


 その兵士達の先頭に、鮮やかな青い鎧を纏った騎士が立っていた。



 「コイツらは一体……?」



 その時、ガイアスの脳裏に国防大臣クラークの言葉がよぎる。――まさか……。その時、軍の左に陣取っていた将校から、急報を知らせる馬が駆けてくる。



 「ガイアス様、左の小高い丘の上に弓兵とみられる部隊が現れました!」


 「弓兵だと!? 数は?」


 「百名ほどです!」



 ――百……左翼でもその程度か。


 突然のことに驚いたガイアスだったが、兵士の数が百や二百程ならどうと言うこともない。そう思っていると、右からも急報を知らせる兵士が来る。



 「右の平原に突然、騎馬部隊が現れました!」


 「騎馬隊!? 数は?」


 「百騎ほどです!」


 「全部でたった三百の兵……それで我々に対抗するつもりか?」



 ガイアスは憤る。特に弓兵など分厚い鎧で身をかためた重装騎士団に効く訳がない。矢を遠距離から放てば、山なりに上空から降ってくる。


 よほど運が悪くない限り、鎧が全ての矢を弾く。


 ガイアスは、そう考えていた。だが――


 

 丘の上に陣取った弓兵が、矢を弓に番え、弦を引き絞り狙いを定める。百名の射手が放った矢は、山なりではなく真っ直ぐに飛んで行った。


 アレサンドロ軍の左翼から、次々と悲鳴が上がる。その異様な様子は、すぐに全軍に伝わり、ガイアスも異変に気づく。



 「どうした!? なにが起こっている?」



 訝しがるガイアスの元へ、馬に乗った兵士が何かを叫びながらやってくる。


 

 「ガイアス様!」



 その兵士は首に矢が刺さり、息も絶え絶えになりながら状況を伝えるため駆けつけてきた。



 「なにがあったんだ!?」


 「矢に射られた騎士達が、次々と倒れています……」


 「馬鹿な!? 重装騎士団なんだぞ!」


 「よ、鎧の隙間を狙われています! 矢も直線的に飛んできて、防ぐことが出来ません……」



 ガイアスは唖然とする。――丘から左軍までは500メートル以上はあるはずだ。にもかかわらず、鎧の隙間を狙っているだと……ありえない。


 信じられないガイアスだったが、戦場からの悲鳴は大きさを増している。このままでは全軍に混乱が広がってしまうと危惧を抱く。



 「左の丘に騎馬隊三百を送れ! 数で圧倒して叩き潰せ!!」



 命令はすぐに伝えられ、三百騎が弓兵に向かって突撃した。丘に陣取る兵士達は慌てる様子もなく、淡々と弓に矢をつがえる。


 重装騎士団は、馬にも鎧を着せていた。通常の矢なら弾き返すが、丘から放たれた矢は鎧に覆われてない馬の足を貫いてゆく。


 バランスを崩し落馬する騎士達、後方の騎馬も巻き込まれ次々に倒れていった。なんとか立ち上がろうとする騎士の目に矢が突き刺さる。



 「ぎゃああああああ!」



 阿鼻叫喚の光景が広がっていた。


 

 「ガイアス様!」


 「今度はなんだ!?」


 「右翼の騎馬部隊が突撃してきます!!」


 「なに!? たった百騎でか!」



 ガイアスは困惑していた。この兵士達は明らかにおかしいと。


 騎馬隊が突撃するならある程度の数が必要だが、迷いなく攻め込んで来る敵に狂気すら感じていた。それでもガイアスは将として冷静に分析する。


 

 「恐らく突撃と離脱を繰り返して、こちらの混乱を誘うつもりだ! 広く囲い込んで削っていけ!!」


 「はっ!」



 命令を伝えるため騎馬が走る。それと入れ替わるように右翼から伝令が来る。



 「た、大変です!!」


 「なんだ? 今、命令を伝えたばかりだぞ!」


 「突撃して来た騎馬部隊が、我が右翼軍を突き破り、中央軍に迫っています!!」



 耳を疑うガイアス。



 「たった百騎で、ここに迫るだと!?」



 右翼に目を向けると、土煙が立ち上る一角があった。騎士が馬ごと上空に跳ね上げられ、怒声や叫び声も聞こえてくる。



 「なにが起きている……?」



 その騎馬部隊は異様だった。全身に銀の鎧を纏い、斧と槍の性能を持つハルバードを武器として向かって来る。


 大きな騎馬に跨っていると思われたが、近くで見たアレサンドロ兵は、それが馬でないことに気づく。


 脚と体は馬だが、首は無い。代わりに人間の上半身が鎧を着ていた。


 人馬一体の姿に、アレサンドロ兵は恐怖する。ハルバードを振るえば、重装甲の歩兵を薙ぎ払い、倒れた者を蹄のついた脚で踏み潰す。


 押し寄せる波のような圧倒的な暴力に、為す術なく蹂躙されていく歩兵達。


 右翼の軍を任されている中将のボアスは、重装騎士団に進撃を止めるよう命令を下す。他国にも名を轟かせるアレサンドロ軍の重装騎士団。


 屈強な肉体を鋼鉄の装甲で覆った騎士団は、突破力、破壊力、防御力、全てにおいて戦場で群を抜き恐れられていた。


 その最強の騎士団が力で押し切られ、馬もろとも空中に斬り飛ばされている。


 悪夢のような光景を目の当たりにして、ボアスは言葉を失った。

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