◇life6 「本気出す」
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「……ということです」
管理棟、理事会室では理事交渉のため生徒会代表として祐介が駆り出されている。
「…ふむ。今回"裏生徒会"の連中が度を越しすぎたことに関しては、こちらも把握している」
威厳を持った口調で悠々と話すのはこの中央学園副理事長兼教頭の司波先生。肩書きのわりにはかなり若く、40になるかならないか、ほどの渋いオジサンだ。
「承知した。こちらからも規制をかけておこう」
一つ目の問題はほぼ解決した。
「あと、聞きたいことがもう一つ…」
司波はジッとこちらを見つめる。
「高等部1年に"いるはず"の藍沢宙のことなんですが」
「そのことは……、綾瀬か。ふむ、構わん。現段階で話せることなら話してやろう」
予想外の反応だった。もう少し渋るかと思っていたが。
そして司波は話し出した。
◇
ヴーンと携帯電話のバイブ音が聴こえた。ゴソゴソしだす渚先輩、どうやら鳴っているのは彼女の携帯のようだ。ディスプレイに表示される発信者を確認する。
『何か用?』
『いや、そっちの様子が気になったんでな。どうだ教育係の気分は?』
『悠、アナタ、私が楽しいと言うと思ってるの…?で用件は?』
『悪い悪い、藍沢宙の件で収穫があった。一度二人で生徒会室に来てくれ』
『え?』
『詳しいことはこっちで話す。とりあえず来い、大至急だ』
プツッ、ツーツーツー…
なんだか渚先輩の機嫌がとても悪そうだ。ってどうして俺を睨みつける…。
いつ頃だったか。渚先輩はツンデレなんではなかろうか、と思っていたが…恐らくただのツンツン女だ。少なくとも俺に対しては。
「行くわよ…」
はい?どこに?
あまりに急すぎて話についていけない。
「あー、とにかく来なさい」
全身から負のオーラを放ちながら、彼女は俺の腕を掴んで無理やり部屋を出た。
なにやらうつむいている先輩の顔が赤い気がする…――
―――幻か。
◇
週末の生徒会室はいつもに比べれば静かな雰囲気に包まれていた。
「来たわよ」
部屋には会長、と会計組の先輩がいた。
「まあ座れ、二人とも」
悠会長が手で座ることを促す。俺たちは言われるがままそれに従う。
「晃、単刀直入に言おう。藍沢宙のことについて知りたければ、中間試験で10番以内に入るんだ」
いきなり何を言い出すかと思えば、そんなこと言われたら、俺、本気でるわ。
「わかった、入ってやろう」
「いいの?!そんな軽ノリで」
「もちろん。今日は寝かせねぇぞ」
(………そんな大胆な……)
何かボソッとつぶやく渚先輩。心なしか先ほどから顔が赤い、熱でも出てるんだろうか?
◇
「原形質流動!」
「ってホントに全部あってるじゃない…、一体アナタの脳はどうなってるのかしら?」
そんなことは俺でもわからん。だが、一番の理由ができた今、俺のモチベーションは最高潮に達している。
部屋に戻ってから出題された問題128問、ただいま全問正解中。
◇
今さらではあるがこの学園、かなり広い。全国でも最大級の敷地と小中高大一貫性のハンパない生徒数…。敷地外でもショッピングモール、テーマパーク、と学園向けの施設が密集している。もちろんこれらの施設は一般人も利用可能だが、寮生活もあって利用者の半数近くがこの学園の生徒である。
「間違いないわ、渚先輩は晃に気があるわね」
学園敷地外のス◯バ。晃以外の3人はのんびりとだべっていた。「テスト勉強なんてテスト前にすることじゃない」いつかの翔はそう言っていた。
「だな。あいつだけ周りと扱われ方が違いすぎる。あの人なりの愛情表現の裏返しかもしれないしな」
「ついにアイツにも"春"が来たかぁ、私も頑張らないと」
翔と香奈が拍子抜けするような表情でこちらを見ている。
「伊織…、お前晃のことが好きなんじゃなかったのか?」
ブッ!!!!飲んでいたコーヒーを思い切り吹き出した。
「私もてっきり…」
いやいやいや、私はブンブンと首を横に振る。
「そそそそそそんなことあるワケないじゃない??!大体、なななんでアイツなんかと…」
「わかりやすすぎるッー」二人の思考は同じところへたどり着いた。
「まったく…、ああいうやつは意外とモテんだよなー」
そういう翔は学園のアイドル。他学年からの人気もかなり高い。
「だ、だから!!違うっての!!」
「ふふ、素直じゃないんだから」
「読んだのね!?読んだのね?!香奈」
残念だが心を読まなくてもまるわかりなのだが、今の彼女にはそんなことわからない。
◇
「"私はちょっとくらい貧乳のほうが好きだ"ってなんだよこの英文!!?」
「あら、ずいぶん難しいのも訳せるのね」
「そこじゃねえ!内容の話だ!」
「…次、ナポレオンが流刑に処された2番目の島の名前は?」
「無視かちくしょう?!」
いまだに俺の勢いは衰えていない。
「エルバ島」
先輩がピクッと反応した。とても妖しげな笑みを浮かべている。
「…残念ねー。答えはセントヘレナ島。エルバ島は最初に流された島よ。フフ、しばらく正解し続けるモンだから退屈だったのよね〜」
およそ4時間ぶりに先輩の右手が俺の肩に触れる。なぜかすごく嬉しそうな先輩、隠れSなのか…。だとしたらなおさらやっかいだ。
そういえば昼メシも食ってねぇ…――