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名もなき創作家たちの恋  作者: おじぃ
2009年4月

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209/307

物語の主題を定めよう

 深夜0時、豆電球が灯る薄暗い自室の2段ベッドに寝転がりながら僕は考えごとをしていた。下段では妹の灯里あかりが寝息を立てている。


 のらりくらりとピクチャードラマの制作をしているつもりだった僕だが、ほぼ進んでいない。部活で制作しているアニメがどんどん先行して、オリジナル作品はおざなり、いや、なおざり状態だ。


 そんなピクチャードラマだが、文化祭で『きみといっしょに』のアニメが制作できた実績から、こちらもアニメにしたい欲望が芽生えてきている。


 ううん、どちらが良いか、悩みどころ。動きがカクカクし過ぎた中途半端なアニメをつくっても逆に良くない。アニメーションならではの適度ななめらかさは必須だ。これはメンバーに相談が必要だから今結論は出せない。


 続いて作風。『きみといっしょに』が陽で動ならば、新作は陰で動だ。


 しっとりした流れの中で、キャラクターが希望を見出してゆく、落ち着いた雰囲気と高揚感を併せ持つ物語。このテイストが好きな人もそこそこはいる、刺さる人には刺さる作風になると思う。


 さて、作風が決まったところでそれをどう構成するか。


 物語づくりは気体を集めて星をつくるようなもの。コアが固まったら、そこにオゾンや酸素、窒素、その他気体類諸々を寄せ集めて固めてゆく。


 当初、物語はボーイミーツガールで進める予定だったが、『きみといっしょに』や世に出回っている作品を見て、ガールミーツガールも良いと思い始めた優柔不断な不審者、清川真幸。


 ガールミーツガールの何が良いって、なんとなく恋愛に発展しそうな作者の意図せぬ雰囲気を観客に感じさせにくいところだ。百合というのもあるけれど、そこはそうでないと感じ取れる作風にすれば問題ない。ボーイミーツボーイもできなくはないけれど、繊細な物語を描く上で邪魔になる男らしさ、若干の粗ができそうだし、需要の面でも限られてくる。


 ガールミーツガールは男子にも女子にもウケるが、ボーイミーツボーイはあまり男子ウケしない。僕も正直、あまり見ない。男同士のリアルと合致しない。女子のアニメキャラクターに関しても実際の女子の交友関係とは異なるが、なぜだか偶像として割り切って見られるのだ。


 しかし、男女の友情が存在しないわけではない。僕の交友関係は女子が中心で、男友だちは三郎のみ。


 その中で僕は美空に一目惚れこそしたものの、恋愛に発展したか。もしかしたらこれからするかもしれないが、現在のところそこには至っていない。友恵についてもそう。ただ、この二人とは、なんとなくいい雰囲気になることがある。今回僕がつくっている物語でこれが起きるとどうなのか。そこを慎重に吟味しているところだ。


 そんなことを延々と考えていたら、もう3時。あれ? おやつの時間? いやいや丑三つ時を過ぎたいちばん深い時間。3時に起きている日など滅多にない。


 グダグダと決めかねていたら作品は完成しない。


 とりあえず眠って、夜が明けたら今回の作品の主題である『心休まる場所』を軸に物語を練ってゆこう。

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