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名もなき創作家たちの恋  作者: おじぃ
2007年4月中旬 部活開始!

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キミは宇宙を感じているか

 発表会が終わって昼休み5分前の教室。がやがやと昼食の準備をしながら喋る者が多い。


 ある者は持参した弁当を、またある者は財布を出して購買へ向かう準備を。


 僕は誰とも会話せず黙々とおもむろに折り畳み式ケータイを開くと、長沼さんからメールを受信していた。


 モデルのようにスレンダーな長沼さんは個人的にとてもそそるので、彼女の凛とした姿を思い浮かべてドキッとした。


 当校は携帯電話の持ち込みは原則禁止だが、時代錯誤なので休み時間なら暗黙の了解で教職員も認めている。


 メールは僕、三郎、友恵、美空への同時送信で『キミは宇宙を感じているか』という本文だった。


 どこかで聞いたことのある台詞だが、今回のメールにおいてそれは意味不明なのでちょうど僕の席に寄って来た友恵に訊ねてみた。屈む彼女の胸元は学校指定の青いリボンが縛り隠している。残念。


「宇宙を見渡すように視野を広げるためどっかに遊びに行こうって意味」


「なるほど。友恵は行くの?」


「日程が記されてないよね」


「確かに」


 とりあえず『感じたい。感じたいんだ!』と返信し、三郎もいっしょに屋上へ向かった。


 校庭と松林、そして初夏のふわりきらりと乱反射する海をバックに食事を摂る。僕は香川屋のコロッケと千切りキャベツ、白米に梅と野沢菜漬けを押し付けた二段弁当。友恵はサニーレタスに卵焼き、唐揚げを乗せ、仕切り板で左半分にワサビ醤油を垂らした小振りの弁当。三郎は高級そうなパン屋のカレーパンとカスクート。


「二人とも、部活は入るの?」


「原稿あるから部活する時間はないな~」


「アタシも仕事があるから」


「そうだよね。二人ともプロだもんね」


「プロだからというか、実はアニメ制作にはちょっと興味があったけど、あのシナリオだとこっちが潰されそうで」


「友恵ほどの人が?」


「あぁ、いや、その、すごく言いづらいんだけど、物語を描くときって、自分が好きなことだけじゃなくて、中身がとの程度詰まった作品が人気なのか、ぎっしりがいいのか、スカスカがいいのかとか、考え込むときがあるんだよね。そういうときにその、スカのが流行りの作風になると、自分のしてる仕事はなんなんだろうとか、行き詰まりの原因になるし、それを作ってる人たちと関わると病むし、視野が狭くなって塞ぎ込みがちになったり、要するにクリエイタ―の闇のスパイラルに入り込むんだよね」


 友恵はほとんど息継ぎせず、プログラミングされた台詞を再生するようにスラスラ語った。僕は返事に困り黙り込んだ。


「でも真幸はアニメ作家になりたいんだし、シナリオはともかく動画の作り方とか他にも学べることはあるだろうからいいんじゃない? 物語はプロの人が作ったアニメとかドラマとか小説とか漫画とか、色々触れてみればいいんだし。ね、三郎」


「そうね、芸術にどれが正解なんてことはないから、ときに思わぬものがヒットするときもあるけど、視野を広く持って、どの芸術家や作品にもハマリ過ぎず客観視していれば、自分が成し遂げようとしている物事の方向性も見えてくるわ」


「成し遂げようとしている物事の方向性……」


 それは漠然と見えてはいるものの、屋上から見渡す隣町の建物のようにハッキリとは見えず、少し遠い場所にある、そんな感覚がある。だから僕は等身大に甘んじず、背を伸ばすために多種多様な物事に触れる必要がある。


「宇宙を感じたい」


「わお、真央ちゃんのメールと真幸の現状が合致した」


「凄いわね、流石は役者。内面の想像に長けているわ」


「前から思ってたんだけど、僕ってそんなにわかりやすいかな」


 僕の問いを二人は条件反射のように首肯した。けれど僕のわかりやすさを抜きにしても、やはり長沼さんは凄い。


 お読みいただき誠にありがとうございます。


 最近SNSなどネット上ではご無沙汰しております。期日の厳しい原稿を抱えているため低浮上となっておりますが、皆さまの日頃よりのご支援には大変感謝しております。いつも誠にありがとうございます!

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