古都の守り人
お嬢様学校の合唱とあってか、湘南海岸学院のそれと比べると会場のざわつきが控えめで、拍手は盛大に送られる発表会。
これが気品の差というものか。
僕らも静かに座ったまま、歌唱や演奏に聴き入っている。
続いて、菖蒲沢さん、美空、平沼さんの番が来た。
僕が作詞作曲したとあって、僕にも緊張が走る。これを聴いた観客はどう思うのか、どんなリアクションをするのか。
不安に支配されつつ、ざわめく沈黙の中、演奏が始まった。イントロは菖蒲沢さんの独唱、続いて平沼さん、美空の順に独唱、サビは三人の声が重なる。
ビアノとギター、ベース、ドラムが交わる重厚感ある伴奏も聴きどころ。
腹と声帯をフルに響かせる菖蒲沢さん、どちらかというと声帯を使い澄んだ声を出す美空、どちらかというと腹からの声が響くアルトな平沼さんの声がエコーを成して、屋根に反射しホール全体に降り注ぐ。
鬼畜共の激烈たる猛攻に耐えてくれてありがとう美空。その鬼畜の一人は、恐らく隣で美声を放っている菖蒲沢さんだね。
◇◇◇
『古都の守り人』
作詞、作曲:清川真幸
緑と海の風が重なる古の都
紡がれてきたいくつもの物語
これからも生まれゆくでしょう
変わりゆく街は戦禍と災禍を繰り返し
いつの時代も乱れ嘆きと涙
それでも人は幸いを求め
きょうも迷い歩んでは脚を休める
時は止まることなく
いまこの瞬間も歩んでいる
私は今日も祈る
目まぐるしく行方知れずの世界で
どうか報われるべきものに幸あれと
永久に止まぬ不条理の嵐の中
無力と空虚に苛まれては
きょうも独り泣き濡れる
涙の跡は消えない
私は今日も祈る
変わりゆく地平を見渡して




