#1
私と歩夢記は念願の永紅高校に入学した。
仰々しい入学式が終わった次の日。
昼休みに、待ってました!と言わんばかりに、上級生が大量のビラを持って部活勧誘に来た。
私は、吹奏楽部や弦楽部、茶花道部や文芸部や美術部など、文化部のビラばっかり渡されたのに対して、歩夢記はバスケ部やテニス部や卓球部、陸上部などの運動部のビラを貰っていた。
「俺、背低いのにバスケ部入れるのかな?」
「マネージャーじゃない?(笑)」
「う、うるせー!一応、165cmだからなっ」
いつも通りのボケツッコミも慣れて、頭を使わなくても応えられる。
それだけ、歩夢記とはよく話す仲だ。
「そういえば、剣道部のビラ無いね」
大量のビラを1枚1枚確認しながら、歩夢記が言った。
「そうだね」
私も、ビラを確認しながら言った。
「まさか、今年は部員募集しないのかな?」
「いやいや、部員募集しない理由がないでしょ?何かトラブルがあったとかは聞いてないし」
「そっか」
歩夢記は不安そうに、紙パックのオレンジジュースを吸った。ストローを吸う口が、歩夢記の幼顔をさらに際立たせる。
歩夢記は幼顔で身長も高くない。世間ではいわゆる"可愛い系男子"ということらしい。
男子で身長165cmは小さい方なのだろうか?
高校の男子の先輩達はみんな背が高くて大人だけど、1年生の中にも背が高い男子が何人かいる。
「羽琉、今俺のこと子供みたいって思っただろ?」
「え!?なんで?」
「そう思ったから。俺がいつまでも子供のままでいると思ったら大間違いだぞ」
そう言うと、歩夢記は立ち上がって、手で私の頭をわしゃわしゃした。
「やめてよー、髪がボサボサになる」
私が歩夢記の手を払い除けようとしたら、歩夢記は抵抗して、もっとわしゃわしゃしてきた。
嫌だけど楽しい。
歩夢記といると、いつもそう思った。