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名もなき創作家たちの恋  作者: おじぃ
2008年9月

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192/307

君といっしょに

 三郎、友恵の高い技術力と彼らに払うギャラを用意してくれた学校の温情と経済力により、いま僕らがいる講堂を忠実に模した背景、そこに立つ蘭と静。2Dだが、スクリーンに映し出されたキャラクターがまるで実際にステージに立っているかのような仕上がりだ。近い将来にはきっとCG合成されたキャラクターがステージに立って限りなく3次元に近い立体的な描写ができるようになるだろう。


「皆さーん、きょうはお越しいただき、ありがとうございまーす!」


「あ、ありがとうございますっ」


 楽曲を披露する前に静と蘭がステージの観客に呼びかけるシーン。無観客なら虚しいだけの演出だが、幸い数人来てくれたからそうならずに済んだ。


「ほんの1分半だけど、私たちのステージ、楽しんで行ってくださーい!」


「おおおおおお!!」


 僕と属性が近そうな観客の集団から歓声が上がった。2次元強し。


「ひゃああ、私たちの声で歓声上がってるよ澄香ちゃん!」


「ほ、ほんとね、なんだかムズムズする」


 瑠璃と澄香も喜んでいる。演じているキャラクターとキャストでは性格が逆転している。


 いやはや、ほんとうに良かった。昨年と違って今作は僕が主導で制作した。欲を言えばもう少し来客があって欲しかったが、少人数でもこうして楽しんでもらえているのを見て感無量。


 商業作品になったらそうも言っていられないけれど、学祭だからヨシ!


「それでは聴いてください! 『君といっしょに』」


 前奏が流れ始めた。僕は思わず唾を飲んだ。一番手間がかかって、一番力を注いだシーンだ。


 不安を抱えて茅ヶ崎にやってきた蘭の心情をポップに描いた『君といっしょに』。作画は約1年かけたオール手書き。ダンスや風景の作画に合わせて曲を作った節さえある。


 学校周辺の、たくさんの生徒が行き交う茅ヶ崎のちょっとヨーロピアンな街並み。アニメだとファンタジー世界に出てきそうな風景が現実の茅ヶ崎の街だ。日本全国を見てもこのような街は珍しい部類に入るだろう。全国から人が集まるここ湘南海岸学院。遠くの街から来た生徒にフォーカスしたシーンだ。


 中学までは内気でモヤモヤした日々を送ってきた蘭だが、しかし本校でも誰にも話しかけられなくて、放課後に溜め息をつく。このままずっと変われないのかな。


 そこに静が寄って来て、蘭に手を差し伸べる。このシーンは僕が友恵に初めて声をかけてくれたときのを参考にしている。


 静は半ば強引に蘭をダンスボーカルに誘う。


 蘭は静に連れられて茅ヶ崎の海辺を歩き、日々はきらめき出す。


 しかし紆余曲折(描かなかったが陰口を言われたりホームシックになるなどの背景がある)、心が晴れない日もあって、雨の日の寮で引き籠る蘭。そんな日が続く。


 でも、ずっと悩んでいても負の連鎖で、事態は良い方向へ進まない。たまに立ち止まるのは良いけれど、ずっとそのままでは人生が悪化の一途を辿る。蘭はそれを理解している。


 だから、ゆっくりでも前へ進んで行こう。未来をきらめかせるために。


 人それぞれの事情はあるけれど、何か聴き手と通ずるものがあったらと、そんな想いを込めてつくった一曲だ。


 アニメづくりもいいけど、音楽づくりもなかなか良いものだなと、僕は制作しながら思った。創作は大変だけど、愉しくて、人生を賭けて頑張る価値がある。



 ◇◇◇



『君といっしょに』

 作詞、作曲:清川真幸

 編曲:清川真幸、羽賀原瑠璃

 歌:七飯蘭(羽賀原瑠璃)、海野静(烏山澄香)

 

 知らない街にひとり飛び込んでみた

 閉じ込めている自分の本当を知りたくて

 でもね、なかなか勇気が出ないんだ

 あぁ、このままずっと変われないのかなぁ……


 そんなとき君が手を差し伸べてくれた

 ねえ、いっしょにやってみない?

 新しい世界が待ってるよ

 さあ、行こう!


 なにもないまっさらな大空と青い海

 未来を描ける砂のキャンバス

 モヤモヤな気持ちは波がさらってくれるね

 深呼吸してまた一歩進もうか

 君といっしょならきらめいていけるね


 立ち止まって深呼吸して心晴れない日も続くね

 君がいっしょだとしても

 でもね、わかってる、前に進まなきゃ後ずさるだけだって

 ゆっくりでも進んでいこう


 なにもないまっさらな大空と青い海

 未来を描ける砂のキャンバス

 モヤモヤな気持ちは波がさらってくれるね

 深呼吸してまた一歩進もうか

 君といっしょならきらめいていけるね

 これからもどうかよろしくね

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