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名もなき創作家たちの恋  作者: おじぃ
2013年1月

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エゴサ声優と現実にいそうな萌えキャラ

「そう、ですよね……」


 数多のファンに支えられている長沼さん。災害関連死、病死、事故死など、ファンの訃報は手紙や連絡がなくとも風の便りで本人へ届くという。ちなみに彼女、エゴサ厨。アンチの書き込み見て「なんだテメェこの野郎ぶっ◯すぞコラァ!」などと発狂する。可愛いロリロリボイスを出す声優だが、彼女自身が可愛くてロリロリで純真無垢なわけがない。新人ならともかく、それなりの芸歴を積んでそうだったら芸能界ではほぼ生き残れない。


 そんな長沼さんだが、自分を称賛する呟きを見ると「よ~しよ~しいいこいいこ」と恵比寿顔でスマホの上部を撫でる。


「会社勤めもアルバイトもろくにできない、歌うか演じるかしかできない私を応援してくれた。そんな人たちが、苦しみの果てに命を絶たれる。そういうことが、ときどきあるんだよ。


 もっと私の歌を聴いて欲しかった、作品を見て欲しかった。天国に届くかな、私のファンなら地獄行ったヤツもいるかもなとか、いろいろと思うよ」


「僕も後者にならないよう気をつけます」


「もし真幸くんが地獄に堕ちたら、死後は私と同居だね」


「あなた、どれだけのことしてきたんですか……」


「えへへ~、それは内緒だよっ、お兄ちゃん!」


 再びのロリロリボイス。


「みずきちゃんは天国! 天国行くの!」


 キャラクターを乱用すると原作者とファンに怒られるぞ。ここは公共の場で、みずきちゃんを知っている客がほかにいる可能性もあるのに。


「ところで真幸くん、次回作はまだかい?」


「ううう、胃が痛い、頭痛も痛い……」


 とりあえずいつどのように変わるかわからない茅ヶ崎の現在の姿を記録した物語にしようとは思っているものの、そこから進展していない。下手に萌え系に走ると市民から反感を買って炎上するし、なら茅ヶ崎らしく(?)海外チックな何かと言ってもそれは不得意分野だし、作者の僕が心からその作品を愛せる気がしない。ついでにいえば『茅ヶ崎=海外チック』は外部の勝手なイメージ。友恵みたいなエロガッパ、美空みたいな変な子、僕みたいな不審者など魑魅魍魎が闊歩する街。それが公立の小中学校を卒業し、人間観察をしてきた僕の所感。


 そんな街だけど、やっぱり萌え要素は欲しいよなぁ。


 現実の茅ヶ崎にいそうで、且つ萌え要素を含むキャラクター。


 俯く僕に、長沼さんはストローを咥えてドリンクを吸い上げながら視線だけくれて微少に広角を上げた。

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