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名もなき創作家たちの恋  作者: おじぃ
2013年1月

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でなかったよん

 出なかったよん。


 4の目を願いサイコロを投げたが出た目は5。行き先は杜の都、仙台に決定。


 高速道路で行くということは車移動になるけれど、さて、誰が運転するのか。


 阿波あわ鳴子なるこに連れて行かれたのは事務所近くのレンタカー店。インプレッサを借りた。これで仙台へ向かうようだ。


 なるほど、ここにいるのはLongtempロンタンの三人と阿波鳴子だけ。ドライバーさんはいない。つまり運転するのは私たちの誰か、もしくは全員。


「さてさて、今回お借りしましたのは富士重工のミニバン、インプレッサ。安定した走りと適度な大きさ。ロングドライブにはもってこいのクルマでございます。ここから東北自動車道に乗って仙台を目指すのであります! 最初に運転してもらうのは、鉄道会社の御令嬢、菖蒲沢麗華さん!」


「え、わたくし、ですの?」


 不意を突かれたのか露骨にキョトンとする菖蒲沢麗華。ネタとしては私に運転させれば面白いとでも思っていたのだろう。しかし私は都内での運転経験がない。横浜市内ですら運転していない。なんなら湘南もそんなに運転していない。ニトリの帰りに間違って高速道路に乗って西久保にしくぼまで行き百円を請求された女だ。教習以外での高速道路経験は僅か2分。


 道路はウケ狙いの場ではない。複雑な都内の道路を安全かつ円滑に運転するなら冷静かつ比較的安全に運転できる菖蒲沢麗華が適任。命が懸かった場で、わけわからんちんを運転させるほど阿波鳴子はバカではない。


 菖蒲沢麗華の運転により出だしの鬼門、首都高速中央環状線を経由して埼玉県の岩槻いわつきから東北自動車道に入った。岩槻といえば人形のまち。ということ以外はあまり詳しくないけれど、とりあえずそんな岩槻を抜けて仙台へ向けてひた走る。


 道路の外は田園風景が広がっていると思われるが、高速道路には遮音壁があるため景色がよく見えない。


 バッコン、バッコン。道路の継ぎ目を通過する度、微かに振動するインプレッサ。揺れが少なく乗り心地が良い。


 左側の走行車線を時速90キロで北上。私だったら100キロ超で煽られたり煽り返したりするかもしれない。やはりここは冷静な運転ができる菖蒲沢麗華が適任だ。


 基本無口なLongtempロンタンの三人と、私たちの疲労を察して口をつぐむ阿波鳴子。バカはバカでも大事な場面ではバカではないから私たちもなんとか活動を続けられている。でなければ急に、しかもクルマで仙台へ赴かせるクソ会社などとうに辞めている。


 しばらく走り、栃木県の那須高原なすこうげんサービスエリアで休憩。ここから国見くにみサービスエリアまでは穂純ちゃんが運転する。


 ということは、国見から仙台までは阿波鳴子が運転か。なるほど……。


 なんかイヤな予感がするけれど、きっと気のせいだ。そうに違いない。

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