召喚された凡人
初の連載物です。よろしくお願いします。
昔から、才能ってやつが嫌いだった。人様の努力を、いったいなんだと思っているんだ。
どんな分野においても、いわゆる天才ってやつがいる。そいつらは、長い時間かけて凡人が積み上げてきたものを、あっさりと超えてくる。こっちの努力や苦悩をあざ笑うかのように、さも簡単なことのように。
それが、生まれた時からの違いだ――なんて言われたら、じゃあ、凡人であるこっちはどうしろっていうんだ。
そういう意味では、僕の嫌いなものは才能だけに限らない。顔の出来とか、身長とか、そういう「生まれ持ったもの」ってやつを、僕は全体的に嫌悪している。努力や積み重ねで、どうにもならないものといってもいい。
だからいつからか、僕は一生懸命頑張っていることを誰かに知られることが、たまらなく嫌いになった。生きていれば、人より劣っていることなんて数えきれないほどあるけれど、自他ともに認められるほどがんばっていた事柄で負けるのは、やっぱりみじめで馬鹿らしい。僕より優れている当人に憐れまれたりした日には、心底死にたくなる。
だから僕は、がんばらない。適当にやっている人生だから、負けても当然当たり前。
まあ、こんなにも才能ってやつを嫌悪して、グダグダと考えてしまう時点で、僕が才能ってやつに、どうしようもなくあこがれを抱いてしまっているのは、明白なんだけど。
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思考停止というか思考放棄というか。状況に頭が追い付かない、なんてことはこれまでもたくさんあったけど、さすがにこれほどまでに僕の常識の枠外の事態に直面したのは、初めてだった。
アニメだか漫画だかで目にするような、複雑怪奇な魔方陣が床いっぱいに描かれた石畳の部屋。薄暗い室内に、荒い吐息と、言葉にならないざわめきが蠢く。しかも、足元の魔方陣がぼんやりと青白く光っているんだから、笑えない。
「なんだこれ」
思わず、声が漏れた。いや、正直にいうなれば、この状況を説明できる事柄を僕は知っている。知ってはいるが、あんまり認めたくない。ああいうのは、娯楽として、自分が部外者として見ることができているから楽しいのであって、実際に渦中におかれてみるものではないのだ。
心を落ち着けるべく、まわりをぐるりと見渡してみる。すぐ近くでは、先ほどまで一緒に授業を受けていたクラスメイト達が、皆一様にきょとんとした顔で周囲をうかがっている。たぶん僕も、彼らと同じような顔をしていることだろう。
いや、全員がそうというわけではない。呆然としている連中に声をかけて励ましている奴と、考え込むようにじっと足元を見つめるやつ。周りと違う行動をしている分、そいつら2人の動きはわかりやすく目についた。行動は正反対だけどな。
周囲と同調を図り、みんなで協力して目の前の問題にあたろうという姿勢と、1人でじっと思考し答えを探ろうとする姿勢。なんにせよ、こんな時でも、僕含むその他大勢とはちがうことがはっきりとわかる、2人の行動。まったく、嫌になるな。
で、今はクラスメイト達は置いておいて、問題は壁際。ちらちらと燃え盛るたいまつに照らされて、まるで石造りの壁と同化するような暗い灰色の外套を羽織った見知らぬ人たちが立っている。外套の色と松明のちらつきで見えづらいが、男女合わせて5人ぐらいだろうか。
まるで、全力疾走の直後のように荒い息を吐く連中は、言うまでもなく、めちゃくちゃ怪しかった。
――なんだろうな。僕は嘲笑を浮かべそうになるのをこらえて、頬を掻いた。冷静に事態を把握しようと周りに目をやったはずなのに、ありえない事態が起こったことに対して、順調に外堀を埋めてしまった感が半端ない。
肥大していく嫌な予感ってやつに、僕が一筋冷や汗をかいた時、重めのドアが開く軋んだ音が部屋に響いた。同時に僕の右方向から、明るい光が差し込んでくる。まぶしい。
闇に慣れ始めていた目を細めて光の方に目を向けると、そこには光を後光のようにまとった金髪美人が、気品のある笑みでこちらを見ていた。
「ようこそ、勇者様方。私たちは、皆様を歓迎いたします」
ああ、外堀どころか内堀まで埋められてしまっては、もはやなす術がない。
認めたくはないが、認めるしかないようだ。
つまりこれは、異世界召喚ってやつなのだ。
――……まじで?
はじめまして、kimeraと申します。
連載物ということで、しっかりと一つの作品にまとめていけるよう頑張ります。
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