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名もなき創作家たちの恋  作者: おじぃ
2009年3月 宮城、福島の旅

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199/307

こういうアニメを展開したい

「真幸は将来、どんなアニメをつくりたいの?」


 三郎、僕の順でシャワーを浴び、浴衣を羽織ってベッドに腰かけたところで三郎に問われた。ツインルームを予約したためベッドは2つあり、広々と使える。


「うんと、端的に言うと、幅広い世代に長く親しまれて、日常に溶け込むアニメかな」


「日常に溶け込むアニメっていうと、未来のネコ型ロボットとか、浦安うらやすのネズミとか?」


「そうだね、浦安のネズミくらい世界レベルで日常に溶け込めたら最高だね」


 僕は冷蔵庫にストックされていた有料の缶入りスポーツドリンクのタブを開けて、一口飲んだ。三郎はペットボトル入りの天然水を右手に持っている。


「それは大層な夢だこと。今のうちにサインでももらっておこうかしら」


「僕のテストの答案用紙とか、ものすごく激レアだよ。欲しい?」


「数学で30点取ってよく1組のまま進級できたわよね」


「人物評価で持ち堪えました」


「それは良かったわね」


「嫌味なく見透かした言い方をする三郎を、僕は心底エレガントだと思っているよ」


「ありがとう。未来の超有名作家にそう言ってもらえるなんて、光栄だわ」


「フッ、やってやりますよ」


「そういえば真幸は、音楽もやっているわよね」


「小6までエレクトーンを習ってたから、音感がいいのかも。だから自作アニメの主題歌を自分でつくれる。ただ、単純にアニメソングという枠から逸した音楽を、2次元キャラクターに歌ってもらいたいっていう将来展望がある。サザンみたいな、幅広い年代の心に響く音楽を、2次元キャラクターコンテンツでやってみたい」


「2次元キャラクターを浦安のネズミみたいにしたいっていう願望とつながるわけね」


「そうだね。萌え要素の強いキャラクターはネズミとか、ほかのキャラクターコンテンツと比べて偏見されやすい。そこに親和性を持たせるために、どうアプローチをかけてゆくか。それが大きな課題であり、成し遂げたいことの一つだね」


「面白いじゃない。それで、既存のキャラクターもしくは新作のキャラクターに、その潜在能力ポテンシャルはあるの?」


「この前の文化祭でやった『君といっしょに』の二人も、幅広い層に見てもらう前提だからポテンシャルは持たせたつもりでいるけど、ターゲットは高校生だから、広い層の大人まで巻き込めるかというと、正直厳しいと思う。あの作品を大人に見てもらうなら、大人のキャラクターが必要になる。一方で新作では、メインキャラクターの年代は10代としても、普段テレビアニメは見ないけど、有名監督のアニメ映画とかドラマは見るような大人をターゲット層にして設計してる」


「そう。そうやってアニメの視聴者層が広がっていったら素敵ね。ところで真幸は、どうしてアニメをつくるの?」


「それは決まってるよ。好きなことで人の心が潤ったり、綺麗な景色を描いて美しい地球を保ったり、守りたいって思えるきっかけになったらいいなって。それ以上のことってあるかい?」


「富と名声は?」


「あ、うん、まあ、少しは。知名度が高くて、こうやって旅行したり、ちょっと高級なお食事処に行けるくらいのお金は欲しい」


「そうよ、それでいいの」


「羨望の眼差しを向けられる作家になりたいよ」

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