表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
名もなき創作家たちの恋  作者: おじぃ
2007年4月上旬 里山公園で取材

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

72/307

バブみ

「さて、じゃあ真幸、人間の絵を描いてみようか。男でも女でもいいから」


 友恵が言って僕にシャープペンシルと自由帳を差し出した。


 創作の取材を兼ねたピクニック。てっきり友恵の漫画や三郎のイラストの取材に同行させてもらえるのかと思ったら、メインは僕だったという騙し討ち。


 標高100メートルにも満たない茅ヶ崎の山でも、斜面から潮気ないふわりとした風が吹きおろし、さらさらと芝生を撫でる。


 風で白紙のページがめくれ描きにくいけれど、どうにか描き上げて友恵に自由帳を返した。


「あのー、真幸くん? これは何かな?」


「何って、ヒトの絵だよ」


 何をわかりきったことを。友恵が人間の絵を描くように言ったんじゃないか。


「あぁ、いや、真面目に描いてほしかったなって。これ、なんか全体的にぐちゃぐちゃして目がぐりんぐりんで男か女かもわかんないキモい怪物だよね。なんか情緒不安定感というか、クリエイター以前にもうちょっと人間としてしっかりしなさいというか、人格を疑うレベルの」


 !!


 友恵の辛口コメントにびっくりしていると、三郎、長沼さん、美空が描きたてホヤホヤの絵を覗き見た。なんだよ、冷やかしはやめてくれ。


「これは、人様に見せて良いものではありませんね」


 美空が淡々と言った。


「まぁその真幸、頑張りなさい」


 三郎にポンと肩を叩かれた。うん、頑張る。


「誰でも最初はできないもんだよ。大丈夫、練習すれば描けるようになるよ」


 ああああああああああああ!! 長沼さんはなんてやさしいんだ!! なんかもう僕、赤ちゃん返りしておなかずりずりして頭なでなでされて抱っこされたいいいいいい!!


 それに引き換え友恵と美空!!


 君たちは、君たちは!!


 頭にきたので友恵から自由帳をひったくり、できたてホヤホヤの絵を見直す。


 うん、これはひどい。第三者が見たら悪意を感じるね。


「ほら、真幸だって自覚あるんじゃん。顔がフリーズしてる」


「うん、まぁ、しょうがないよね」


 人には得手不得手がある。僕はお絵描きが不得手なんだ。


「しょうがないよねじゃねえよお前こんなんでコンテ描けるのかよ」


 ひいいいいいいっ! 友恵が怒った!!


 しかし僕の絵はもはや絵として成立していない。コンテはアニメの設計図で完成品ほどきっちり仕上がってはいない、サッと書き。それでも表情や雰囲気が伝えられなければ作品が思わぬカタチに仕上がって、僕の力量によりアニメーターさん、つまり友恵、美空、三郎に迷惑をかけてしまう。


「開き直りは、良くないわね」


 三郎がさらっと言った。


「すみません……」


「とりあえず、今日からコツコツお絵描きの練習始めてみよう?」


「はい」


 さすが長沼さん、人気声優だけある。正直クソな発言をしたクソな僕に怒らず前向きな言葉をかけてくれた。しかも説教じみておらず、僕の良識を信頼して自主的に改心してほしいという願いを込めていると、なんとなく程度に感じられる絶妙な具合で。


 ここで彼女は怒らない人だと調子に乗って甘えた態度を取ったら、僕はいまここにいる四人だけじゃなくて、これから出会う色んな人たちからやがて見放される、そんな気がした。


 こんな素敵な人に巡り会えた僕はとても幸運で、引き合わせてくれた友恵に強い謝意が芽生えた。


 友恵や三郎はかねてより、いまの僕から見て長沼さんもとても手の届かないところにいる、しかし最も身近な大スター。けれど僕もいつか三人のように憧れられるほどの輝きを放ちたいと、強く思う。


 美空もプロデビューこそしていないものの、絵が上手で物語も創れる。


 僕にしか創れない凄いものを創る旅はいま、新たなステージへと踏み出した。

 お読みいただき誠にありがとうございます!


 本能に忠実な真幸でした。


 次回『朝目覚めたら見ず知らずの妹が隣で寝てました』


 お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ