表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

『旅枕』

作者: タコアシ

『枕は夢の世界のパスポート』


睡眠は生きていく上で

必要不可欠な生物学的運動であり、

人生の3分の1に及ぶ

膨大な時間を費やす訳で、

さまざまな夢に出会う機会があるものの

多くの場合は、夢は目覚めと共に

急速にその内容が記憶から

消されていく不思議さがあります。


それでいて、通常では

起こりえない出来事や謎の人物が

現れることも多々あって、

昔の人はこうした夢の世界を

あの世としていたのか、

はたまた異界があると信じ、

予言や占いなどの信仰の対象にも

なっていたのだろうと想像すると

とても興味深いものです。

数年前に私は


旅先の骨董市で


とても美しい枕に出会いました



店の主人が言うには


かつて世界中を旅した男が遺した


世にも珍しい旅枕なのだそうで



『男はとうにこの世を去ったが


男と一緒に世界を回った枕だけが遺った


その後は何度も


新しい持ち主の元へと売られていったが


しばらくするとまたこうやって店に戻ってくる


何とも奇妙な旅枕さ』



刺繍の美しさに心を奪われた私は


話の続きも聞かずに代金を支払って


枕を抱いて微笑んでおりました



使ってみるとふんわりと柔らかく


頭を包み込むような安心感と


ものの数秒で夢の世界へと


誘うかのような幸福感がありました



そこで私はあなたと出逢い


世界を共に旅をして


甘く激しい恋に落ちていきました



新しい枕に恋をした私は


早く一緒になりたいと


家に帰ると直ぐに両手で抱え


頭を預けて横たわる


寝ている間の夢物語が大好きで


夜毎現れる旅先でのあなたに


心が躍りときめくのです



枕は大事なパスポート



素敵な夢への入口で


たくさんの寝物語が詰まった


不思議な鞄のようなもの



旅好きの私は


あなたとの時間を惜しんでは


泣きながら目覚める日々


それでもきっとあなたは


枕の向こう側にある国で


いつも手招きをして待っている



だから私は枕がとても愛しくて


いつでもどこでも逢いたいのです


たとえ仕事をしていても


誰かと外食をしていても


他人と話をしていても


今日はあなたと


どこへ旅をしようかと


いつも考えてしまうのです



たとえ家族や友人が


どんなに反対してきても


私は旅することを止めなかった



やがて私の旅が


あなたに誘われるままに


一日が二日になり


二日が三日になりと


旅する時間が伸びていきました



私はみるみる痩せてゆくけれど


それでも私は幸せでした


枕に出逢えたことに


とても感謝していました


なぜならあなたに旅先で


真剣な愛の告白をされたから



『ずっと一緒に生きよう』と



あなたの愛に救われた


満たされることのなかった


私の人生の中で


ただ一度だけの愛に


私の人生は激しく動いたのです



だから私は決めました


私は今夜旅立ちます


大事なこの枕を抱えて


誰よりも愛しているあなたの元へ・・・・・・


  <了>


(注)この作品はタコアシのものです。

不正な転載や盗作、並びに違法行為に

なることは固く禁じさせて頂きます。


こんばんは、タコアシです。

今回は枕を題材にした作品を書いてみました。


夢は記憶の整理作業といわれるものの、

いろんな想像に置き換えて

感じてみるのも、それはそれで

ロマンがあって良いのかなと。

まぁ、悪夢は別ですけど。


あなたにとって記憶に残る

不思議な夢は何ですか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ