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名もなき創作家たちの恋  作者: おじぃ
2009年7月

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262/307

新しいステージに向かって

「うおおおおおお!!」


 スウィートビターガールズの演奏が終わると、野太い歓声が沸き上がった。それに釣られて「え、すごい! プロじゃん!」などと黄色い声もたくさん聞こえてきた。「カッケー!」とオタクっぽくない男の声もする。


「やりましたね清川先輩、咲見先輩!」


「お、あ、うん」


 約1年半ぶりの歓声は物凄くうれしいけれど言葉に詰まる僕の性。


「やったよ大成功! 福助くんと雨後レインボウちゃんが加わってくれたおかげだよ!」


「それほどでもあるっすね!」


「ククククク、わらわの才が日の目を浴びるときが来たのじゃ」


 優雅にお茶会をしていた女子たちが力強い早口の曲を披露するギャップ。これがヒットの秘訣。高校生くらいの年頃はギャップに弱い傾向がある。


 これならスウィートビターガールズは今後も展開できそうだ。著作権は僕と凛奈にあり、福助と雨後にはないが、仮に二人が二次創作をしたとしても許容範囲内で目を瞑るつもり。


 何はともあれ、高校生活最後の作品が成功してめでたしめでたし。



 ◇◇◇



「よし、やった」


 真幸たちの頭上、映写室では澄香、瑠璃、美空が上映を見守っていた。観客の好感触に澄香は控えめにガッツポーズ。


「ホッとしたね~」


 瑠璃は肩を撫で下ろし、美空は「ふぅ」と息を吐いた。


「美空ちゃんは、歌手デビューするんだよね」


 澄香が言った。


「デビュー曲が売れなくて事務所とレーベルに打撃を与えてすぐトウシロに戻ります」


「そんなことないよー、美空ちゃん歌声綺麗だもん」


 宥める瑠璃。事務所とレーベルに打撃を与えるのは自分かも、そもそもデビューさえできないかもと自らの未来を危惧する澄香。


 彼女たちも一先ず高校生活最後の活動は成功を納め、有終の美を飾った。


 そして、卒業後の新しいステージに向かって、それぞれが歩き出す。

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