中盤『たった30000日の一生で』
ハイテンポでぶち上げたりバラードでしっとりさせたり、感情が忙しいライブを展開するアーティスト、長沼真央。ほぼすべての楽曲を自身で作詞している酒癖の悪いお姉さん。
彼女とバンド、そして観客も一体になって会場を盛り上げる。この一体感はどんな意味を持つのだろう。俯瞰すれば、内輪で盛り上がっているだけだ。
派手な楽曲が披露されている最中に、僕は一歩引いた目で見ていた。
コンテンツは没入し過ぎると客観性を損ねる。
ファンはときに、推しが意図せぬ方向へ暴走する。長沼さんみたいに母数の多い人なら尚更だ。
僕にとってライブ会場は、足跡や未来、生き様を俯瞰する場所でもある気がしてきた。
そんなことを考えていると、そんなキミへと言わんばかりの曲が始まった。
◇◇◇
『たった30000日の一生で』
作詞、作曲∶長沼真央
たった30000日の一生で
何を知ったつもりでいるのだろう
日々が飽和してゆくにつれて
時の流れが速くなり
足跡を振り返った10000日目
目まぐるしく移ろう自分史の中で
見上げた星空は幼い日のそれと何ひとつ変わりなく見えた
自分史上最大の出来事も
宇宙レベルでは認知もされない
何もかもが些細でもあり
さよならを選ぶほど大きくもある
どうか無知なこの自分に
あなたの中を見せてくれないか
野次馬にも似た偽善に付き合ってくれないか
なんて我儘を浮かべる
月が照らす夜空の下
たった30000日の一生で
何を知って熟してゆくのだろう
怠惰に辟易してゆくにつれて
心に淀みが溜まってゆき
醜さを正当化した11000日目
目まぐるしく移ろうこの世界の中で
選んだ籠の中から見る景色は何も変わりそうにない
自分史上最大の出来事も
宇宙レベルでは認知もされない
何もかもが些細でもあり
運命を変えるほど大きくもある
探そう無力なこの自分の
新しい世界を見つけに行こう
馬車馬のような日々に付き合ってくれないか
なんて道連れを誘う
月も見えない曇り空の下




