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検非違使に問われたる芝刈りの物語

 はい、あの姫は竹取りの翁が、竹林で輝く竹から見いだしたと言う娘でございます。が、貴方様のおっしゃる通り、この世のものではございますまい。


 かように奇妙な娘はおりませなんだ。以前、あの翁が竹林で見付けたばかりだと言う娘を見せて貰いましたが、その姿はまさに三寸程度の小さな赤子で……うちの子もアレから出てきた時には、普通の赤子の身の丈だったのに……いえ、何でもありません。


 翁でございますか? あれは若い頃から竹林で竹を取っては、竹細工を作り売る事を生業としていた男でして、この村の中でも特に貧しい暮らしをしておりました。そんな身の上ですので嫁の来ても無く、やむ無く竹林の奥の集落から……はい。おっしゃる通り、あの不吉な言い伝えのある、古い集落の事です。

 あの小さく陰気な集落には、よそ者は勿論、村の者も立ち寄る事はありませんが、翁は竹を求めてあの竹林に頻繁に出入りしてましたから、集落の連中とも何らかの付き合いがあったのでしょうなあ。で、まあ、そうした縁からか集落から嫁をもらったそうで。それが翁と一緒に死んでいたあの媼と言う訳です。


 ですが、あの夫婦とも一緒になった頃には既に歳も行ってましたからな。あれでは結婚しても子宝には恵まれまい。と噂をしてましたが、それを聞いた翁は「いずれ、竹林から子宝の贈り物を授かる事になるじゃろう」などと言ってましたが、まさか本当に竹林で子供を授かるとは……。そんな奇妙な子供の贈り物は、川で婆さんが拾ったアレだけだと思っておったのに……いえ、何でもありません。


 あとは、ご存知でしょう。その三寸の赤子がわずか三月で年頃の姫になって……。その間にも竹林から黄金が見つかったと言っては、翁の暮らしぶりは良くなっていって、あんなお屋敷まで……良い気になりやがって(くそ)が! (たまさ)かの幸運に恵まれた身に過ぎない癖に! それを言うに事欠いて、輝く(かぐや)姫だと? “狂う龍(くるぅりゅー)”の真の名に架けて呪われやがれ屎翁(くそじじい)が! ウチだって、太郎が島から宝を持ち帰って来れば、そのくらい……


 え? は? ……何でしたっけ? ええ、ああ……そう。かぐや姫の話ね。


 でも、その後の事はご存知でしょう。求婚者に夜這い者の続出。五人の貴人の求婚に対しての姫からの無理難題に、帝の御召(おぼしめ)し。騒ぎはどんどん大きくなる。そうして、ついに姫は、昨夜に月に帰って行ったんでしょう? ええ、ええ。解りますとも。……大方、事が大きくなりすぎたんで、姫の“実家”が姫を連れ戻しに来たんでしょうよ。


 ……これで、私が知ってる事は全部です。もう帰っても宜しいですか? ……え? なんで? ……別件? 


 畜生! やっぱりそうか! 放せ! 畜生、放しやがれ! 太郎が(削除済)島から財宝を持って帰れば、支配と被支配は逆転する! 故に(削除済)の治世は終わり、永遠に(削除済)が続くのだぞ! そうなったら、お前達、この無礼をどう償うつもりだ!?


 (おそ)れよ! おそれよ! (おそ)れよ! 諸人(もろびと)よ! (判読不能)より流れ着いた御子の威力の前に平伏すが良い! 集合せる(削除済)の力と三位一体の従者に栄えあれ! (判読不能)……かくて縷々家(るるいえ)の財宝と、(判読不能)による永遠の治世(以下、削除済)……なぐる・ふたぐん! いあ! いあ!


(跡は錯乱に入りて言葉無し)

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