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名もなき創作家たちの恋  作者: おじぃ
2006年9月

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Scratch!

 軽音楽部の演目がすべて終わると、15分ほど間を置いてダンス部の発表会が始まった。


 現在9組目で残りは1組。自作の楽曲で歌って踊るというハードな条件下だからか、これまでゆったりと眠くなるようなフォークソングや、露出が多くてけしからんフラダンスなど、ローテンポな曲ばかり。


 段々と気怠そうな表情を見せ始めた菖蒲沢さんには恐縮なので、この場を離れてもらっても構わない旨を告げたけれど、特にやることがないから最後まで観賞するそうだ。やはり僕一人では心細いからありがたい。


 僕はダンス部の楽曲も提供したけれど、これまで発表されていないということは、トリがそれなのかな?


 そしてそれを踊るのはきっと……。


 軽音楽部の演奏はとっくに終わったのに、美空から連絡がない。


 9組目がバラードを踊り終えて、社交辞令と本気の拍手が入り乱れる。


 そのチームは某人気男性グループのようにボーカルが二人いて、他6人はダンスに徹する方式だった。


 前の8組よりは華やかさもパフォーマンスも遥かにハイレベルな美人集団で、プロでも通用しそうな気がした。


『さぁ、続いては最後のグループになります! なんとこのグループ、都合によりダンス部のメンバーが数名参加できなくなったため、他の部から助っ人を招き結成した、その名も‘Scratch(スクラッチ)!’ ダンス部、陸上競技部、そして普段はスポーツとは無縁なボランティア部のそれぞれ2名ずつ、計6名から成る努力と根性のパフォーマンスをぜひお楽しみください!』


 努力と根性などとお嬢さま学校らしからぬワードを放った司会はどことなく友恵と雰囲気の似ている、はつらつとした緑色のジャージを纏った生徒。


 各組の演目が終わる度に消灯する照明は再びステージを照らし、盛夏用学生服を纏った6人組が浮き出た。センターの客から見て左はショートヘアでスポーツ万能そうな生徒、右にはやはり美空がいた。


 美空は運動が苦手と聞いているけれど、大丈夫だろうか。


「こちらの曲も清川さんが?」


 菖蒲沢さんに訊かれて僕は「はい」と頷いた。美空が書いた詩を意識しながらも、ハードになり過ぎず、しかし観客を退屈させないよう、いや、存分に楽しんでもらえるよう緩急をつけた曲調にした。


 だから、前に発表したどの組の楽曲より何十倍もハードだ。とてもじゃないけれど運動音痴が簡単に踊れるようなものではない。あくまでもダンス慣れしたひとに向けてつくった曲だ。


「清川さんは、作曲家を目指されているのですか?」


「いえ、アニメ作家です」


「アニメ作家……。へぇ……」


 意外だと言わんばかりに菖蒲沢さんは僕の返答を咀嚼そしゃくしている。


 確かにアニメ作家を目指す者が作曲とは意外かもしれないけれど、音楽も物語と同じくふと湧き出るもの。どちらを取ってもまだまだプロには及ばないけれど、先ほど行われた軽音楽部の発表で、少し自信が付いた。


 きっといまの僕は、鬱々とした日々を送りながらも上がり調子だ。


 もちろんそれは自分だけの力じゃない。美空、友恵、三郎といった好きな面々や、逆に気に食わないひとたち。周囲のおかげで、僕は成長しつつある。


『僕らはー、いまー、新しいステージへー___』


 曲が始まった。歌い出しは美空だ。


 さぁ、今回の曲はどうだ。

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