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#7
あの後は何事もなく、最後まで部活を見て終わった。
18:00の空は思いのほか明るかった。
名津優志郎は終わった途端に道場を飛び出し、帰っていった。
上から見ていたけど、歩いてるだけなのに脚が長いから凄いスピードだった。
私は歩夢記と一緒に帰った。
家は近いから徒歩。歩夢記とは途中まで同じ道。
「なぁ、羽琉は剣道部入る?」
歩夢記がちょっと深刻そうな声で聞いてきた。
「んー、歩夢記次第かな」
私はわざと、お気楽な声で答えた。
「俺さ、ちょっと、迷ってるんだよね…」
「えっ!?」
歩夢記? 歩夢記!?なんで歩夢記が迷うの!?
「な、なんで?」
凄く動揺してしまったけど、それを隠して聞いた。
「いや、先輩方とかめちゃくちゃ良い人で優しい人だよ。綾元先輩とか俺、中学生の時に初めて試合したのが綾元先輩で、綾元先輩に負けて号泣してたら、試合の良い所と悪い所を指導してくれて、綾元先輩は覚えてなかったみたいだけど、俺には凄い印象に残ってたんだよね」
「じゃあ、どこか剣道部のネックな所があるの?」
「うん。羽琉は気付いてないみたいだけど」