表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
名もなき創作家たちの恋  作者: おじぃ
2009年4月

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

207/307

現在進行形で不審者

 2009年4月、僕らはいよいよ高校3年生となった。東北旅行から今日に至るまでは光陰矢の如し。怒涛のスピードで時間が流れた。


 茅ヶ崎にはスローライフを求めて観光や移住してくる人が多いそうだが、めちゃくちゃ時の流れが速い。これで都心へ引っ越したら超激流の日々になりそうで恐ろしい。しかも『楽しい時間はあっという間』ではなく、艱難辛苦のエンドレスループが続いて気がつけばご臨終だから、もうどうしようもない。


 僕、友恵、三郎は今年も同じクラスになった。無事ランクダウンすることなく進学対策はもちろん社会人デビューしてからの礼儀作法や就職試験の勉強もする特級の1組だ。


 僕らの街、茅ヶ崎には今年も変わらずソメイヨシノが咲き乱れ、海風がほんのりピンクの花びらを舞い散らせている。


 創作活動は相変わらず忙しく、僕の日常に暇はない。ああ暇だと思うときは、調子が悪くて筆を執る気が起こらないとき以外にない。


 創作以外にも、昨年の文化祭で好評だった『君といっしょに』のミュージックビデオを動画サイトにアップロードしたり、もう約5ヶ月後に迫った文化祭に向けた作品と、僕のオリジナルピクチャードラマの制作、そして受験勉強もあり多忙を極めている。


 なお、受験勉強はほとんどしていない。僕が3年間1組でいられたのは学力ではなく、マナーや心持ちを評価された点が大きい。第3学年は15組まであり、15組だからといってそこの全員が人間性に大きな問題があるとは言い切らないが、それにしてもこの不審者で気持ち悪いであろう僕より成らず者がわんさかいるのは間違いない。


 神崎さんが卒業し、流れで僕が部長になったアニメ制作部の部室には、僕と凛奈しかいない。


 僕は部長席で黙々とオリジナルピクチャードラマの絵コンテを描き、正面では凛奈がPCに向かって黙々と何らかの作業している。


 今のところ今秋の文化祭でどのような作品を披露するかは未定だが、昨年の『君といっしょに』が好評だったから、その発展型作品にしようかと考えている。何にせよ、意図した観客の心に響き、脳に心にじんわりくる、幸福感と満足感を得られる作品にしたい。


 その他、最近SNSが流行り始めたので、僕もそれに乗ってアカウントを登録した。とりあえず友恵、三郎、凛奈、神崎さん、瑠璃、澄香、鎌倉清廉女学院の美空、菖蒲沢さん、平沼さんをフォローしたが、澄香からはフォローバックがない。なお、僕以外にはフォローバックしているようだ。ふぅ。


 学年が上がり、新作制作、SNS登録と、新しいことを始めた2009年度。これから良いことがたくさん起きると良いが、変質者かつ不審者の僕に混沌としていない清らかで健やかな日々を生きるなど、神様が許してくれるだろうか。


 そりゃ僕だって北大路きたおうじ欣也きんやみたいに威風堂々とした風格を身に付けられたら良いけれど、圧倒的に経験値が足りない。足りないから虚勢は張れても地盤の固い度胸がつかない。今はイキリになっていないだけマシと思って身になるものを纏いながら生きてゆくしかない。だが僕の周りにいる者は、不審者が北大路欣也に昇華するさまを目にするだろう。ククククク……。


「真幸くん、いま変なこと考えてるでしょ」


 凛奈が寒い目で僕を見て言った。


「どうしてわかったの?」


「ニヤニヤしてるから」


 どうやら僕は、現在進行形で不審者らしい。わかってはいたけれど。

 お読みいただき誠にありがとうございます。


 来週は都合によりお休みさせていただきます。楽しみにしていただいている皆さまには大変恐縮でございますが、何卒次回更新をお待ちいただけますようお願い申し上げます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ