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名もなき創作家たちの恋  作者: おじぃ
2012年1月

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変わり果てた街、変わりゆく街

 2012年1月、大学生活も後半に差し掛かろうとしている。マンネリした日常の進みは速く、しかし一日の流れは遅い。


 3年生になったら就活が始まる。


 新卒採用解禁前に内定をもらった者もいるが、なんだかキナ臭いからそういう企業には入りたくない。世の中黒い企業まみれなのに、自らそれを主張してくる企業とはどれほどのものなのか。


 茅ケ崎駅から湘南新宿ラインに乗って通学する日常が戻ってきて久しい。昨秋あたりから東海道線では3ドアの211系から4ドアの新型車両、E233系への置き換えが進んでいるが、湘南新宿ラインは相変わらずE231系のみで運転されているようだ。


 朝7時前の5番線、客を急かすようなメロディーが流れるホーム。もたつくなという意味では実に理に敵ったメロディーだ。サザンオールスターズの『希望の轍』に変更してほしいという市民の声はまだ反映されていないが、最近実現に向けての活動が活発になっているという噂がある。


 ボックス席の通路側に座るオッサンともう一人のオッサンの膝をすり抜け、空いていた山側の窓側進行方向側に座った。正面には僕の後に続いてオッサンが座ってきた。


 ホームを抜けると、海側のドア窓から朝焼けのまばゆい光が差し込む。座席横の窓は熱線吸収ガラスなのでそんなに眩しくない。貨物線を挟んだ向こう側に相模さがみ線の車両基地、続いて寝台特急サンライズが貨物線から旅客線に渡るポイント、秋上あきがみ踏切、緩やかなカーブを抜けてラチエン通りと交わる異人館踏切を通過すると、テニスコートを横目に辻堂駅へ一直線。とはいえラッシュアワー、3分前に前の電車が出たばかり、すぐ後ろには次の電車がおり渋滞しているためノロノロ運転のダイヤになっている。


 大都会藤沢、のどかなターミナル駅、大船おおふな、横須賀線の線路に移り渋滞から逸れ、コンパクトな街でありながら成田空港と神奈川などを結ぶ特急、成田なりたエクスプレスが停車する戸塚とつかを出ると、横浜市内の山間部に入る。権太坂ごんたざかではガードレールのないカーブを高速で駆け抜け、車両が大きく振れるときはいつもヒヤッとする。


 線路沿いには高層ビルが少ない大都会横浜、快速なので通過する新川崎駅の横には貨物列車の機関車の基地、武蔵小杉から新幹線と並び、山手貨物線に入って渋谷に到着。


 すっかり見慣れた茅ケ崎から渋谷までの、趣がコロコロ変わる車窓。


 時の流れとともに街の雰囲気は変わるが、東日本大震災の後、茅ヶ崎を含む沿岸の街はもちろん、渋谷などの内陸の街も災禍によって一変するのか、渋谷、新宿しんじゅく池袋いけぶくろに関しては頑丈なビルが多いから災害の影響は小さく、現在計画されている新しいビルの建設など、シナリオ通りの変化を遂げてゆくのか。神のみぞ知るところではある。


 民鉄に乗り換えて大学に行き、講義を受けて4時間後の13時、僕はひとり帰路に就いた。たまに神楽もいっしょに帰る(往路は異なる駅の利用者とあって待ち合わせないし、混雑する電車でふたりいっしょは困難かつ立ち位置、着席位置、静粛性の高い朝の車内での話し声など周囲に迷惑をかける可能性があるので単独行動)が、きょうは講義が被らなかった。彼女とは付かず離れずのちょうど良い関係を保っている。


 渋谷のスクランブル交差点前のビルにあるビジョンを見上げると、今月から放送開始予定のアニメのCMが流れていた。

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