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名もなき創作家たちの恋  作者: おじぃ
2009年7月

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260/307

二俣川に二度足を運ぶハメになった

 福助と雨後レインボウが入部してから動画関係の作業は彼らと凛奈に託し、僕は楽曲制作に集中。曲はできているので後は時間が許す限り、時間内で納得できたらそこまで曲をアレンジメントする。


 その間も世界は回り、小田原のアニメショップからの帰り、電車のボックス席の横にある二人がけのロングシートに座っていたら国府津こうづから黒い薄手のジャンパーを着た小汚ない酔っ払いジジイが隣に座ってきて、自らの股間を指差しながら「俺はこのチ○ポを世界中の美女に舐めさせるのが夢だ。もう百人くらいはこれを舐めた。これから平塚と川崎かわさきをハシゴする」と語られたり、またある日サザンビーチを散歩していたら札幌から来たという天然パーマのアンチャンに声をかけられ、カブにまたがってベトナムを縦断しないかと誘われるなどした。断ったが内心、東京から四国くらいならやってもいいと思った。なんならカブらしく出前機を載せてもいい。


 創作をしながらもどこかダラダラと惰性で生きてきた感覚が否めない僕は、明日こそはと意気込んでも実行力が伴っていない。いまは奏多かなた花風はなか夏蜜なつみを幸せにすることを主に考えているが、彼女たちの幸せとはなんなのか。


 彼女たちは音楽に特化したキャラクターなので、理論上彼女たちの物語は僕の死後、誰かが跡を継ぐかたちでも続けられる。他方、最近は軽音楽部を舞台にしたアニメが人気で僕も見たが、観客としては声優が変わったらこの子たちはこの子たちのままいられるだろうか。そんなことを思った。声優は世代交代する場合もあるが、替えが利かないケースもある。作者もそうかもしれないが。


 そんなことを考えたり受験勉強や教習所通いをしたり普通自動車運転免許の学科試験に落ちて東海道線、小田急線、相鉄そうてつ線、相鉄バスを乗り継ぎ微妙に遠い二俣川ふたまたがわの免許センターに二度足を運ぶハメになって友恵に「ぷぷぷぷぷ……」とバカにされたりしているうちに年を越した。ちなみに僕の周りの人間は全員一発合格。全員マニュアルトランスミッション。


 ああんもうやだ、このままじゃ大学も落ちちゃうう!! お金かかるから予備校通わないで動画サイトの広告収入だけでなんとか遣り繰りしてきたのに、このままじゃ反吐が出てムカつく客についうっかり唾をぶっかけてぶん殴っちゃいそうな接客のバイトとかしなきゃいけなくなっちゃううう!!


 けど、けど、アニメはできた! デキちゃった!

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