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名もなき創作家たちの恋  作者: おじぃ
2007年2月

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イカのような香りのココナッツミルク

「おっはよー! クラス全員分のチョコつくってきたよー! チョコ苦手な人はクッキーと煎餅せんべいもあるから言ってー!」


 後ろの出入り口から開けっぱなしの教室に入った私は、着席する前に各席へチョコやお菓子を配って回った。三郎とか、まだ登校してない人には後であげる。


 真冬の朝、ストーブの焚かれた教室の窓は閉め切っていて酸素が薄い。窓際席の真幸はいつも苦しそうにしてるけど、空気を読んで換気に踏み切れないらしい。こんな淀んだ空気でみんな苦しくないのかな? と本人はよく虚ろな目で呼吸困難気味に言うので、いつも私が数センチだけ開けてあげてる。私も苦しいし。


「さすが南野! ラブボの達人!」


「ひひっ、食べるとラブボに行きたくなるクスリ入れといた♪」


「マジ!? じゃあ俺らはいいからその分女子にあげて!」


「媚薬盛られてもお前となんか行かねぇよ」


「るっせーブス! お前となんか行かねぇしイけねぇよ」


「ブスじゃねぇし! お前はまだイカがねぇからイけねぇんだよ! 下の毛も生えてねぇだろ!」


「は!? 生えてるし! ジャングルだしココナッツミルクたっぷりだし!」


「じゃあ見せてみろよジャングルだけでも!!」


「そっ、それはっ、ほっ、他のみんなに迷惑だろっ!?」


 いつも通り、朝っぱらから下ネタ全開の我がクラス。二人の痴話喧嘩ちわげんかもいつものことで、私たち部外者はいつも温かく見守っている。ここで過ごすのもあと1ヶ月弱かぁ。


 ラブボに行きたくなるクスリは冗談だけど、チョコ食べて元気になったら行きたくなるかもしれない。


「はい、真幸にもあげる! 今年も豊作だねぇ」


 教室を一周してやっと自分の席の前まで辿り着いた。隣席の真幸は既に5個くらいチョコをもらっていて、私みたいに小袋に詰めたものもあれば、包装紙をリボンで巻いた箱入りのもある。


 コイツ、私と三郎がいなければぼっちのくせに、実はけっこうモテる。


「ありがとう。ほとんど義理だけどね」


 ホントに義理かな? くれた子の名前は訊かないけど。


「そっか。でも‘ほとんど’ってことは?」


「うん。でもその人には付き合ってる人がいて、それなのになぜ僕に? と、つい訊ねてしまったら、その後は色々とね」


「そ、そっか、ドラマチックだね、金10か昼みたいに」


 とりあえず少しでも空気をさわやかにするために、私はいつも通り真幸の横の下段小窓を数センチ開けた。


「う、うん。まさかそんなことが自分に起こるとは思わなかったよ」

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