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アルティメット・グリッチ ~人類が数百年かかって攻略できなかったダンジョンを、裏技を使って2時間で制覇します~  作者: ARATA
第二章  天空に浮かぶ迷宮

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第14話

 同刻、アレサンドロ帝国の城下街を見下ろす平地に魔法陣が現れ、溢れ出した光の中からレイドとカトレアが転移してくる。


 レイドは上空に浮かぶ“絢爛(けんらん)な城”に目を奪われた。



 「やっぱり……昨日、俺達がいたのはあの中だったんだ」



 前日、自分達がいた建物が揺れ、収まりそうになかったためレイドは【魔導書】を使って自分の家に避難していた。


 あの後どうなったのか確認するため来てみると、空に浮かぶ城を見つける。



 「あの城自体が古代の“秘宝”ってことか……カトレアは見たことあるのかな? あの空に浮かぶ城を」


 『はい、あります』


 「あるんだ! 実際に何をするものなんだ? 本当にお城なの?」


 『【アヴァロン】と呼ばれた浮遊城です。しかし私には詳しい情報がありません。【アヴァロン】の機能を統制していたのは【バルタザール】のみです』 


 「バルタザール? それは何?」


 『その質問にはお答えしかねます。私には権限がありません』



 カトレアの答えにレイドは怪訝(けげん)な顔をする。だが、これ以上聞いても答えは出ないだろうと思いレイドは【魔導書】を出した。 


 一度行った場所は魔導書の地図として表記されるため何度でも行くことが出来る。レイドは光の地図に触れ【アヴァロン】へ転移した。    



 「ふう……」



 昨日いた大広間に入ったレイド。丸い台座に近寄ると、台座の中心部から漏れ出る光が強くなる。


 瞬間―― レイドとカトレアの周りに無数の映像が展開した。



 「うわっ! ビックリした」



 パパパッと四角形の映像が空中に並び、その中に何か映っている。



 「これは……城の外の映像か……色々な場所が映し出されている」



 レイドは台座を触ってみるが、何も起こらない。


 操作の仕方も分からなければ、そもそもこの巨大な城自体が動くのかも分からなかった。



 「動くんなら、ここから離れて海の上にでも行きたいんだけど」


 

 レイドからすれば、この場所は敵国のど真ん中。自分に与えられた“秘宝”が空飛ぶ城なら、少しでも違う場所に移動させたい。


 だが、何をやっても動かないため、レイドは諦めて他の部屋などを調べはじめた。色々な部屋があったが明かり一つ付かない部屋もあれば、入る事さえ出来ない部屋もある。



 「これは動かないな……カトレアは何か分からないか?」


 『申し訳ありません。私には分かりかねます』


 「まあ、そうだよね」



 レイドは浮遊城を残したまま、家に帰ることにした。「凄い物なんだけど……」とせっかく与えられた“秘宝”だったが手に余るのは明らかだ。


 レイドは【魔導書】を取り出し、自宅へと転移する。



 ◇◇◇



 ロイスの執務室には、報告書がうず高く積まれていた。


 そのどれもが空に浮かぶ島“オルブレス”の落下について書かれたものだ。特に機能を停止しているダンジョンに関することが大半を占める。



 「フォレス」


 「はい!」


 

 ロイスに呼ばれた文官のフォレスは、心臓が跳ね上がるのを感じながら返事をする。島の落下を確認した朝から、ロイスはピリピリとした緊張感を纏っていた。


 フォレスもロイスを刺激しないよう細心の注意を払っていたが、朝から一言も発さず報告書を読んでいたため、突然呼ばれたことに驚いてしまう。



 「調査隊がダンジョンの最下層に到達して中を確認したとありますが、直接話を聞きたいですね。すぐに呼んで下さい」


 「はい! 分かりました」



 ロイスに呼び出され、急ぎ駆けつけた兵士長。普段、宰相の前に来ることなどないため、キョロキョロしながら体を強張らせていた。



 「報告書は確認しました。私が聞きたいのは、ここに記載されている“扉”のことです。中は本当に長い回廊だったのでしょうか?」


 「はい! 最下層の部屋から伸びる通路がありました!」


 「途中で行き止まりとありますが?」


 「はい! 島が落下した衝撃で壁が崩れ、通路は塞がれていました」


 「他に、何か痕跡のようなものはありましたか?」


 「い、いえ! 最下層の床や壁なども衝撃で破損しており、それ以上調べることが出来ませんでした」


 「そうですか……それは残念です。それでその通路がどの方角にあったか確認したいのですが、報告書には書かれていなかったもので」


 「ほ、方角ですか……」



 兵士長の顔が青白く変わり、脂汗が額に浮かぶ。報告書の正確性にこだわるロイスから見れば、欠点が多い内容だったのだろうと文官のフォレスは思った。



 「極めて重要なことです」


 「は、はい、あ、いえ……その……」



 問い詰められた兵士長はシドロモドロになる。



 「今すぐに確認してきてもらっていいですか?」


 「は、はい! 分かりました!!」



 兵士長は飛び出すように部屋から出て行った。



 「ロイス様、今から調べに行けば報告は明日になるやもしれません」


 「方角は恐らく“南”でしょう」


 「え? なぜ分かるのですか?」


 「南ならば島が割れた所に向かうことになります。つまり、あの“城”に向かうための通路。その確認がしたかったのですよ」


 「で、では……」


 「あの“城”こそがダンジョン最下層にあると言われていた“秘宝”でしょう。攻略に成功した人間は、まだ城の中にいると考えられます」



 フォレスは驚き、言葉に詰まる。ダンジョンの攻略に成功することも前代未聞だが、その者がまだ城の中にいると言う。



 「では、なぜ浮かぶ城は移動しないのでしょうか? ずっと同じ場所にいますが……」


 「動かないのではなく、()()()()のでしょう」


 「動けない?」


 「フォレス。君は突然あんな物をもらってすぐに使いこなせますか?」


 「い、いえ、それは……」


 「細かい理由は分かりませんが、あの中にいる者は移動させたくても、それが出来ないと考えるのが合理的でしょう。動かせるのなら、とっくに動かしているでしょうから。少なくとも私ならそうします」



 フォレスはロイスの推察に感心する。確かにその通りだと……。



 「フォレス、ダンジョンから最後に出てきた冒険者を呼んで下さい。それに島の施設に残っていた職員もね」


 「冒険者と職員ですか?」


 「そう。攻略した人間を目撃した者がいるかもしれない」


 「なるほど……すぐに手配します」



 フォレスが慌ただしく部屋を出て行った後、ロイスは椅子に深く腰掛け息を吐く。国王からは詳細を説明するよう達しが来ているが、今はまだ情報が足りない。


 ロイスの感心は、ダンジョンを攻略した者へと移っていた。


 前人未到の快挙を成し遂げた強者……帝国内の人間であればどんな栄誉を与えてもいいだろうとロイスは考えていた。


 だが、同時に国内の者ではないとも考えている。なぜならダンジョンが閉鎖された夜に、人目を避けるように攻略されているからだ。


 国としては由々しき事態だが、ロイスの口元からは笑みがこぼれる。



 「おもしろい……実におもしろいですね」

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― 新着の感想 ―
[良い点] ロイス、お前も面白いぞ
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