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名もなき創作家たちの恋  作者: おじぃ
2007年4月中旬 部活開始!

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スッキリ思い切れたような渦巻く感情

 放課後、人見知りの僕はただ独りアニメ制作部の部室へ向かい、ツルツルしたリノリウムの廊下をとぼとぼ歩いていた。


 部室は北棟2階の東端にあり、生徒数約2千人のマンモス校なのに人気ひとけがなく、陽当たりも悪いので薄暗い。途中経路にあった軽音楽部周辺の賑わいが嘘のようだ。とても同じ学校だとは思えない。


 軽音楽部の予算は潤沢で、夏休みは毎年箱根の旅館で合宿し、昼間は箱根町内のホールや小田原にある楽器店のスタジオで練習、最終日は周辺地域の空いている市民ホールを借りて発表会をするらしい。なおアニメ制作部に関しての情報はない。


 部室の扉の前に到着するも、その窓に遮光幕が掛かっていて中が見えず、物音は聞こえない。


 この学校は防犯、防災上の観点から重い鉄製の扉が採用されていて、アニメ制作はデスクワークだから物音が聞こえないのも納得。


 ただ、ブラックボックスの中に一人で飛び込む度胸が僕にないだけだ。


 どうしようかな、入部はいつだってできるし、きょうは帰ろうかな。


 でもきょう帰ったからってどうせ明日もこんな感じで静けさが支配しているだろし、来週も来月も来年も卒業後もこの部がある限り未来永劫そうだろう。


 午前中の発表作品を見たとき、イヤな感じがしたんだ。友恵と三郎もそうだったみたいだし、やはり僕の周りにいるプロや美空と比べると、作る物語も人生経験も薄っぺらいんだろうなぁ。


 いっそのこと、入部をやめてしまおうか?


 友恵の提案でピクチャードラマは作ることになってるし、クオリティーだって彼女たちから盗んだほうが良いものができそう。


 だがしかし、あまり仕事の邪魔はしたくない。となるとアニメ制作部入部がまぁ良い選択肢になる気がするような……。


「どうしたの?」


 不意に背後から声を掛けられて驚いた僕は「えっ?」と振り返った。ミルクティー色の髪をした150センチくらいの女子が立っていた、上履きの色は僕と同じ青だから1年生だ。リボンは青、緑、赤から学年問わず好きな色を選択可で、彼女は赤いリボンを装着している。


「もしかして、アニメ制作部に入部希望?」


「……うん」


 僕は入部を躊躇っているので、間を置いて緊張に圧され肯定してしまった。


「おおお! おんなじだ! 私、咲見さきみ凛奈りんな。よろしくね!」


「あ、えっと、清川、真幸です」


「清川……、あ、もしかして軽音楽部の先輩に名指しされてた?」


「はい」


「おお、あの有名な清川くん。ていうことは地元の人かぁ。私15組なんだけど、清川くんのこと知ってる子がいて、爆笑してた」


「誰?」


石田いしだっていう男子」


「あ、はい」


 石田は中学時代、スクールカーストの上位にいた男だ。僕とはあまり接点がなかったけれど、認知はされているようだ。


「えーと、ていうことは、咲見さんは」


「凛奈でいいよ」


「じゃあ凛奈は、地方から来たの?」


「地方といえば地方だけど、熱海だから家から通学してるよ」


「そうなんだ」


 茅ヶ崎から熱海間は普通電車で約50分、快速アクティーで40分少々と、無理なく通える範囲。


「こんど遊びに来てね、熱海」


「何度か行ったよ。ビーチとか来宮きのみや辺りの日帰り温泉とか」


「あそこ知ってるんだ! けっこう隠れ家的スポットなのに。さて、それじゃ部室、入ろうか」


「あ、はい」


 結局僕は今回も他力を借りて一歩を踏み出す運びとなった。なんだか心がムズムズするけれど、どこかスッキリ、思い切れたような、渦巻く感情が僕の胸や脳を支配している。


 お読みいただき誠にありがとうございます。


 今日、本作にも描かせていただいた香川屋分店の前で中学時代の同級生たちやそのお嫁さんと駄弁っていたのですが、俺は劇団の座長やってるとかアイツは『スッキリ!』のスタッフやってるとか、イラストならアイツに話通せば早いんじゃね? とかそれぞれアブノーマルライフを送っているようで、懐かしく刺激的なひとときでした。


 その後、一人で海を見に行き、相変わらず被災の爪痕が残った海岸や群青にきらめく海を眺めていたら創作のアイディアをポンポンふわふわスッスと浮いてきて、なんというか、閉塞的な環境下で浮かんだ狂ったように筆が進む感覚ではなく、神聖とでも言いましょうか、とても高尚でふわり舞うような感覚に満たされました。


 最近SNSでの出現が減っているため、その海岸の様子を上げておきました。


 では次回もお楽しみに!

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