表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
名もなき創作家たちの恋  作者: おじぃ
2007年4月中旬 部活開始!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

91/307

けいけんちがたりない!

「それでね、お話の続きの前に、凛奈ちゃんの絵を見たい! さっきから気になっちゃって」


「わ、わかりましたっ! 人気声優さんに絵を見てもらえるなんて……!」


 緊張した面持ちと、鈍ったロボットのような動作で凛奈は鞄から自由帳を取り出し、開かず長沼さんに差し出した。


 自由帳をめくる長沼さん、肩を強張らせ高頻度に瞬きする凛奈、二人を観察しながらピザを食べる僕。パスタも食べたいな。


「うん、ちゃんとカタチになってる絵だね」


「あ、ありがとうございます!」


「カタチになっていない絵っていうのは、僕が描く絵みたいな感じですか?」


 僕の画力は現段階でほぼゼロ。絵になっていないともいえる。


「真幸くんのは論外だけど……」


 あっさり言われてショックだ。


「まぁ、その、ほら、あるじゃん?」


「うん……」


 長沼さんは明言を避けたが、言いたいことはわかった。友恵もよく言っていることだ。


 線が揺らいでいる絵とか、逆に硬すぎてフィギュアみたいになっている絵とかね。その段階はクリアしているということか。凛奈の絵は。


「じゃあ次ね。心を豊かにしよう!」


「心を、豊かに?」


 長沼さんの抽象的な提言に、凛奈は首を傾げた。でも、自分のキャラクターに物語を付けて欲しいと言ってきた凛奈なら理解できるはずだ。


「凛奈ちゃんはこれまで、光と闇をどれくらい見てきた?」


「光と闇、ですか?」


 りんなはこんらんした。たぶん。


「うん。人の温もりや冷たさ、世間の風をどう見てるか」


 わだいのレベルがあがった!


「え? いや、まぁ、普通じゃないですか? 平和な毎日?」


 りんなはけいけんちがたりない! ちゃんとこたえられない!


「平和ってなぁにお姉ちゃん? 何を基準に言ってるの? みずきわかんな~い」


「そ、その声は! 『みずいも』のみずきちゃん! 生で聞けるなんて!」


「うん! みずきね、お姉ちゃんが、すごーいイラストレーターになれるように、応援してるね!」


「わああ、長沼真央さんだけじゃなくてみずきちゃんにも応援してもらえるなんて!」


 食事を終えた後、茅ヶ崎駅の改札口で凛奈を見送り、僕は長沼さんは二人きりになった。


 駅のコンコースを下って南口に出ると、ちょうど熱海行きの電車が走り始めた。


「いやぁ、ちょっと、話せなかったな。未成年にはちょっと早い話をしそうになったよ」


「僕も未成年ですけど」


「うん、そうだね」


「こんばんはー」


 僕らに続いてコンコースを降りてきた人に声をかけられた。緑の学生服に身を包んだ、とても可愛らしい見た目の変な子だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ