表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
名もなき創作家たちの恋  作者: おじぃ
2013年1月

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

284/307

再びの東北

 成人式から1年、成人の日を含む三連休に僕は旅に出た。


 旅行は2009年の東北旅行以来だ。行き先は今回も同じだが、今回は新幹線。あのときは僕と美空のお金がなかったため茅ケ崎からずっと在来線で仙台へ行った。


 その線路の一部は津波に呑まれ、夕陽が印象に残った新地駅では、美空、友恵、三郎と乗った車両がくの字になって横転していた。


 東京駅でお得に乗れる企画乗車券と新幹線特急券を重ねて改札機に通しホームへ上がると、一昨年2011年に登場した『はやて』の新型車両と従来型の『こまち』が併結して停車中。新型車両は高速で走れるよう鼻が長い。


 で、僕が予約したのは『こまち』。旧型車両。


 旧型を選んだ理由はシンプル、多機能券売機で空席状況を確認した際、こちらの先頭車両最後部窓側A席が空いていたからだ。


 最後部なら椅子を気兼ねなく倒せる。


 列車全体を見ても『こまち』のほうが空いていた。隣に人が来ませんように。


 ということで、予約した席に着席。黒とブルーのツートンカラーの座席に黄色いシートカバー。旧型とはいえ近代的なデザインだ。


 棚にバッグを上げ、コートは着たまま、中に財布とケータイ。背面テーブルを展開してペットボトル入りの水を置いた。


 通路側の席に人はいない。先ほど茅ケ崎駅の多機能券売機が空いていたので改めて空席状況を確認したところ、隣の席に予約は入っていなかった。『はやて』はほぼ満席で△マークが表示されていた。


「すみませーん、ここにベビーカー置いていいですかぁ?」


 赤子を抱えた若い女が僕に声をかけてきた。


「どうぞ」


「ありがとうございまーす」


 ベビーカーは僕の座席のテリトリーまでは入らない程度のサイズだったので、僕は座席を倒したまま。


 車内は窓側が満席、全体の6割ほどが埋まっているようだ。赤子を抱えた女は前へ行き、車両中央付近の席に座った。


 列車が発車し、秋葉原あきはばらを通過すると地下へ潜り、まもなく上野うえのに停車。赤羽あかばね付近で地上に出て高架へ上がり、埼京さいきょう線と並走。川を渡ると一気にビルが少なくなり、住宅地をゆっくり走る。


 大宮おおみやに着くとサングラスをかけた高身長のロン毛野郎が隣に座ってきた。しかも脚を広げてやがる。


 クソッ。


 この男にはベビーカーを置かせた親切心に対する罪悪感は全く湧かない。


 震災の影響で傷んだ区間があるためか、列車はところどころ在来線並みの低速で走行しつつ、2時間弱で仙台に到着。隣の男を含め、過半数の客が降りた。


 僕は在来線に乗り換え、仙台到着直前に通過した長町ながまち駅から映画館のあるショッピングモールへ徒歩で向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ