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名もなき創作家たちの恋  作者: おじぃ
2013年1月

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舞台挨拶

 打ち上げが終わり、同学年の連中も、僕ら6人も解散し、夜の街へ散っていった。


 僕と美空は家が近所だが、美空にパパラッチが付いていないとも限らないので別々に帰った。美空はタクシー、僕は徒歩。


 22時の空はオリオン座が南南西にあり、流星がちらほら。


 クルマが曲がれないほどジグザグに入り組んだ住宅地を、ときどき深呼吸して歩く。


 地球でさえ大きく感じるのに、何億光年彼方にも空間は存在している。あの砂粒のようなペテルギウスは、太陽より4百倍も大きいらしい。


 果ての果てが無だったとしても、それは無という空間。


 星空を見上げると、よくそんなことを思う。


 地球外生命だって存在したっておかしくないし、肉体はなく魂だけが暮らす星もあるかもしれない。


 天国は地球と宇宙の間にあるとどこかで聞いたが、ほんとうはあの星の中のどこかにあったり、地球からは確認できないほど遠くの星にあったりするのかもしれない。


 高校の校長は恋人を亡くしているが、その話を聞き、10ヶ月前には東日本大震災が発生。死を意識する機会は度々訪れる。


 現実主義の夢追い人である僕は生計も意識して大学進学したが、瑠璃や澄香、友恵や三郎のように夢まっしぐらでも長期的に生き残れる可能性だって無いわけじゃない。目先の利益を取ると大体失敗するが、長い目で見て機会が訪れる前に絶命する恐れもある。


 心の中、何度も反復。


 一先ず夢は諦めないとして、その夢をどう他者へ役立てるか。


 大震災後から行こうと思っている被災地。具体的には3年前の旅行で訪れた石巻。


 だがいまはまだ、行く気は起きない。行ってお金を落としたほうが被災地のためになるかもしれないが、心苦しい。


 こうしてこのまま、行かずに終わるのだろうか。僕が決心して行くより先に復興すれば何よりだが、被害の大きさからとても数年で復興できるとは思えない。


 そうこうしている間に数日が過ぎ、美空たちLongtempsロンタンが歌う、美声でロックなアニメ主題歌はそれなりにヒット、その他五人は相変わらずな感じで1年が過ぎ、2013年を迎えた。僕はこの間、神楽にアルバイトを紹介してもらいつつお金を貯めた。


 月日の流れは年々速くなる気がしているが、僕はまだ何も成し遂げていない。


 最近あったことといえば、昨年2012年の秋に鎌倉を舞台にしたアニメ映画にハマり、横浜と川崎の劇場で計7回観に行った。


 その作品の監督が仙台の劇場で舞台挨拶をするとのこと。


 そう、被災地の一つ、宮城県で。


 時が来た。そう思った。


 僕は劇場と新幹線のチケットを、流れるように予約した。

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