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歩夢記が剣道部の勧誘が来ないと不機嫌だった昼休みを終え、あっという間に放課後になった。
「羽琉!剣道部の見学行こうよ!!」
歩夢記が私の腕をつかんで揺らす。
「いいけど…、どこに行くの?」
「剣道場に決まってるじゃん!さっき担任に聞いたら、剣道部存続してるって、場所も教えて貰った」
にひひ、と得意気に笑う歩夢記の顔はやはり幼い。
「はいはい、さすが歩夢記ですね」
「思ってないだろ」
「幼顔だとは思ったよ」
「っ///…羽琉なんて知らない!置いてく!」
歩夢記は何故か顔を真っ赤にさせて、早歩きで廊下を歩いた。
「待ってよー」
私は走ってついて行った。
剣道場は、校舎から外廊下を渡った場所にあった。二階建てで、下に硬式野球部のバッティング練習場、その上に剣道場があった。
タンタンタン…、と軽快な足音を鳴らしながら階段を登る歩夢記の後ろを、私は駆け足で登ってゆく。
階段を登りきったら、道場の外廊下に剣道着を着た男子が立っていた。
先輩だろうか…、そう考えていたら、
「あっ、永紅中の瀬河君じゃん!」
剣道着を着た男子が声をかけた。
「綾元先輩!」
歩夢記が返した。