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名もなき創作家たちの恋  作者: おじぃ
2013年1月

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304/307

埼玉の与野にあるアリーナ

 2013年4月、そろそろ就活が始まるこの時期、僕はこれといって就職したい企業は見つからずにいた。


 各駅停車よりも蟻ん子よりも遅い、微生物並みの速度で進む僕、清川真幸。


 周囲の近況。


 美空は歌手を続けている。一応芸能人なので連絡は控えているのでメディアの情報に基づいた近況。


 友恵は変わらず漫画家。


 三郎も変わらずイラストレーター。


 東日本大震災を共に乗り越えた学友で藤沢市民の時沢神楽は僕と同じく大学生活を継続。


 そして凛奈は、な、なんと!


 専門学校を卒業してアルバイトをしつつ、たまに来るイラストレーションの依頼を受けているそう。なんだろう、僕より先を歩いているけれど、僕より危なっかしい感じがする。


 きょうはそんな凛奈と、知り合いの声優、長沼真央のライブを見に埼玉県の与野よのにあるアリーナに来ている。


 凛奈と会うのは高校卒業以降初で、さいたま新都心駅の改札口付近で落ち合ったときに「久しぶりー!」「お互い変わってないね」なんて会話をした。


 午後3時の駅周辺は僕らと同じくアリーナへ向かう人々でごった返している。


 この人たちみんな、というと実際のところは違うだろうけれど、ほとんどがあの長沼さんのファンなんだ。酒飲んでバカみたいにデカい声出してプハーッ! とかやってるあの長沼さんのファンなんだ。


 僕もファンといえばファンだけれど、誰かが転売してファンクラブを退会処分となった者のチケットの席分を長沼さんの気まぐれで事務所経由で横流しされたから受け取ったに過ぎない。


 そんな不届きな行為も毎回発生するライブ会場周辺では、今回も『チケットください』などとプラカードを掲げる者がウヨウヨしている。


 その他、肉を食うな、痛みは感じるが物言えぬ植物を食えなどという思想の持ち主からの進言や、ネコと和解せよなどといった怪しい団体からの勧誘を受けるなどした。最後のはちょっと興味がある。


「私、ライブって初めてなんだけど、会場に辿り着くまでがけっこう怖いね」


 凛奈が僕の腕にしがみ付いてきた。やわらかなものを感じる。


「怯えしがみ付いてきたところ悪いけど、僕もこういうの、かなり苦手なんだ。護るどころか贄に差し出すかもしれない」


「何それ最低海に沈める。あ、そうだ、知ってる? 埼玉って、海無いんだって!」


「関東の常識だろ」


 凛奈のあまりの教養の無さに、僕は思わず冷たい口調になってしまった。


「えっ、そうなの!? あ、でも私、東海地方在住だし」


 凛奈の住所は関東地方の神奈川県湯河原町に隣接する静岡県熱海市。関東地方と隣接する自治体の熱海市在住だ。


「日本人の常識でもあるけど」


「じゃあほかに海の無い県は?」


「栃木、群馬、山梨、長野、岐阜、滋賀、奈良」


「けっこうあるんだね」


 こんな雑談をしているうち入場ゲートに辿り着き、僕らは係員にチケットを提示してアリーナの建物内に入った。

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