表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
名もなき創作家たちの恋  作者: おじぃ
北海道修学旅行

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

184/307

ノロッコトロッコ

 カタン、スーッ、カタンカタン。


「のどかだね~」


「北海道は大きいですね~」


「真幸、こういうのも人生よ」


 友恵、美空、三郎の順で言った。もう所属学校なんかどうでもいい感じだ。美空の仲間たちも同じ車両にいる。


「うん、なんだか色んなことがどうでも良くなる速度だね」


 朝、特急スーパーホワイトアローで札幌を出て旭川あさひかわの動物園に行き、続いて富良野ふらのを目指している。


 いま僕らが乗っているのはトロッコ列車『富良野・美瑛びえいノロッコ号』。曇り空の下、進行方向左向きのカーブを、自転車でも追いつけそうな速度で悠々と進んでいる。普通の電車ならイライラしそうな速度でも、トロッコなら心ゆるやか。


 窓のない列車から眺める景色は、どこまでも草。そこそこ背の高い草。草原というよりは果てなき雑草地帯。


 この牧歌的な空気に、僕らはもう何もかもがどうでも良くなり、表情が腑抜けている。


「ふふぁ~、まだそんなに咲いてない」


 富良野のラベンダー畑に着いた。お目当ての『見渡す限りラベンダーの絨毯』は、季節が早くて叶わず残念。でも、なんかもう、ほかの花もあまり咲いていないけれど、なだらかな丘にどこまでも広がるお花畑に、心の奥に溜まった淀みがぐいぐい抜けてゆく。


 特に病んでいる美空は放心状態。友恵は「いいねぇ、お花畑だねぇ」と、おばあちゃんのように目を細めている。


 花畑から札幌に戻るまで3時間かかる。現在15時半。花畑の滞在時間は30分ほどで、僕らは引き上げた。列車(帰りは特急フラノラベンダーエクスプレスで一気に札幌へ)の待ち時間に食べたラベンダーソフトクリームはほのかな紫色で、ラベンダーのスッと高貴な香りが鼻を抜ける、上品な風味だった。


 補足情報だが、7月中旬から9月中旬ころのラベンダーシーズンには、ラベンダー畑の前にある臨時駅が営業、もう1時間くらい長く滞在できそうだ。


 翌日、金曜日の夕方、僕は飛行機の小さな窓からぼんやり景色を眺めていた。隣の通路側には三郎が座っている。鎌倉清廉女学院の面子は次の便で発つらしい。


 眼下に灰色の厚い雲が広がって、空は青と藍のコントラスト。所どころ雲の中がピカッ、ピカッと点滅している。滅多に飛行機に乗らない僕にとっては、稲光を上から見る貴重な体験。


 悩みとか抱えているものが消えるわけじゃないけど、僕はちっぽけだなぁ。地球でさえ大きく感じるのに、宇宙に近い場所まで来るとどんな大作もウイルス以下の規模に感じる。


 小さな世界の中で、僕らは動き回って、藻掻いているんだなぁ。


 飛行機と北の大地というコンボが、僕にそれをいやというほど実感させた。


 どうせ何をやってもちっぽけなんだから、あまり深く考えないで好きなように創作しよう。


 この旅行中、そんなことを何度も思った。


 旅行を終えた僕らはまた、創作に励む日常へと戻ってゆく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ