表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
名もなき創作家たちの恋  作者: おじぃ
2009年7月

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

217/307

最後のお別れ

 海から見て茅ヶ崎の最も奥地に位置する、田畑が混在する地区に斎場はあった。てっきり里山公園と小出川の彼岸花畑辺りが最も奥地だと思っていたが、更に奥があったとは。それらもここから近いはずだが、位置関係がよくわからない。


 何にしろ、この斎場は周囲にあまり建物のない、人目の少ない場所に佇んでいるのは確かだ。


「いよいよ、最後のお別れです」


 火葬炉の前、黒いスーツを着た中年男性の係員が私たちに告げた。私たち参列者は一様に、3秒ほどかけてお辞儀をした。火葬炉は5基ほどあるようで、現在1基は使用中のランプが点灯している。この狭い地域で、祖母のほかにも時をほぼ同じくして誰かが亡くなったということか。


 最後に、私たちは祖母の顔を、10秒ほど拝んだ。花に囲まれて、安らかに眠っているようだ。


 祖母よ、あなたは安らかに眠っているか、または霊魂となって私たちとともにこの様子を見守っているかもしれないが、問題は花だ。花はまだ生きている。摘み取られて棺の中に敷き詰められてもなお、少しの穢れもない綺麗な花で在り続けている。


 ああ、私が旅立つときは、花など供べないでほしい。


 そんなことを、告別式で花を添えるときから思っていた。


 しかしまあ、燃えてなくなってしまうとは、やはりなんだか、もの悲しさがある。いずれこの世のすべてが、地球さえも燃え尽きてしまうが、存在していたものが姿を消すということの哀を、ようやく感じ始めた。欠落した感情を、少し取り戻した気がした。


 こんなときまで私は、祖母の死より自分のことを考えている。まだまだ、足りていない。人として、色々と。


 まあ、12歳のときに愛犬のコロ(ゴールデンレトリーバー)を亡くしたときは、わんわん泣き喚いたけれど。犬だけに、わんわん。


 そして棺は、火葬炉へと滑り込んでいった。

 お読みいただき誠にありがとうございます。


 都合により、来週はお休みさせていただきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ