#9
『先に学校行く』
歩夢記からLINEが送られてきていた。
こんなに短文のLINEを、しかも早朝に送られてきたことは一度もなかった。
高校は8:30に席に着いとけばいいから、中学生の時より幾分楽。
中学は8:00には席に着かなきゃいけない上、朝練もある。
歩夢記は中学生の時の部活の朝練はいつも一番乗りだった。
「相変わらず、早いなぁ」
感心、憧れ、羨ましい。
それを通り越して嫉妬さえ感じた。
歩夢記は成績も良くて、学校の活動にも積極的に参加していたし、剣道も強い。だから、永紅高校くらい推薦入試で行けたと思う。学校の先生にも勧められていた。
でも、断って、一般入試を受けた。
それは多分、私がいたから。
私は、推薦入試は兎も角、一般入試さえも危うかった。
先生は、入学後のことも考えて、私が永紅高校を受験することには反対気味だった。それを歩夢記は私の代わりに押し切ってくれた。
正直、私自身も落ちるんじゃないかって怖かったけど、歩夢記が付きっきりで私に勉強を教えてくれたお陰で、思ったよりも高い点で永紅高校に受かった。
剣道部に誘ってくれたのも歩夢記だ。歩夢記はいつも何かあると、必ず私に声をかけてくれた。
まだまだ通い慣れていない通学路なのに、気づいたら校門の前だった。