ボクは彼の気持ちを
「とっても美味しかったですね、エリー先輩!」
「そ、そうだね。料理は美味しかったよ、うん」
凪家のシェフさんの腕は、やっぱりプロなんだなと思わせる美味しさだった。
デザートなんかはとても可愛くて、楽しい食事だったんだ。……兎川さんにからかわれていなければだけど。
「ほんとにうまかったな。霞さんの料理にも劣らない美味しさだ」
「充? 相手はプロなんだよ? お母さんの料理は美味しいけれど、同じな訳……まあボクはお母さんの料理の方が好きだけど」
やっぱり、慣れてる分お母さんの方が美味しく感じるよね。なんか高価な料理ってたまによくわからない味するし。
「面白い話ですね。霞さん、というのは愛理先輩のお母様です? 是非お会いしてみたいです」
「また今度うちに来ればいいじゃないか。多分、お母さんも歓迎してくれると思うよ」
「それは楽しみです。是非お願いします」
なんか普通に誘ってしまったけれど、もしかしてボクはとんでもないお誘いをしてしまったんじゃないかな? 修平くんがボクのお家に……。
「う、うん。お母さんにも今度話してみる」
自分で言い出したことなのに、思わず俯いてしまう。こんなお家見せられた後で、ボクの貧相なお家なんてつまらないじゃないか……。
「あのお料理にも負けないお料理ですかぁ。ハルカも一度は頂いてみたいものですね」
兎川さんまで? ……そっか、修平くん一人だから恥ずかしいんだ。みんなお誘いすればいいじゃないか!
「それなら、今度はボクのお家に集まるというのもいいんじゃないかい? 充も、久しぶりにおいでよ。お母さんも会いたがっているよ」
「……まあ、考えておく」
また、カナメも誘ってみようか。まあ彼女の場合はよくきているんだけどね。
「既に先の予定を考えるとは、エリー先輩もやりますね」
「な、なんのことだい?」
ボクはまたからかわれているのだろうか。素直な気持ちで話したつもりだったんだけどな。
「いいじゃないですか。先の予定が早く決まるのは良いことですよ。今日一日でお互いを知れれば、さらに楽しみになると思いますし」
「そうですね! 今も未来も楽しめば良いんです! ──ということで、この後はどうしますか?」
良くも悪くも、彼女の性格は周りに影響を与えている。集団の中に一人いるだけで、雰囲気を変えるタイプの人間だね。いわゆるムードメーカーというやつだ。
「そうですね。みなさん、どうやらこの家を気に入ってくれたみたいなので、家の中を少し見て回りますか?」
「それ! 凪さん、それいいよ! そうしよ!」
確かに。このお家はどう考えても普通じゃないし、見て回るのは楽しそうだ。
「うん。ボクもいいと思う」
「俺はどっちでも……まあ、少し気にはなるな」
素直じゃないな、充。こんな大きなお家、気にならない方がおかしいじゃないか!
「それじゃ決まりですね。凪さん、ご案内の方よろしくお願いしまーす」
「了解しました」
修平くんのお家探索。
こんな大きなお家だし、さぞ面白いものがあるんじゃないだろうか。
「それでは、皆さま──先輩方もとうぞ、自分についてきてください」
彼の案内でリビングを後にする。
リビングに来る時も思ったけれど、部屋と部屋を繋ぐ廊下にしてもとても広い。ボク達四人が横並びになっていてもまだ余裕があるほどだ。
そして、庭に面する廊下に関しては、庭の全貌を眺められるようになのか、巨大な窓がかけられている。
「大きな庭ですよね、エリー先輩。──あ、そうだ。凪さん、庭の方も見ていけますか?」
「ああ、そうですね。母の自慢の庭ですから、是非見てやってください」
またお母さんか。……ほとんどお母さんの趣味なんだね、彼の家庭は。
庭への入り口に案内されながら、窓越しに見える庭を再度確認する。
自然豊かな、草花の映えている景色に、中心に飾られた池のような水場。
庭でも過ごせるようにするためなのか、椅子や机まで設備されているのは流石の一言だよね。
廊下を抜け、唯一開くようになっている大窓。修平くんに案内され、庭に出てすぐに感じたのは、そこかしこに彩られている花達の独特の匂い。
薔薇のように、優しくも不思議な匂いがボクの鼻まで届いていたんだ。
「とてもいい匂いだね」
「自分もこの匂いは好きなんです。母の趣味はいつも自分の理解の外ですが、この花の趣味だけは、納得できるんですよね」
ああ、君も母君の趣味に賛同しているわけでは無いんだね。ちょっと安心したよ。
「充先輩! あの花綺麗ですよー! 一緒に観ましょー!」
「夢、はしゃぐんじゃ無い。一応人様の家なんだからな」
二人もどうやら、この庭を気に入ったみたいだね。楽しそうじゃないか。
「ボクも見学させてもらおうかな」
「愛理さん」
修平くん? 今の呼び方……
「どうしたんだい?」
「ちょっと二人きりでお話、よろしいでしょうか?」
改まってどうしたんだろう?




