表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
名もなき創作家たちの恋  作者: おじぃ
2011年3月 東日本大震災とその後

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

268/307

2011年3月の空

 ざわつく店内、えー痴漢!? うわホントだ三人ともやりそうな感じ! とか好き勝手言ってるギャル共。僕はやってない。断じてやってない。友恵にしか。


「いっしょに来て!」


 しかし時沢神楽が乱暴に引っ張ったのは僕の手だった。


「ええっ!?」


 僕は表面上驚きつつも内心、もしかして助けてくれた? なんて思っていた。


 時沢神楽にぐいぐい手を引かれて到着したのは、渋谷駅前の交番。


 痴漢はしてないけど、冤罪で突き出すつもり?


 しかし警察官がいる交番の中には入らず、出入口の脇に立っているだけ。マックからここまではスクランブル交差点を渡ってすぐだが、僕は息切れを起こしている。恐怖からか、走ったからか、両方か。


「あの人たち、前から清川くんのこと狙ってたの」


「だろうね」


「清川真幸っていういつも一人の人がいるから、アイツなら狙いやすいんじゃない? って吹き込んでるヤツがいた」


「高校の同窓生だろうね」


 接点も友情もない同窓生だが、裏切られた気分だ。その中の誰だか、もしかしたら全員か。


 時沢神楽はそれを知っていて僕に接触してきたそうだ。なら初対面のときに警告してくれても良かったのに。


 それを言うと彼女は「初対面で言っても逆に私が怪しまれるから」と返した。


 そうかもしれない。現に僕はまだ彼女を百パーセントは信頼していない。ほかの何かに誘導する意図がある可能性もある。


 そんなことを思いながら過ごして半年、2011年1月になっても時沢神楽は特に怪しいことをしてこなかった。会うのだってたまたま講義が重なったときくらいで、わざわざ互いにスケジュールを合わせて通学なんてこともない。


 2月になって僕は高校時代の同級生たちから同窓会と称して居酒屋でマルチビジネスの勧誘を受けたが、そのときは事前に時沢神楽からの警告があり、なるべく僕とともに行動してくれたり、同郷ということで同窓会に飛び入り参加してくれた。時沢神楽はそういった危険な勧誘に関しては敏感だ。


 僕以外にも何らかの勧誘を受けている者はいるだろうが、時沢神楽もまたぼっち。集団に属している者には干渉しないようだ。


 それにしてもあれだ、大学生活って、けっこうめんどくさい。勉強して単位を取って適度に遊べればいいのに、邪魔者がウジャウジャ出てくる。ほかにも二十歳になったら特定の政党や政治家を支持するよう要求されたり、デモに参加してくれなどと要請されたり。政治の話は濁し、デモ参加は断ったが、『○○反対!』とか『賃金上げろ!!』とか掲げる集団に紛れ、プラカードに『童貞卒業させろ!!』と黒地にピンクのインクで書いて盛大に掲げ行進してみたいと思ったりもした。


 社会人になってもあるんだろうな、そういうの。


 やっとこさ単位を取って3月、僕と時沢神楽は日々のしがらみで疲れた脳をリフレッシュしようと臨海副都心、お台場へ出かけた。朝はまばゆく晴れていたのに、昼になって曇ってきた。


 時沢神楽も何本かアニメを見ているようで、新交通ゆりかもめの中で今夜放送予定のアニメの話などをしていた。


「あのときはほんと、契約しなくて良かった」


「契約しないかい? って言われたら、断れない性格だもんね。よく頑張りました」


「頑張りましたよ、悪意的とわかっていても断りづらい僕のやさしさと弱さ。そういえば時沢さんは、どうして勧誘系の話に敏感なの?」


「前から思ってたけど、神楽でいいよ。ま、色々あってね、電車の中で話すのもなんだから、降りてから話すよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ