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名もなき創作家たちの恋  作者: おじぃ
2006年9月

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36/307

ぼんやり海を眺めながら

 9月最初の日曜日。それは文化祭の本番まで残り2週間を切ったということになる。


 それだけ期間があれば、きっとなんとかなる。根拠はないけれど。


 暑いながらも少しひんやりした風が撫でる砂浜。私と真幸はベンチに腰掛け、ぽつぽつとした秋の雲の下、なにをするわけでもなく水平線をぼんやり視界に入れていた。


 さざめく波音、犬を連れてはしゃぐ親子の声、空からそれを見下ろしながらぴーひょろろと旋回するトビ。


 あぁ、なんだか眠くなってきた……。




 ◇◇◇




 寝たな。この女、寝たな。


 砂浜を臨むベンチに腰掛ける僕と美空。海を眺めていれば曲が浮かぶだろうとぼんやりしていたら、美空の頭が前後にカクンカクンし始めた。


 寝顔は穏やかで可愛いのだけれど、今回は遊びに来たのではなく創作活動をしに来たというのにだな……。


 約束通り東海岸北五丁目交差点で落ち合い一中通りを南下してここへ向かう途中、美空から文化祭の楽曲についてなにかスタンスや思うことはないか訊いてみた。


 話によると、ボランティア部に所属する美空は軽音楽部とダンス部から楽曲制作の依頼を引き受けたのだが、自分たちがステージに立つわけではないから、楽曲は完成させて一応軽く演奏し、不自然な部分があれば調整するとのことだった。


 完成した楽曲がどれだけ難しい譜面になったとしても、私たちが演奏できるものを音楽関係の部活をしている者ができないはずはない、と。


 なるほど、とにかく難易度の高い楽曲をつくりたいというスタンスなのか……。


 きょうは行楽日和で、秋晴れの空。昼から塾なんて本当に勿体ない。

 

 そもそも心の豊かさもこれといった特技や人生経験のないお子ちゃまの僕が勉強をして知識だけ蓄えたところで意味などあるのだろうか?


 勉強を頑張って一流大学に入っても就職先が見つからないなんてよく聞く話だ。もっとも企業や職種にこだわらなければ選択肢は広いというけれど、それならば適度に勉強し、遊び、こうして海を眺めてアイデアを練っていたほうがよほど役立つ人間になると思う。


「あ、ごめんなさい。ウトウトしていつの間に」


 美空が意識を取り戻した。


「1時間くらい寝てたね」


「それにしては太陽の向き、ほとんど変わってないね」


 さすがエリート。眠りかけた思考回路でも冷静な状況判断だ。実は寝落ちしてからまだ1分くらいしか経過していない。


「真幸、なにか考え込んでいたようだけれど……?」


「うん。塾に行かないでこのままぼんやり海を眺めていたいなって」


「あら奇遇。私もそう思っていたの」


「はははっ、やっぱり行きたくないよね。学校の先生の説明が解りにくかったり、同じ単元でも違った見方ができるから塾に行くのも悪いことではないと思うけど、バランスがね」


「勉強のし過ぎでパンクするひともいれば、逆に学校にさえ通えないひともいる。世界はアンバランスなんだよ」


「それ、僕もよく思う」


「世界の真理を探求する男、清川真幸」


「ふっ、なんだそれ」


 なぜかツボに嵌まり、噴いてしまった。


「真幸はどこまで世界を知れるのか、一生かかるファンタジーがいま、幕を開ける___」


「一生で知れることなんてたかが知れているさ。ほら、水平線を見てごらん? 僕なんてちっぽけな存在が、こんなに広い世界を知れるはずなどないよ」


「でも太陽から見れば、地球なんて砂粒ほどだよ?」


「そうか。うん、そうだね」


 なら僕ら人間など、太陽から見れば細菌にも満たない。


 さて、己のちっぽけさが身に染みたところでそろそろ音楽について話し合おうか。

 お読みいただき誠にありがとうございます!


 更新遅くなりまして恐縮です。


 現在各作品構成の見直しおよび小説を基軸とした様々な創作企画を立ち上げておりますため、本作におきましても続話投稿間隔が開いております。

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