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名もなき創作家たちの恋  作者: おじぃ
2009年7月

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平穏な日々

 お姉さん曰く、学校は多種多様な人の存在を学ぶところ。


 多様性の学習は、私も大事だと思う。でもその多様性の中に攻撃的な者があり、私はそれに耐えられなくてきょう酒場ここに来た。学校はいじめを隠蔽したり、和解を求めるけれど、私はそのような者を認め、受容する気はない。


 でも私はまだ中学生。最低限、高校は卒業しておきたい。しかし高校生にも学級はある。そしたらまた、いじめられる可能性がある。


「とは言ってみたものの」


 言い淀むお姉さん。私は視線を遣って、続きを待った。


「本来、いじめた側に刑罰を与えるべきで、君が学校に通えなくなる、教育を受けられなくなるのは理不尽な話。そう思わない?」


「そう、思います」


「だから高校は、いじめたら即退学になるところを選んだんだ」


「そんな学校が、あるんですか?」


「ある、といえばある。1年生のクラスは20組まであるけど、3年生は15組までしかない学校が」


「それって」


「1クラスだいたい50人で、5クラス減る。つまり、それだけ退学処分者が出る、そんな学校」


 その学校は市内にあって、私もよく知っている私立校。1年半後、私はその学校、湘南海岸学院に通うことになった。


 中学は『いじめられるほうにも原因がある』という昔からよくある担任の見解から救いはないとみて、卒業まで登校しなかった。


 湘南海岸学院には、同じ中学から進学する生徒も多くいる。母親との入学前面談のとき、同じ中学を卒業した生徒とは同じクラスにはしないと学校側は約束してくれたけど、廊下に出れば会うし、噂だって流れるかもしれない。


 他の、遠く離れた土地の学校に通ったり、そもそも高校に進学しない選択肢もあった。ただ私は、高卒認定の資格が欲しくて、イジメは即退学なら、そこに賭けてみようと思った、それだけだった。



 ◇◇◇



「ふう、美味しい」


「どうだい嬢ちゃん、学校は」


「いまのところ、特にこれといったことは起きてません」


 高校に進学してからも、酒場には通い続け、決まってノンアルコールのソルティードッグを飲んでいる。ここが私の居場所で、学校とは違う価値観に触れられる場所だから。いくつか居場所を持っておくのも、メンタルや人生を豊かにするには大切だと、身をもって知った。


「小説の新作書いたら、また見せてね」


「お姉さんの絵も、楽しみにしています」


 この先、また何も起きない保証はない。だけどなんとか、命は繋ぎ止めている。


 新しい朝が希望の朝になる日は、どうもまだ訪れそうにない。美談は何もない。どうにか平穏な日々になりつつある。それだけのさいわいが、私に訪れた。

 お読みいただき誠にありがとうございます。


 2日遅れの更新となりました。お待たせしまして申し訳ございません。

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