プロローグ
語力あまりありませんがよろしくお願いします。
白亜の壁に囲まれた中庭で開かれるお茶会。女の花園と化した箱庭では熱に浮かされた少女たちが一人の麗人を囲んでいた。
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東京某所の高校の体育館。
激しく竹刀がぶつかり合う音と部活に励む学生の掛け声が鳴り響く中、審判の鋭い掛け声により一つの試合が終わった。
負けた生徒が面の紐を解きながら咳き込む。面を外した頭からは湯気が漏れ、真夏日を錯覚させる。
「ハァハァ…佐藤先輩…、やっぱ強いっすね…」
「えぇ、これでもある程度は手加減したんだぞぉ。やまもとぉ、もっと強くなってから挑みに来いよ。」
反対側で竹刀を青年に向ける生徒は得意げに口を上げた。
「「「「「キャァーーーーーー!!!!佐藤せぇんぱぁーい!!!!」」」」」
声を掛けてくれる後輩達がとても可愛くて、思わず笑みが零れる。
タオルやドリンクを持って駆けつけてくれるのが嬉しくて手を振ると、ある女子生徒は鼻血を出し、またある女子生徒は奇声を上げ、またまたある女子生徒は卒倒していた。熱中症かな?
「いーよなー、お前ばっか女の癖に女子にモテやがって。バレンタインはいたる所の隙間からもチョコが溢れてたんだって?佐藤ぶちょー。」
「その貰ったチョコ勝手に食べたのはだれだっけー。部室にチョコをまとめた紙袋置いたら無くなってたんだよなあ?」
茶化したような幼馴染の言葉にイラッときて、ギロリと睨む。僕の為に頑張って作ってくれたチョコを見知らぬ男に食べられるなんて、作ってくれた子に申し訳ない。あのときはいつもの五倍増してこいつを試合でけちょんけちょんにしたんだったか。
僕の名前は佐藤 真里亜。花も恥じらう乙女である。一人称は少しアレだが正真正銘の女だ。ただちょっとばかし女の子にモテやすいたちではあるけど。剣道の腕に自信があり剣道部部長を務め、何度も様々な大会で優勝していたり、鋭い目つきと百八十近い高身長っぷりの所為で、いつのまにか「剣道部の貴公子」というなんともこっ恥ずかしい二つ名を与えられ、こうしてファンに追われる生活を送っている。風の噂では抜け駆け禁止の親衛隊が出来てるらしい。なんだそれは。
そんな僕にも人には言えない秘密の趣味がある。それは女性用恋愛趣味レーションゲーム…所謂乙女ゲームが好きなオタクであるということだ。
そして今朝、遂に連日の睡眠時間を犠牲に乙女ゲームをやっと全ルート攻略したのである!!
大変だった。「薔薇乙女のキンダンの恋」、通称「薔薇恋」はとにかくライバルとのエンカウント率が高いことで有名なゲームだ。攻略対象者とやたら接点がある悪役令嬢がことあるごとに絡んで来ては嫌味なセリフと嫌がらせで主人公を追い詰める様はまるで嫁いびりを楽しむ姑の如くだ。攻略対象の好感度を下げ、バッドステータスを付与し、ゲームの難易度を尽く上げたあの女のおかげで朝から最高にフラフラだ。早く帰りたい。
とは思いつつも、今日は大事な新入部員への歓迎模擬試合。部長である僕がいないわけにはいかない。
ようやく最後の相手との試合が終わり、疲れた体を早く休めようと帰路を急ぐ。
信号を待ちながら横に目を向けると、隣には小学生くらいの女の子が二人いた。夢中で話している。
いいなー。僕にはああいう風に気軽に話せる女友達いないもんなあ。
しばらく経って信号が青に変わり、足を踏み出した。小学生たちも青信号に気付いたようで進み始める。
真ん中ほどまで渡ったとき、横からトラックが突っ込んできた。
ヤバイ!と感じトラックから逃げようとしたその時、突っ込んでくるトラックに唖然とする二人の女の子が目に入った。
―この子達を助けないと!!
そう思い二人の手を取り思いっきり後ろへ引く。
その反動で僕の体がトラックの前に投げ出された。
トラックが突っ込んでくる。
体が軋む音がする。これ絶対背骨と肋骨折れたわ。
鈍い痛みと目に刺さるような眩しいライトに頭がくらくらする。
あぁ、冷蔵庫のプリン食べてなかった。
何故かそんなことを考える。
くらくらしていた頭がどんどん重くなり、ぼんやりとみていた景色が霞んでくる。
そして僕の意識は闇に沈んだ。