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名もなき創作家たちの恋  作者: おじぃ
2009年3月 宮城、福島の旅

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201/307

仙台と石巻と仙石線

 曇りガラスで外が見えないホテルの部屋を出て、エレベーターで下り朝食バイキングに行くと、窓の外にはしんしんと雪が舞っていた。ビルが密集した仙台中心地に伸びる片側一車線の道路には、うっすら積もってぐじゅぐじゅした雪にいくつものタイヤ痕が引かれている。


 朝8時、そんな窓辺のカウンター席で僕はひとり朝食を摂っている。みんな僕が眠っている7時ころに食べてしまったらしい。三郎は起こそうと声をかけてくれたそうだが僕は気づかなかったという。


 味噌汁、里芋の煮物、玉子焼き、焼き鮭、ごはんと味付け海苔。ああ、これぞ日本の朝食。熱めのお茶を飲み息をついて、止む気配のない雪景色を眺める。温暖な湘南の不審者にとっては、ビル街とはいえ情緒ある風景。ああ、玉子焼きの出汁と甘味が染みる……。


 9時半にホテルをチェックアウトして、僕らはあおばどおり駅から仙石せんせき線に乗った。あおば通は仙台駅から徒歩3分程度の距離にある仙石線の始発駅。4両編成、ロングシートでドアは押しボタン式と、地元の相模さがみ線に似た仙石線の電車はあおば通、仙台の順に、しばらく地下区間を走った。


 地上に出ると仙台市南部の工業地帯や住宅地、やがてあの有名な松島まつしま海岸を通り、海岸線をゆく。いつか松島も行きたいな。


 ここの海岸は湘南のように半島に囲われておらず、ただただどこまでも広い。海が広くて大きいというのを実感する。島影ひとつ見えず、緯度から推測すると、この先にある陸地は遥かアメリカのサンフランシスコやサクラメント辺りだろうか。あの有名なガイザーの水が採れるシャスタ水源もこの辺りだったと思う。サクラメントというと、なんだか日本にある場所のような気がするのは僕だけだろうか。


「ねえ三郎、サクラメントって、日本にありそうな気がしない?」


「するわね」


「するよね、僕だけじゃなくて良かった」


 とことこと、電車に揺られ90分、終点の石巻いしのまき駅に到着した。


「うーん! 着いたー! 萬画の聖地石巻!」


 電車内で美空と肩を寄せ合い眠っていた友恵が、ステンドグラスを張ったペンション風の駅舎を出た途端に復活。天空に向かって伸びをしている。


 駅から見渡す風景はこじんまりとしていて、小さなロータリーにタクシーが2台、右斜め前方に中層ビル、周囲に居酒屋などが入った雑居ビルや住宅らしき建物が見える。


 そして何より、駅構内にも駅前にも、かの有名作家が生み出した萬画や特撮キャラクターのモニュメントがそこかしこに立っている。


「そういえば真幸、ミュージアムに行く道はわかるの?」


 と、気分スッキリな友恵に訊かれた。


「わかんない。勘でなんとかなるよ」


「そっか」


 三郎と美空も道に迷うのでは? などと特に気にする様子もなく、なんとなく駅前通りを歩き出した。


 歩き出してすぐ古びた信号機が立つ交差点に差しかかり、横断歩道を渡った先に有名デパートの建物があるが、小さなスーパーマーケットくらいの大きさしかない。デパートに突き当たって左折すると、歩道に軒のある商店街に入った。ほとんどの店舗がシャッターを下ろしている。歩道の縁にはキャラクターのモニュメントがほぼ等間隔で立っている。人通りはほとんどなく、人間の声は友恵と美空の会話しかない。


 僕は国内では東京都に次いで2番目に人口が多い神奈川県育ちで、県内では市であれば大概は人通りが多いものだが、他県では案外このくらいなのかもしれない。自動車はよく通るし、駅には十数人いた。雪はないが寒い地域ということもあり、歩行者は少ないとも考えられる。


 景観を観察しながら歩いていると川に突き当たり、橋を渡った先にマッシュルームのような形をした建物が見えた。おお、なんとなく歩いていたら辿り着いた。

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