一匹オオカミ少年A
「エイくんって、一匹狼って呼ばれちゃってるんだって?」
林朝雪は幼馴染の家に転がり込みつつ、勝手にマンガを物色しながらそう尋ねた。
ベットの上でゴロリと横になりつつ飼い猫を撫でていた、「エイくん」こと川上叡哉が顔をあげて朝雪を見た。
「そうなのか?」
正直、自分の事だけどそんな陰でどう呼ばれているかなんて耳に入ってこない。
「芳栄高校の川上叡哉といったら、なんかものすごい不良らしいよ?」
「…へぇ…」
眼をまん丸くして本気で驚いている。
それも仕方ないかも。
エイくんの8つ上のお姉ちゃんは美容師で、エイくんの髪型に関して本人にすら口出しを許さず、真っ黒の髪に所々真っ白にメッシュを入れており、お義兄さんが調子に乗ってピアスを開けさせ(後でおばさんにめちゃくちゃ怒られたらしい)、もとから一重で釣り目気味のエイくんはもう見るからに悪そうな外見にされてしまっている。
でももともと顔立ちが整っているし、悔しい事に足も長くて背も高いから、別な高校に通ってる朝雪の耳にも女の子たちが超カッコイイとかい言ってるのを耳にしたことがあるくらい。
「…でもオレ、ケンカしたことないよ?」
「だよね」
中学時代も皆勤賞だったエイくんだから、きっと高校でも同じようなものだと思うし、口喧嘩だったら小さいころからよくやったけど、たぶん殴り合いの喧嘩なんてしたことないんじゃないかな?
「みゃー、どうしよう。俺不良なんだって」
腹の上に載せていた飼い猫のみゃーにむかってそういうエイに、みゃーがぽちっと肉球で口をふさぐ。
……かわいいな、みゃー。
もともと朝雪が見つけた捨て猫だったが、妹が猫アレルギーだと判明して飼えなくなったため、隣のおばさんが「アンタ世話しなさい」とエイくんに命令して、それからみゃーはエイくんちの猫になった。
「そしたら、トモくんも一緒にいたら不良って思われちゃうかな?」
朝雪が通っている高校は進学校だ。
顔も身長も運動神経も並だけど、唯一のとりえは頭がいい事。
いまだって県下有数の進学校ながらつねに上位に食い込んでるくらいだ。
「えー、大丈夫じゃない?」
「でも内申書とか」
「エイくん、ふりょうじゃないんでしょ?」
どこか不安そうに見上げてくるエイくんの頭を撫でてやる。
「…ふふ。エイくんって、オオカミっていうかシベリアンハスキーだよね」
「人間だけど……」
「みゃーとエイくんが一緒にいると和むよね~」
「ねえ、ともくん。オレ人間だからね!」
「はい、お手~」
「もうっ!」
口を尖らせて、みゃーの手を朝雪の上に重ねてみゃーに代わりにお手をさせる。
「もうっ、かわいいな、みゃーもエイくんも」
ある意味でテスト投稿。
こっから話がはじまるのかどうかも知らん。