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アルティメット・グリッチ ~人類が数百年かかって攻略できなかったダンジョンを、裏技を使って2時間で制覇します~  作者: ARATA
第五章  流浪の民族

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第29話

 アヴァロンから離れること数キロ。新大陸を進む集団があった。数十人は騎馬に乗り、残りは歩いて付き従う。



 「しっかし、なにもねーな。見渡す限り岩場と平地だけだぞ」



 "黒剣”のカールが額の汗を拭いながら愚痴る。



 「仕方がないだろう。つい数日前まで海に沈んでいた大地なんだ」



 グスタフは顔色一つ変えずカールに答えた。その横を歩くダイアが立ち止まり、足元の土を手に取る。


 再び歩き出し、手に持った土の匂いを嗅いで少量を口に含む。



 「おいおい、何やってんだダイヤ! 暑さでおかしくなっちまったのか!?」



 ダイアの奇異な行動に、カールは訝しがる。



 「おかしいな……」

 

 「どうしたダイア、何か気になるのか?」



 グスタフが聞くと、ダイアは持っていた土を地面に捨て、パンッパンッと手を払う。



 「ずっと深海に沈んでいた土地なら、塩分を含んでいるはずだ。そんな土地は塩害で作物は育たない……。だが、ここの土は塩分をまったく感じない。それどころか、かなり良質な土壌のようだ」


 「あ~そう言えば、お前の実家は農家だったな。まあ、どっちにしろ俺等には関係ないが……」



 呆れた顔でカールが呟く。そんなことを言っている間に、目的の建物が見えてきた。



 「おお……あれが……」


 「とてつもなく大きいな。モルガレアの王城を遥かに凌ぐ」



 新大陸を進む集団の視界に入ってきたのは、広大な平地の中にポツンとそびえ立つ立派な城だった。


 長く巨大な城壁に囲まれ、装飾を施された壮大で荘厳な王城だ。



 「ホントにあったぜ。こんな所に城があるなんて眉唾だったが、俄然やる気が出てきた! お宝が眠ってるかもな!」



 喜び勇むカールを見て、やれやれと息を吐くグスタフ。だがグスタフもまた、見たことも無い城に期待と不安を募らせていた。


 

 「鬼が出るか蛇が出るか……行ってみなければ分からんな」



 ◇◇◇



 「アラン殿下、偵察隊の報告通り城がありましたね」


 「ああ、ずっと海底にあったとは思えない美しさだな。ここはモルガレアの領土だ。あの城は接収して我々が使うことになるだろう」



 集団の先頭を行くアランと近衛騎士団隊長のブレストは、馬上から遠くに見える城を眺めていた。歩兵に合わせて馬を歩かせていたが、アランはすぐにでも城に辿り着きたいと思っていた。


 二時間ほどでようやく城壁の前まで辿り着く。


 壁沿いを歩いて行くと、大きな城門が見えてきた。



 「しかし、どうやって入ればいいんだ?」



 集団は城門の前で立ち止まり、それぞれが感嘆の声を上げる。アランは巨大な門を見上げ、どうしたものかと思い悩んでいたが……。



 『遠い道のりをお越しいただき、感謝いたします』



 突然、門全体から頭に響くような声が聞こえてくる。



 「だれだ!? どこにいる?」



 急に聞こえてきた声に慌てるアラン。周りにいた近衛兵や冒険者達も、急な出来事に困惑する。 



 「おいおい、どうなってんだグスタフ?」


 「分からん。だが、気を抜くな! 敵かもしれん」


 

 全員が警戒態勢を取った時、再び門から"声”が聞こえてきた。



 『せっかく来て頂きましたが、今は皆様のお迎えする用意が出来ておりません。日を改めてもらえると助かります』


 「お前が、この城の主か!?」



 アランが語気を強めて、門に問いかける。



 『いいえ、主は只今不在です。ご用件は私が伺います』


 「その主というのがダンジョンを攻略した者だな! 秘宝を簒奪した罪人としてひっ捕らえる。門を開けよ!!」


 『…………』



 アランの言葉に冒険者達は騒然となる。攻略者が居るなどと聞いていなかったからだ。


 カールとグスタフは、そびえ立つ城門を見上げる。


 

 「この中にいるのかよ!? "攻略者”が?」


 「そのようだ。歴史上、誰も成しえなかった"ダンジョン攻略”。それを行った奴が、ここにいるんだ」

 

 「でも何で、こんな所にいるんだ。グスタフ? ここは突然出てきた大陸だぞ」


 「理由は一つしかない……。この城や、新大陸自体が"ダンジョンの秘宝”なんだ。だからこそ攻略者が城にいる!」



 カールとグスタフは門を見つめながら額に汗を滲ませる。彼らは気づいた。これは貴族が新大陸で行う、ただの調査ではない。


 恐らくこの隊を率いているのは国政の人間だ。


 自分達は図らずも、モルガレアと攻略者の争いに巻き込まれたのだと臍を噛む。グスタフは、それがどれほど危険なことなのか充分理解していた。



 「今すぐ門を開けよ! 我らは王国の使者であるぞ!!」



 アランの言葉に反応は無かった。舌打ちをしたアランは近衛兵に対して、手を上げて合図する。隊長のブレストは頷き、近衛隊全員に号令をかけた。



 「門を破壊しろ! 魔導士隊、前へ!!」



 ブレストに促され、宝玉のついた杖を構える魔導士達。杖の先端が光輝き、炎の魔法が撃ち出される。


 門に当たると苛烈な光を放ち、次々と爆発した。


 冒険者達が唖然としている中、城門は煙に覆われる。一陣の風が吹き、門にかかっていた煙が払われる。


 そこには傷一つ無い、変わらぬ姿の城門が目に飛び込んできた。



 「ぬ、ぐぐ……」



 歯ぎしりするアランを尻目に、門から聞こえてくる声は至極冷静だった。



 『仕方がありません。あまり事を荒立てたくありませんが……』



 声がそう言うと、巨大な城門は地響きのような音を立てながら、ゆっくりと開いてゆく。その光景を息を飲んで見つめる近衛兵や冒険者達。



 「は……はは、ようやく投降する気になったか。誰かは知らぬが、国と対立することなど出来ようはずがない」



 アランが意気揚々と城門の中へ入ろうとした時、向こうから誰かが歩いてくることに気づく。


 それは青い甲冑を纏った、一人の騎士だった。


 アラン達に緊張が走る。



 『どうしても、我が主と対立すると言うのであれば、この【青騎士】がお相手することになります。争いを避けたければ、このままお帰り下さい』


 「ふざけるな! たった一人で何が出来る。行け! ブレスト、我々の力を思い知らせろ!!」


 「ハッ!」



 ブレストが隊を率いて青騎士に向かってゆく。騎馬三体が、ほぼ同時に斬りかかる。逃れることは不可能な状況であったが――


 三体の騎馬は動きを止め、彼らが持っていた三本の剣が空から落ちてくる。


 近衛兵は馬ごとガクンッと態勢を崩し、そのまま倒れた。青騎士に三名が斬り伏せられたことを、ブレストは一瞬分からなかった。


 だが、鞘から振り抜かれた剣を見た時、ブレストの背筋に悪寒が走る。己の経験が、この者と戦うなと警鐘を鳴らしている。



 「何をしているブレスト! 早くそいつを倒せ!!」


 「ハ、ハイッ!」

 


 残った隊に指示を出し、ブレストも青騎士に向かって馬を走らせた。

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