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名もなき創作家たちの恋  作者: おじぃ
2007年2月

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久しぶりの江ノ電通学

 きょうはバレンタインデー。徹夜でカカオ豆からつくった鬼の手づくりチョコを学園内の関係各位に手渡し、放課後を迎えた。


 部活はいつものような過重労働ではなく、ボランティア部らしく学校周辺の裏道を清掃するだけの本来あるべき活動内容で、30分ほどで終了した。これぞ私が望む部活動だ。


 最近、私は過労により遠方まで電車を乗り越しているけれど、きょうはこれから茅ヶ崎へ戻って真幸と友恵ちゃんにチョコを手渡そうと思うので、総武そうぶ線や東北とうほく線と直通運転してとんでもないところまで行く横須賀線ではなく、鎌倉から藤沢までの乗り越してもタイムロスの少ない短距離路線、江ノ電を利用する。


 鎌倉駅で混雑している電車を1本見送り、次の電車に乗って運転台後ろの席に腰を下ろした。江ノ電といえば緑とクリーム色の古い電車がよくテレビに映るけれど、実際のところあれに乗る機会は少なく、だいたいそれ以外の車種が来る。大きな窓の運転台から湘南の海を見渡せるヨモギ色の角張った電車は、学生や観光客、買い物帰りの人々などで混雑し、まもなく鎌倉駅を発車した。


 江ノ電通学は久しぶりで、少しアトラクションに乗るような気分。目の前の運転士さんはマスコンハンドルを前後させ、小さな電車を加減速させている。


 カタン、コトン。鎌倉の地をゆっくり南下する電車でしばし寝落ちしていた。


 ふーう……。


 鼻から息を吐き、運転台越しに外を眺めると、そこは徐々に夕空へと移ろいつつある海岸。ソーダとオレンジのシロップをかけたかき氷のように鮮明な空、太陽光を反射してきらめく海に、茅ヶ崎市民としては違和感のある左手に江ノ島という構図。


 並行する国道をゆくジープは、ほんの僅かな速度差で電車を追い抜いてゆく。


 小学何年生だったかな? そういえばお父さんに連れられて鎌倉高校前駅で江ノ電を降り、近くのコンビニでインスタントカメラを買って日が暮れるまでの数時間、写真を撮ったりトンビにサンドイッチを盗られたりしたっけ。


 食料を横取りするとは卑怯なと、頭にきて石を投げたら近くを飛んでいたカラスに当たり、仲間を呼ばれ群れで襲われた……。


 お父さんはフィルム交換に夢中で私の惨事に気付かず、一人で砂をかけまくってなんとか追い払った。いまとなっても良くない思い出だ。


 藤沢駅に着くまでの30分間は、数年前とさほど変わらない景色にたそがれた、そんなひとときだった。

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