表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
名もなき創作家たちの恋  作者: おじぃ
2013年1月

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

294/307

人気声優との再会

 旅の疲れで翌朝は普段の休日より90分遅めの午前10時に目覚め、行く当てもないのでラチエン通りを南下して浜へ出た。


 背後に江ノ島、正面遠く西に富士山。打ち寄せた波が引き際の刹那に煌めく、いつもの浜。けれど震災以降、海辺には抵抗がある。被災地を目の当たりにしてから一日も経っていないのも少々あるが、それ自体はメディアがイヤになるほど流しているから、それはさほど影響していない。


 海を直視しづらくなった僕は国道134号線にあるヘッドランド入口バス停へ向かった。次のバスは10分後の予定。


 明らかに法定速度の時速50キロを超えて走る色とりどりのクルマが走る。大型トラックも多い。大学生になって僕は気分転換に関東近郊の街へ電車で出かけるようになったが、この辺りは青、赤、黒などクルマがカラフル。僕が巡った人口が茅ヶ崎と同程度の街は白やグレーのバンや軽自動車が多かった。


 クルマが突っ込んでくるかもしれないのでチラチラと警戒しつつ、僕はSNSを覗いた。


 西方さんの投稿があった。西方さんと神楽は本日茅ヶ崎巡り。


 ここから1キロくらい西のサザンビーチで『茅ヶ崎サザンC』のリング内に烏帽子岩。


 これといって予定のない僕はバスに乗って駅に出た。


 駅ビルの5階にある書店の一角には、サザンなどに混じって美空たちlongtempsロンタンのCDが置いてあった。僕は既に購入済み。最近会っていない人気声優、長沼ながぬま真央まおのCDもある。僕はどちらも購入済み。サザンのCDは母が購入済み。最近『栞のテーマ』や『チャコの海岸物語』の良さがわかってきて、僕は不審者のまま大人の感性も身に付けてゆくのだと改めて実感した。


 行き場のない僕はとりあえず駅北口のカギサンビル、つまりイトー◯ーカドーの1階にテナント入りしているロッ◯リアプラスに入り、テリヤキバーガーセットを注文。窓際の2人席に座った。文教ぶんきょう大学行き専用バス停と道路を挟んでディスカウントストア兼家電量販店が見える。こちらもあちらも店舗前の自転車ラックは満車。


 よく冷えたコーラを吸い上げしゅわしゅわ、続いてポテトを咀嚼。昔は茅ケ崎駅構内にロッ◯リアがあったて、改札内外それぞれに注文口があった。現在そこはトイレになっている。


「やあ、久しぶりだね少年」


「もう少年じゃないです。年齢的には。精神的には少年どころか乳幼児なので授乳してもらえますか」


 窓の外をぼんやり眺めていた僕の背後から現れたのは、人気声優の長沼真央。大学生になってからは初めて会った。中性的でやや女寄りな顔立ちのスレンダー美人。トレーには何らかの冷たいドリンクMサイズ、ポテトもMサイズ、それと『絶品チーズバーガー』が載っている。普通のチーズバーガーより肉厚でジューシーなやつだ。


 彼女はそのまま僕の正面に座ると


「気持ち悪さに拍車がかかってるね、お兄ちゃん」


 満面の笑みとアニメ声で僕を罵倒した。


 あああん!! ロリキャラボイスでそれ言っちゃイヤン!!


 僕も『授乳して』は失言だと思った。まして公共の場で。やっぱり僕は本質的に気持ち悪い。


 ちなみにいまの声は人気ラノベ原作のアニメ『朝目覚めたら見ず知らずの妹が隣で寝てました』略して‘みずいも’のヒロイン、みずきちゃんの超絶ロリロリプリティーボイス。なんでこんなややボーイッシュな怒らせると物理的にも恐ろしいお姉さんからこんな声が出るんだ。声帯どうなってるんだ。


「男といっしょにいたらまずいんじゃないですか?」


「大丈夫、いろんな男と会いすぎてパパラッチも誰が本命だかわからないよ。本命なんていないけど」


「うーん、なるほど?」


「真幸くん、きのうまで東北に行ってたんだよね。つぶやき見た」


 長沼さんのプライベートアカウントと僕は相互フォロー。


「ああ、はい、なんというか、もう……」


「見てきたんだ、被災地」


「はい」


 被災地の風景はアップロードしていないけれど、石巻駅や萬画館の外観は上げたので、察しはついただろう。


 どうもアイスティーっぽいドリンクを吸い上げた長沼さんは目を細め、何に焦点を定めるでもなく窓の外を見た。


「私のファンも、けっこういなくなっちゃったんだ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ