表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
名もなき創作家たちの恋  作者: おじぃ
2013年1月

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

287/307

再びの東北4

 まず目に留まったのは駅のホーム。津波が押し寄せたのはメディアを通じて知っているが、車内から50メートルほど遠目に見た感じでは『なんとなく廃墟のよう』という印象で、目立った損傷は確認できない。


 他方手前のコンビニエンスストアの店内は物が散乱して滅茶苦茶。


 ここに津波が来た。


 僕は胸を焦がすでも恐怖を覚えるでもなく、事実として淡々と、それを受け入れた。


 バスは終点の矢本やもと駅に到着。ここから石巻駅までは鉄道の営業が再開しているので、狭い駅ホームの定員2、3名程度の小さな待合室で列車を待つ。


 その間僕は、昨日仙台の映画館で購入したバナナフレーバーのポップコーンをつまんでいた。僕が観たアニメ映画オリジナルのポップコーンで、甘酸っぱい恋の味らしい。


 恋かどうかはさておき、バナナ風味の香料と適度な甘酸っぱさはクセになる。


 ホーム上に僕以外は誰もおらず、静かな時間が流れる。




 虚無……。




 見渡す限り、これといった建物のない駅周辺。


 被災地を見に来たが、いまはただ、列車が来るまでの静かな時間を満喫しよう。


 ポップコーンを食べながらしばらく待っていると『奥の細道』と記された白い車体に緑と赤のラインが引かれた2両編成の気動車がエンジンをブンブン鳴らしながら到着した。


 奥の細道といえば、松尾芭蕉の文学作品。以前訪れた福島県の飯坂温泉にはその銅像があった。


 車内に入るとロングシート、四人ボックスと二人ボックスがあったので、人見知りの僕は二人ボックスに座った。ほかに乗客いないけど。


 数分後に列車が発車。ブーンとエンジン音を轟かせながら、列車は平野をゆったり駆けてゆく。


 のどかだなぁ……。


 都会の喧騒を忘れ、ぼんやりと車窓を眺めているうち、列車は終点の石巻駅に到着した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ